百貨店の“プロ”が推す、至福の「おせち」
2022/11/17 5:06 pm
百貨店業界のおせち商戦は、今年も視界良好だ。おせちは共働き世帯の増加などを背景に「作る」から「買う」への転換が進み、例えば高島屋では2000年以降の売上げは右肩上がりだが、新型コロナウイルス禍で勢いは加速。帰省や旅行を自粛する人々の「イエナカ消費」に支えられ、各社は好結果を収めてきた。コロナ禍の「第8波」の影響は懸念されるものの、現状では行動制限がないまま年末年始を迎えられそうで、“おせち離れ”も危惧されたが、デパートニューズウェブのアンケート調査によれば、11月初旬時点で売上げが前年を上回る百貨店が少なくない。商品別ではコロナ禍で低迷した大人数用が復調しており、帰省はむしろプラスに働いた。商戦が好スタートを切る中、デパートニューズウェブではおせちの潮流と各社の担当者が推す逸品を紹介する。購入の参考にしてほしい。
「大人数用」に復調の兆し
各社にアンケート形式で11月初旬時点での商戦の見通しを尋ねた。
小田急百貨店は「例年より1週間立ち上がりが遅いため、前年比90%で推移。『和』と冷凍が好調で、特に冷凍はコロナ禍で認知が広まっている上、今年はECサイトを展開する外部のモールに初出品しており、順調だ」という。
京王百貨店は売上げが前年比9%増(10月22日時点)。「一昨年、自宅で正月を過ごす人々が増加して業界全体でおせちが不足した反動から、昨年は予約の前倒し傾向が見受けられ、直前に当たる12月は前年割れだった。今年は原材料の高騰で価格が上がり、コロナ禍の一段落で年末年始の過ごし方を決めかねている人が増えるなど、逆風が吹くと見ていたが、予約は順調で右肩上がり。コロナ禍前にみられた12月の駆け込み需要も想定し、準備する数量は10~15%増で計画している」という。
そごう・西武は前年比8%増の売上げを見込む。同社は「一昨年は12月中旬頃に品薄になった影響もあり、昨年はスタートダッシュが顕著だった。今年は3年ぶりに行動制限のない正月が想定され、旅行の計画などを含めながら、ゆっくりと選ぶ印象。コロナ禍前のように11月中旬からの予約が多くなるのではないか」と商戦を分析。売れ筋については「定番の『和』も人気だが、近年はローストビーフなど肉料理がふんだんに入ったおせち、『洋』や『中華』などオードブルとして楽しめるおせちの需要も増えている。今年は3~4万円台の『プチ贅沢』と呼べるおせちが好調」と説明する。
大丸松坂屋百貨店は「昨年に引き続き“食”のプロに監修して頂いた『特別企画おせち』、人気の料亭やホテルが手掛ける『厳選おせち』が好調。今年の傾向としては『広域配送おせち』の中で『肉おせち』の売上げが前年の1.5倍に上る」という。昨年までの5年間で約1.3倍になった売上げも「順調」だ。
高島屋は「高額品の売れ行きが良く、3年ぶりに行動制限がなく、久しぶりに親戚や親しい人々と集まる正月が来ると予想される中で、大人数用も人気。高額品がけん引し、売上げは今年も前年を上回る見通し」という。
東急百貨店は「旅行支援などを背景に落ち着いた滑り出しで、売上げは前年並み。前々年対比では2桁増となる。カテゴリーでは『少人数・洋風』が好調で、『老舗・名店』を含む『和風』も底堅い」。通期での売上げは前年比で微増を目指す。
東武百貨店は売上げが前年比17%増(10月26日時点)と上々の滑り出し。「従来の『和』だけでなく、『洋』や『中華』などバラエティに富んだおせちが売れ筋。とりわけ、一口サイズの料理が多く入った『少量多品目』が人気だ。大きなおせちも好調だが、2人前を2点など小さいおせちを複数選んで買う人も増えている」という。通期での売上げは同10%増を見込む。
松屋は「前年を少し超える実績で、昨年に続き高額品が動いている。原材料の高騰、外出規制緩和による旅行需要の増加などで今年は厳しい商戦を予想していたが、まずは堅調な滑り出し。昨年以上の売上げを見込む」という。
三越伊勢丹は売上げが前年並みで推移。「コロナ禍前の12月の盛り上がりを期待すれば、通期では102%前後で着地するのではないか。カタログの巻頭に載せた数量限定品は値上げに関係なく完売が多い」とした。
