2024年11月22日

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コロナ禍で変わる“春ギフト”

西武池袋本店は、3階の特設会場で春の逸品を紹介

百貨店業界にとって、3月~4月は贈答需要の“稼ぎ時”だ。卒業式や入学式、就職や転職、異動などで増える“春ギフト”の需要を取り込むため、店舗やインターネット通販サイトで対応を強化する。「デパートニューズウェブ」では、百貨店が運営するネット通販サイトにおける食品の春ギフトに注目。主要百貨店の担当者に、コロナ禍という非常事態でライフスタイルや価値観が一変した昨年の傾向や売れ筋の商品、引き続きコロナ禍で迎える今年の一押しの商品などを尋ねた。

■焼き菓子の人気が高まる

コロナ禍は春ギフトの売れ筋にも影響を及ぼした。京王百貨店の磯野雅隆事業戦略部EC事業推進担当マネージャーは「2019年、20年ともに焼き菓子がトップだが、シェアは19年の42%から65%に上がり、2位の和菓子が40%から25%に下降。コロナ禍を前提に想像すると、畏まったギフトは控えられ、子供がいる家庭向けの贈答が多く、日持ちする焼き菓子が選ばれたと考えられる」と分析。そごう・西武の竹村麻子デジタル戦略本部e.デパート部商品担当マーチャンダイザーも「例年はバウムクーヘンやクッキーを中心に華やかな箱入りの洋菓子が個数ベースで上位に入るが、昨年は母の日向けのパッケージのようかん、カタログギフト、サービスパックのチョコレートやかりんとうが上位だった。外出制限の状況下だからこそ、母の日に対応できるギフトや賞味期限にとらわれないカタログギフトが重宝され、サービスパックのチョコレートやかりんとうは『イエナカ需要』として伸びた」と指摘する。

一方で、大丸松坂屋百貨店では「バウムクーヘンのシェアが8ポイントほど上昇し、メーカーの減産によって和菓子のそれは3ポイントの縮小となった」(田中直毅本社MDコンテンツ開発第2部ギフト企画運営担当)という。

なお、昨年の売れ筋(トップ3)は、京王百貨店が「樫木の樽」の「ナッツスクエア」(550円、以下の昨年の売れ筋は全て本体価格)、「ヨックモック」の「グラン サンク デリス」(5000円)、「モンロワール」の「サービス袋 リーフメモリー」(1000円)、そごう・西武がカタログギフトの「ごっつお便 TAコース」(5300円)、「とらや」の「母の日パッケージ小形羊羹・水羊羹詰合せ」(2300円、同)、「ガトーフェスタ ハラダ」の「スペシャルセレクション」(2400円)、大丸松坂屋百貨店が「ねんりん家」の「マウントバーム しっかり芽」(1500円)、「ねんりん家」の「季節限定 マウントバーム 詰合せ 3本入り」(2250円)、「プレスバターサンド」の「バターサンド 15個入り」(2639円)の順だった。

■一押しの魅力を競う

コロナ禍は依然として収束には至らず、今年も春ギフトはネット通販へのシフトが予想される。百貨店業界の各社も品揃えを充実させて購買意欲を喚起するが、担当者に一押しを聞いた。

注)各百貨店の一押し商品は、クリックすると購入用のページに移ります

京王百貨店の磯野氏が挙げるのは「銀座千疋屋」の「銀座バラエティセット」(税込み5400円)。磯野氏は「暑くなるとゼリーが多く売れる。特に人気の銀座千疋屋のゼリーに焼き菓子がセットになり、見た目も豪華。今年3月に金額ベースで最も売れた商品でもある」と理由を説明する。

人気のゼリーと焼き菓子を詰め合わせた、「銀座千疋屋」の「銀座バラエティセット」

そごう・西武の竹村さんは「アンリ・シャルパンティエ」の「ガトー・キュイ・アソート<いちご>M」(税込み2268円)を推す。「春に打ち出すギフトとして『母の日』があり、もらって嬉しいものではスイーツが多い。今年も会いに行けない状況が想定され、美味しいものを食べて欲しいという気持ちを、より一層人気のスイーツで届けたいと考えた」(竹村さん)という。

母の日にも最適な「アンリシャルパンティエ」の「ガトー・キュイ・アソート<いちご>M」

大丸松坂屋百貨店の田中氏は「メッセージカード付きチョイスギフト」(税込み3080円~10万円)を推奨する。無料で商品に写真やメッセージを添えられる、今春に投入したカタログギフトだ。



写真やメッセージを添えられるカタログギフト「メッセージカード付きチョイスギフト」

三越伊勢丹の伊勢丹新宿店で食品を担当する上野奈央さんの一押しは「ミシャラク」の「カドー ド フルール」(税込み2376円)。フランス語で「花の贈り物」を意味し、ミシャラクの代表的なケーキ「ミシャラクモンクール」にインスピレーションを得た、春らしい華やかなサブレの詰め合わせだ。鮮やかなルージュ色のパッケージが印象的で、バラや星がキラリと輝き、シックながら“ミシャラクらしさ”が漂う。中には、キュートな花や星の形のサブレを6種類、詰め合わせた。上野さんは「クッキーを含めて可愛らしい印象で、値頃さも兼ね備え、ギフトには最適」と強調する。


「ミシャラク」の春らしい華やかなサブレの詰め合わせ「カドー ド フルール」

■店舗でも購買意欲を喚起

ネット通販サイトだけでなく、店舗でも春ギフトを訴求する。そごう・西武の西武池袋本店は「春の逸品」と題し、店舗のスタッフが実際に食べ、使い、着て、贈り物や自分へのご褒美として勧めたい商品を紹介(4月13日まで)。三越伊勢丹の三越日本橋本店は、桜やピンク色のパッケージの商品を目立つ場所に展開するとともに、日本橋やライオンのパッケージなど「ここでしか買えない商品」を案内する。