銀座にムーミンのコンセプトショップ 北欧のライフスタイルを発信
松屋グループの東栄商会は16日、北欧の童話「ムーミン」のコンセプトショップ「MOOMIN SHOP GINZA(ムーミンショップ ギンザ)」をオープンした。中央区・銀座の「銀座インズ1」に構え、店舗面積は約70㎡。商品は約1100SKUを揃える。北欧からの輸入品や原画を用いた商品、原作小説や絵本なども揃え、キャラクターだけにとどまらず北欧のライフスタイルや作品の世界観も発信する。目標は年間1億5000万円。
東栄商会が今年10月にムーミンのライセンス管理を行うライツ・アンド・ブランズと小売店舗契約を締結し、運営権を取得した。本国のムーミンキャラクターズ社は、北欧文化のコアバリューやライフスタイルの発信を目的に、世界規模でCRM(顧客情報管理)やブランドイメージを統一するグローバル戦略「ワンムーミン」を推進しており、ムーミンショップ ギンザはそれを体現する1号店となる。
日本は2019年時点でムーミン関連の売上げの約4割を占めるなど、重要な市場だ。15日に開いた発表会で、ライツ・アンド・ブランズの伊東久美子社長は「キャラクターの愛らしさだけでなく、ムーミンという作品の持つアート性、文学性を広く発信していきたい」と展望を述べた。
ムーミン関連のグッズを販売するショップは既に国内に多く存在するが、それらとの差異化について、東栄商会の提箸英一社長は「品揃えや店装で特徴を出している」と説明する。
品揃えの特徴の1つ目は、インポート商品だ。既存の国内ムーミンショップでは取り扱いがほとんど無いのに対し、同店は北欧からの輸入品が全SKUの約7割を占める。「北欧ではムーミンが非常に浸透しており、ムーミンへの愛が深いクリエイターも多く、日本の商品とはまた違う魅力もある。ムーミンが生まれた北欧の地の暮らしを感じて頂きたい」(東栄商会広報の岡安真衣氏)。原画を使ったポスターやポストカードなども約40SKU展開する。
2つ目が付加価値の高いハイエンド商品で、益子焼や博多人形、オーストリアのワイングラスメーカー「リーデル」など、伝統工芸品や有名ブランドとのコラボレーション商品を集積する。自分へのご褒美やギフト、外国人観光客の土産需要を見込む。今後は松屋のネットワークを生かし、さらにコラボ商品を製作する。
3つ目は、書籍とベビー・キッズアイテム。ブックコーナーにはムーミンの原作小説や絵本、コミックスなど全60SKUの関連書籍を揃え、親子で座って絵本の読み聞かせができるスペースも設けた。子供服や食器、木製玩具など、ギフトに適した子供用品も約50SKU展開する。子供の頃からムーミンに親しんでもらい、将来的にファンになることを狙う。
店装は、原作者のトーベ・ヤンソン氏が好んで使っていた色の1つ、セージグリーンを基調とした。落ち着いた店装にすることで、女性に限らず老若男女が入りやすい店を目指す。ショップのアイコンは登場キャラクターの「ニョロニョロ」を採用したが、これも年齢や性別に関係なく入りやすいショップにしたいという狙いがある。
松屋は、北欧の商品を輸入販売するスキャンデックスを1990年に設立するなど、古くから北欧と関わりがあった。2014年に「ムーミン」の原画展を開催して以降はムーミンキャラクターズ社との交流を深め、最近は「とらや」や「ブルガリ イル・チョコラート」といった著名なブランドとのコラボ商品への出資、ライツ・アンド・ブランズ社への人的支援などを行っている。こうした経緯から、松屋グループでの新コンセプトショップの立ち上げに至った。
松屋は中期経営計画(23年2月期~25年2月期)で、事業ポートフォリオの考え方を「主力の百貨店業を核に、百貨店業とシナジー効果の高い事業で構成する」としている。運営にあたってはフットワークが軽く、百貨店の枠にとらわれない子会社での運営が適当と判断した。
松屋の古屋毅彦専務執行役員は、「当グループだからこそできるのは、世界観を伝えること」と語る。東栄商会には松屋のバイヤーやマーチャンダイザーが出向し、百貨店で培った目利き力やモノづくりの知見を生かして店づくりをしている。「ムーミン」ブランドの育成や、サステナビリティの観点からの訴求も行っていく。
今後は首都圏や大都市圏へ出店し、5年で10店舗を目指す。古屋専務は「百貨店の人材だからこそできる、付加価値の創造を目指していく。まずは1号店を成功させたい」と意気込んだ。
(都築いづみ)