近鉄百貨店は「コロナ禍が収まってきている中で、『大人数用』が復調。有名料亭、料理屋の『和』も人気で、中でも限定品だ。売上げは前年比5%増で推移しており、通期でも同等を見込む」と回答した。
京阪百貨店は売上げが前年比8%増(10月末時点)と好発進。「有名料亭おせち」が堅調という。「(行動制限がない状態で)巣ごもり需要が見込み薄で、数量の減少が予測される。一方で、おせちの大半は原材料の高騰で値上げされており、単価は向上するだろう」と指摘する。
阪急阪神百貨店は「阪急」と「阪神」ののれん別で回答した。阪急のれんは「コロナ禍の初年度は取り分けや接触への不安から『個食おせち』や『銘銘おせち』の売れ行きが良かったが、徐々に3人前や4人前などが復調してきた。一方で『自分だけのおせち』も当たり前になりつつあり、個食おせちや銘銘おせちはプラスアルファにつながっている。『大人数で楽しむおせち』にも復調の兆しがある」と総括。阪急うめだ本店の売上げは前年比で約1割増(10月末時点)と好調だ。阪神のれんは売上げが前年並みで、最終も「前年と同水準を見込む」という。
コロナ禍での“特需”を定着させられるか――。行動制限がないまま年末年始に突入すれば、結論は数字で示される。百貨店業界のおせち商戦は、2022年が分水嶺だ。
(野間智朗)
以下、担当者と推奨品を掲載する。
<協力を得た百貨店>
※企業を東京都と大阪府に分けて五十音順
<お断り>「直前でも買える」という条件を設けたものの、商品は売り切れる可能性があります。ご了承下さい。
【推奨者】第1MDグループグループMD部おせち担当マネージャー 中本光昭氏
【商品名/価格】<日本料理 ラ・ボンバンス>和風おせち三段重/8万6400円(税込み)
【概要】<日本料理 ラ・ボンバンス>のオーナーシェフ岡本信氏が手掛ける和食というジャンルを超えた華やかな膳に仕上げたおせちです。
【推奨する理由】秘伝のタレに漬け込み、じっくりと10時間火を入れたローストビーフをはじめ、今回のスペシャリテともいえる自家製のカラスミは塩漬け・焼酎漬け・京麹味噌漬けの三段仕込みで手間を惜しまず丁寧に仕上げた伊勢丹限定おせちです。
【推奨者】MD推進部食品・テナント担当マーチャンダイザー 本田康祐氏
【商品名/価格】2西麻布<ラ・ボンバンス>和風おせち料理 二段重/5万4000円(税込み)
【概要】店名の「BOMBANCE」は、フランス語で“ご馳走”を意味しています。日本料理店でありながら、時にはジャンルを奔放にまたぎたいという思いが込められています。「紀尾井町 福田家」他、名だたる料亭やホテルで研磨を重ねてきたオーナーシェフの岡元信氏は、日本料理の真髄を大切にしつつ、フォアグラやトリュフなども大胆に取り入れた新日本料理を提案し続けています。
【推奨する理由】日本料理店でありながら、時にはジャンルにとらわれない「ご馳走」をつくり上げている「ラ・ボンバンス」。名だたる料亭やホテルで研磨を重ねてきたオーナーシェフ岡本信氏の提案する美味おせちで新年を迎えて頂きたいです。
【推奨者】京王百貨店新宿店食品・レストラン部商品担当おせちバイヤー 薄井慎也氏
【商品名/価格】京王百貨店オリジナルおせち「煌」/1万6200円(税込み)
【概要】多彩な味わいの一口おせち。全62種類ものメニューを贅沢に。和洋中バラエティ豊かなおいしさが楽しめます。
【推奨する理由】トレンドである「少量多品目」をテーマに、和・洋・中さまざまな味わいが楽しめるラインアップに。原材料高騰が続く中、3~4人前のボリュームながら送料込みで1万6200円と価格をおさえ、コロナ状況をはじめとした年末の予定が立てづらい中でも、冷凍・配送可にすることで、“会えない代わりに贈る”“家族・親戚が集まったタイミングで解凍する”といったさまざまな需要に対応。また、コロナ禍を機に「お正月に外出する代わりに自宅でおせちを食べて家族でゆっくり過ごす」という習慣が戻り一定数定着するとみていることから、各ご家庭で気軽におせちを楽しんでいただきたいという思いで、お値ごろ価格の三段重を企画しました。
