2024年11月22日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 コロナ禍で損をしない確定申告(2)仮想通貨で儲けた人は必見!損しない確定申告の方法

昨今、仮想通貨(暗号資産)で収入を得たり、資産運用したりしている人は少なくない。しかし、確定申告のやり方を間違えると損をしてしまう。そこで、大手税理士法人で1000件以上の税務案件をこなし、その後、コンサルティング会社を立ち上げて経理や財務、事業継承、M&Aなどのコンサルティングに携わる税理士の市川琢也氏に、3回にわたって「コロナ禍で損をしない確定申告の裏技」を解説してもらう。2回目の今回は、仮想通貨をテーマに、効果的な節税対策についてだ。


──コロナ禍において、ビットコインを始めとする仮想通貨(暗号資産)の取引が盛況で価格も急騰しています。儲かった人も少なくないと思いますが、確定申告における注意点を教えてください。

市川 ブームに乗って仮想通貨の取引を始めた人が増えていますが、投資経験が浅く、確定申告の経験もないという、いわゆる“素人”の方が多い印象です。そういう方は税に関するリテラシーも低く、利益が出ても申告せずに放置したり、悪質な場合だと意図的に隠してしまったりする人もいるようです。

確かに、誕生してまださほど時間が経っていない仮想通貨に関しては、税務当局も試行錯誤の段階で、グレーな部分があるのも事実ですが、他の所得と同様、課税されるルールがありますので、そのへんはきちんと押さえておかないと後で痛い目を見ます。

──どういう場合に確定申告が必要なのでしょうか。

市川 仮想通貨の売却金額から取得時の金額(手数料を含む)を差し引いた金額が所得となりますが、これが20万円を超えると原則として確定申告が必要になります。仮想通貨の場合、所得が課税対象となるタイミングが独特なので、注意が必要です。だいたい次の3つになります。(1)売却時、(2)商品やサービスの決済時、(3)別の仮想通貨と交換した時。このようなときに課税される所得が生じるとされ、確定申告が必要となります。

──どの所得区分で申告するべきでしょうか。

市川 個人で取引している人は、原則として雑所得となりますが、利益が高額になったり、自分の本業と関連があったりすれば、事業所得として申告してみるのもありかと思います。うまくいけば最高で65万円の控除が受けられたり、さまざまな節税効果が期待できたりするからです。

ただ、雑所得にしろ、事業所得にしろ、所得税は累進課税のため、所得によって税率が上がっていき、最大で45パーセント、住民税・復興特別所得税を入れると55パーセントにもなります。

──仮に大きく儲けても、相当な金額を税金として持って行かれてしまうということですね。もっとお得な節税方法はないのでしょうか。

市川 個人で仮想通貨取引をやっていて、利益が少なくとも500万円を超えたら、法人を設立している人なら法人口座で運用する。そうでない方は新たに法人を設立し、法人用口座を作って運用すれば、かなりの節税効果が見込めます。

中小法人の場合、所得税の税率は15パーセント。住民税を含めても20パーセントで済みますが、個人の場合は最大45パーセント(住民税を含めると55パーセント)もの税率になってしまいます。つまり、仮想通貨の取引がある程度の規模になったら、法人口座で取引することをお勧めします。

──法人口座を使った方が圧倒的にお得ということですね。デメリットはないのでしょうか。

市川 もちろんデメリットもあります。1つは、仮想通貨取引で出た利益が数十万円程度など大した額ではない場合。法人を設立すると、仮に赤字になったとしても、東京の場合だと毎年最低7万円の法人住民税がかかってくるなど、損をしてしまう可能性があり、注意が必要です。

もう1つは、個人口座の取引の場合、仮想通貨を現金化せずに持っているだけなら課税されることはなく、当然確定申告の必要もないのですが、法人になると株などと同様に、評価益が出た時点で課税されるというルールがあります。デメリットといえばこの2点でしょうか。いずれにしても、ご自身の取引規模を考えて、損をしない方を選ぶといいでしょう。


せっかく仮想通貨で儲けた利益も賢く確定申告しなければ、損をしてしまうことがわかっていただけただろうか。最終回の次回は、確定申告における「ありがちなミス」と、「犯してはならない鉄則」、さらには知られざる税務調査の中身と損をしない対応策についてお伝えする。

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