2024年11月22日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 「顧問」という働き方(1)富裕層に多数のオファー 沸き立つ「顧問」市場

※画像はイメージです

これまでは名誉職的な側面が強かった「顧問」が、この10年間で大きく性質を変えている。中でも企業経営経験者である富裕層に対して、多くのオファーが舞い込んでいる。そこで、これから3回に渡って顧問という職業に焦点を当てていく。1回目は「沸き立つ顧問市場」だ。

職業になった「顧問」

「毎日1〜2件、多い日には朝から晩まで出ずっぱりのときも。現役時代よりよほど忙しくしているよ」

こう語るのは、ある有名企業で役員を務めた後、誰もが知る企業にヘッドハンティングされて常務まで上り詰めた男性。今は退職して第2の人生を歩んでいるが、引退してのんびり過ごしているわけでもなければ、これまでのように企業に属したサラリーマンとして働いているわけでもない。「顧問」として新たな道を歩んでいるのだ。

顧問といえば、社長や会長を勤め上げた人物が最後に座る「名誉職」のイメージが一般的だ。しかしここ10年で大きく性格が変わった。過去に培ってきた経験や専門知識に基づいて、企業に対してさまざまな助言やアドバイスを行い問題解決に当たる「ブレーン」的な存在になり、一つの職業になっている。

こうした変化は、新たな顧問の台頭を生んでいる。複数の企業で顧問を務める、別の言い方をすれば顧問を掛け持ちして稼ぐ「プロフェッショナル顧問」が誕生しているのだ。冒頭で紹介した男性もプロフェッショナル顧問として30社を掛け持ち、毎日顧問先に顔を出すなど走り回っている。

11万人の市場まで誕生

このように聞くと、コンサルタントと同じではないかと思われるかもしれない。確かに顧問もコンサルタントも「外部の声」という意味では同じだ。だが大きく違うのは、顧問はより深く、より直接的に企業の事業に参画するという点だ。

コンサルは、調査と助言が中心だ。企業から持ち掛けられた経営課題について調査・分析を行い、解決策を提示して助言する。だがここまでだ。それに対し顧問は解決策を提示して助言した後、企業のメンバーと一緒になって課題を解決するための実務に携わる。つまり、ハンズオン(直接関与)するかどうかが大きく違うのだ。そういう意味では、外部の人間という立場でありながら、業務としては内部の人間として動くわけだ。

昨今、こうしたプロフェッショナル顧問に対するニーズが高まっている。中でも人材が乏しいベンチャー企業や中小企業のニーズは高い。中途採用を実施したり、コンサル会社に依頼したりすれば多額の費用がかかり、希望する人材に出会える保証もない。それが顧問であれば、ニーズにマッチした経験や専門的な知識を持った人を格安で雇うことができるからだ。

利用する企業の増加に目をつけた人材派遣会社も、相次いで顧問市場に参入している。以前は軽作業の請負や補助的なオフィスワークといった業務が中心だったが、リーマンショック以降、日本経済がシュリンクしていく中で派遣業界も事業の多角化を迫られた。そこで、派遣会社各社は相次いで顧問派遣事業に参入。今では20社以上に増えており、1つのマーケットを形成している。関係者の間では「顧問市場は11万人を超え、今後、さらに拡大していくだろう」とも言われており、今ではベンチャー企業や中小企業のみならず、大企業も顧問を活用し始めている。

若い顧問も急増中

顧問という名前から、どうしても退職者を始めとした“現役を引退した人”が就く職業的なイメージが強い。ところが最近では、若い顧問も増加している。

あるIT企業に勤めていた40代の男性は、「先輩を見ていると、将来このまま今の会社にいても楽しくないかもしれない」と思うようになった。どこまで出世して、どれくらいの給料をもらえるか、会社人生のゴールが見えてしまったのだ。そのため独立を決意、これまで培ってきた経験やノウハウを生かして顧問という道を選択し、今では30社の顧問を兼務しているという。

こうしたケースは枚挙に暇がない。「組織に縛られたくない」、「組織の歯車になるのではなく、大きな仕事がしたい」といった思いを強めた人たちが独立し、その後顧問という職業を選択しているのだ。人材派遣会社の幹部によれば「IT企業経験者に対する企業側のニーズは強く、着実にIT系若者顧問は増加している。今後も、さらに拡大するのではないか」という。

それだけではない。猛威を振るう新型コロナの影響で、早期退職を募る企業が相次いでおり、労働市場には人材があふれ始めている。そうした人たちも顧問という職業に就き始めているといい、「顧問に対して持つイメージが大きく変わってきた。有望な人材を供給するという側面から見ても、顧問市場にとっては追い風だ」(人材派遣会社幹部)という見方がもっぱらだ。

そこで、次回以降では顧問の働き方や待遇などをご紹介する。合わせて採用する側の企業が気を付けるべきこと、そして顧問になるにはどうすればいいかを解説していく。

 

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