【推奨者】リーシング本部リーシング二部フード担当 長岡俊範氏
【商品名/価格】京都のおばあちゃんのおせち三段重(西武・そごう限定)/2万1600円(税込み)
【概要】丹波の黒豆や山城の筍、京都産黒毛和牛のしぐれ煮など京都の素材を使用し、うま味をじっくり引き出した、懐かしい味わいのおせちです。
【推奨する理由】各地の“おばあちゃんのレシピ”を基に企画した、そごう・西武限定の「おばあちゃんシリーズ」。今年は「京都」、「金沢」、「山形」、「宮城」と4つの地域にそれぞれの地元の食材や郷土料理をモチーフに、昨年より品目数を増やしてリニューアルをいたしました。中でも「京都のおばあちゃんのおせち」三段重は1番人気で、幅広い世代が食べるおせちだからこそ、味付けも上品にかつ丁寧に仕上げています。
【推奨者】本社営業本部MDコンテンツ開発第2部フーズ担当 内藤真光氏
【商品名/価格】<京都 衹園おくむら>弥栄 大丸・松坂屋厳選 和・洋風 二段(3人用)/1万7800円(税込み)
【概要】名店のおせち、京都衹園の人気フレンチ「衹園おくむら」、大丸・松坂屋が自信を持っておすすめします。伝統を受け継ぐ「和」の重と、自由な発想が息づく「洋」の重。2つのお重が織りなす至極のハーモニーをお楽しみください。
【推奨する理由】当社厳選した有名店のおせちは、伝統を受け継ぐ「和」の重と、自由な発想が息づく「洋」の重と2つのお重が織りなす至極の一品です。
【推奨者】おせち担当バイヤー
【商品名/価格】【高島屋オリジナル】<高島屋 ラグビー応援おせち>和・洋・中 二段重/2万8080円(税込み)
【概要】ラグビー熱が高まりそうな2023年。紅白ようかんでデザインしたラグビーウエアやチョコのラグビーボールなど、見ているだけで気持ちがあがるメニューに加え、栄養面でも「高たんぱく」にこだわったお料理を詰め合わせ。ラグビーW杯3大会連続出場の田中史朗選手と共にメニュー開発をしたおせちです。
【推奨する理由】田中選手と共にメニュー開発した、オリジナルの“高たんぱく”おせち。田中選手はプロのアスリートなので、栄養面はもちろんですが、味のおいしさにも太鼓判をおしていただきました。また、ラグビーアイテムを模したスイーツにもとても喜んでいただきました。
【推奨者】フード事業部フードMD部惣菜・米飯バイヤー 田崎健二氏
【商品名/価格】東急百貨店オリジナル 和洋中スクランブルおせち&オードブル/2万7800円(税込み)
【概要】国際色豊かで世界の文化が交錯する街“渋谷”をイメージした多品目おせち&オードブル基盤の様な仕切りはまさに渋谷のランドマークでもあるスクランブル交差点。伝統の味とグローバルな風味の融合をかたちにした、おせち料理と多彩なオードブルが揃う美味の宝庫!
【推奨する理由】日本伝統のおせち料理に加え、中華料理と西洋料理のオードブルをセットに。渋谷スクランブル交差点をイメージしたバラエティー豊かでボリュームのある多彩な美味をご用意しました。
【推奨者】池袋本店食品部商品企画課サブマネージャー 因幡秀樹氏
【商品名/価格】[東武オリジナル 日本の味めぐり ~47都道府県~]和風二段重/2万9160円(税込み)
【概要】池袋店60周年・船橋店45周年を記念した全都道府県の名産品や郷土料理、地域の食文化やゆかりの味わいを集めたおせち料理です。
【推奨する理由】ご家族、ご友人などお集まりの場で、日本全国さまざまなお味を楽しみながら会話も弾む、皆様でお楽しみいただけるおせちです。
【推奨者】食品部食品1課弁当惣菜担当バイヤー 田中翔氏
【商品名/価格】〈松屋オリジナル和洋三段重〉/2万1600円(税込)
【概要】かにや鮑など豪華食材、和と洋のごちそうを彩りよく。和のおせち料理を二段、洋のごちそうメニューを一段に。多彩な美味を彩りよくボリューム満点に仕立てました。
【推奨する理由】松屋で一番人気のオリジナルおせち。家族皆が集まれるこの年末年始は、和も洋も楽しめるバラエティに富んだボリューム満点でコスパの高いおせちがおすすめです。
【推奨者】第1MDグループグループMD部おせち担当マネージャー 角井輝昭氏
【商品名/価格】<京料理 たん熊北店>和風三段重/3万5640円(税込み)
【概要】京料理「たん熊」は、昭和3年、京都・高瀬川のほとりに誕生。以来、お茶の両千家をはじめ、多くの文人墨客に愛されているお店です。
【推奨する理由】伝統的な和風おせちを一品一品吟味し、銀鱈西京焼きなどを盛り込みながら、紅白、五色を意識して華やかに盛り付けた三越限定おせちです。
【推奨者】営業政策本部商品政策推進部課長 湯瀬光一氏
【商品名/価格】近大味めぐりおせち/2万9700円(税込み)
【概要】近大素材を使用したおせち料理を令和3年度につくりました。世界初のクロマグロ完全養殖に成功した「近大マグロ」、「近大マダイ」などの海産物や附属農場の「青梅」などの農産物に加え、今年は第2弾として「近大みかん」や「紀州アカモク」などを新たに使用しました。昨年に引き続き、農学部の学生(アグリビジネス実習生や学生サークル「GAVRi」)が育てた野菜も使用し、近大素材をグレードアップさせたハレの日にふさわしい和洋折衷のおせち料理に仕上げました。
【推奨する理由】マグロの完全養殖で有名な近畿大学の研究成果素材を使用したおせち。代名詞である「近大マグロ」の他、「近大マダイ」、「近大みかん」、「近大ブリヒラ」や農学部の学生が育てた野菜など17品目が近大素材使用のおせち料理です。付属品の風呂敷も近畿大学文芸学部の学生デザインで、学生の想いがたっぷり込められた近鉄百貨店オリジナル商品です。
【推奨者】京阪百貨店食品統括部食品企画マネージャー 國分雅一氏
【商品名/価格】〈芦かり〉オリジナル和風おせち/4万3200円(税込み)
【概要】古くから続くおせち本来の伝統的な味。若い世代から昔ながらのおせちを好まれる方まで、ご家族皆様でお楽しみいただけます。
【推奨する理由】海の幸、山の幸を豊富に盛り込み、ボリュームがあって贅沢な内容です。おせち本来の伝統的な味にこだわり続けた京阪オリジナルおせち「芦かり」を囲んで、家族だんらんな2023年新春をお迎え頂けることを願っております。
【推奨者】阪急阪神百貨店第1店舗グループフード商品統括部惣菜商品部バイヤー惣菜・計画担当 岩本好史氏
【商品名/価格】〈阪急限定〉「宝梅」和風宝梅-22/2万3760円(税込み)
【概要】素材を生かし、うま味を引き立てる「なにわの味」を伝承。味わい、縁起の良さ、美しさ、十分な食べ応えと、三拍子も四拍子も揃った長く愛される自慢のおせちです。
【推奨する理由】阪急オリジナルの「宝梅」シリーズは全6アイテムで1段重から3段重まで、家族の人数に合わせてお求め頂けるようにしています。また、和風おせちだけではなくお子様からお年寄りまで楽しめる「大人数で楽しむ」を盛込んだ「和風・洋風・中国風」3段おせちもご用意しています。毎年5月下旬から6月上旬にかけ、取引先に出向き、試食・お重の詰め方・角度・各お料理の配置などの確認を行い、お客様がどのように見るか・思うかなど、阪急オリジナルに恥じないおせち料理をつくっています。
【推奨者】阪急阪神百貨店第2店舗グループ阪神百貨店梅田本店フード商品統括部EC・ギフト部バイヤー 南木秀介氏
【商品名/価格】〈空心〉渾身 中国料理おせち 二段重/2万7000円(税込み)
【概要】阪神梅田本店9階フードホールの人気店、「空心」から、大澤シェフ自身が仕上げた本格中国料理のおせちが登場。縁起の良い伊勢海老やあわび、ふかひれなど贅沢な食材を使い、新しいレシピのソースで仕上げた豪華なおせちです。名物の麻婆豆腐をはじめ本格中国料理が満載の阪神百貨店だけのおせち料理です。
【推奨する理由】昨年オープンした阪神百貨店梅田本店の9階レストランフロア「空心」。世界でも有名なグルメ本に認められた中国料理レストランを運営する大澤シェフが、阪神百貨店梅田本店内でプロデュースした中国料理店です。シェフ自身が手間暇かけて仕上げた食材は、価値のあるおせち料理だと考えます。