2025年03月31日

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東京駅八重洲口前の街区名が「TOFROM YAESU」に決定

「TOFROM YAESU TOWER」の商業施設(イメージ図)

国家戦略特区に指定され、東京駅八重洲中央口前で推進中の大規模複合開発「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」の街区名称が、「TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)」に決定した。再開発組合の一員、特定業務代行者代表企業として参画している東京建物は「八重洲プロジェクト記者説明会」を開き、再開発事業の概要および街区名称や由来を発表した。

八重洲プロジェクト記者説明会では、まず東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発組合理事長の加藤一男氏が登壇し、あいさつを行った。

再開発が次の世代への新しいスタートに

東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発組合理事長 加藤一男氏

B地区理事長 加藤一男氏

加藤 振り返りますと約25年前、私には小さな夢と希望がありました。その夢はやがて目標に変わり、この土地の皆様や地元中央区の協力により、さらに大きな目標になりました。反面、目標が大きくなるにつれて、相応の困難を伴うことが分かってきました。それは、長い時間との戦いでもありました。

この再開発を我々の世代で完結したいという強い思いが、困難を乗り越える糧でした。これまで大きな難題がありましたが、まちの仲間達と共に立ち向かい続け、竣工まであと1年というところまで進むことができました。この再開発が次の世代への新しいスタートとなり、八重洲がさらに発展することを願っています。


続いて、東京駅前八重洲一丁目東A地区市街地再開発組合理事長兼特定業務代行者代表企業の東京建物代表取締役社長執行役員の小澤克人氏が、A地区・B地区の開発事業の概要と街区名称を以下のように説明した。

YNKエリアの玄関口となる国家戦略特区の大規模複合再開発事業

東京駅前八重洲一丁目東A地区市街地再開発組合理事長 小澤克人氏

東京建物社長執行役員 小沢克人氏

小沢 本プロジェクトは東京駅八重洲口の目の前、YNKエリアに位置しています。YNKエリアとは八重洲・日本橋・京橋のそれぞれの頭文字です。YNKエリアは伝統と最先端が溶け合うまちであり、進化を続けている東京の最先端のエリアです。東京駅や日本橋駅、大手町駅など6駅を有し、都内主要エリアへのアクセス性の高さや地方都市、国際空港を含むあらゆる立地への圧倒的交通利便性を有しています。

中でも東京駅は新幹線を含めた多くの路線が乗り入れており、昨年3月の北陸新幹線の敦賀延伸で東京駅から乗り換えなしで結ばれる都道府県は34にも及ぶそうです。オフィスのプライム立地としてのポテンシャルを有しながら、伝統ある文化が今なお継承されており、イノベーションを創出しやすい素地があるという特徴を有しています。

YNKエリアを歴史の観点から振り返ると、江戸時代の慶長八年(1603年)に、幕府による本格的なまちづくりが始まりました。五街道の起点として日本橋、京都に向かう最初の橋として京橋が整備され、交通網の整備により地方からの人や物資が流入し、新たな産業や文化を迎え発展してきました。江戸城下には全国からものづくり職人などが集まり、江戸城や武家屋敷で使用する畳やふすま、武具などが生産されます。ふすまには絵が描かれることから、狩野派をはじめ歌川広重など多くの浮世絵画家も居住し、芸術文化が栄えました。

現在も京橋エリアには多くの画廊や骨董店が並び、日本有数のアートの発信地になっています。また、日本橋には魚市場、京橋には青物市場が開かれ、屋台の寿司や蕎麦が考案されるなど、江戸食文化の中心地として発展しました。江戸前といわれる食文化がこのまちから生まれたというわけです。

YNKエリアは100年以上続く老舗企業、日本、世界を代表する大企業が多数存在する一方で、都内でも有数のスタートアップ集積地となっていることも特徴です。このようにYNKエリアでは、江戸時代から現在に至るまで圧倒的な交通基盤を背景に人・モノ・金の流通が促進されるとともに、新たな産業や文化の創出・育成、すなわちイノベーションが展開されてきました。

これまでは街区の細分化や建物の老朽化などによって、十分ポテンシャルが発揮されてきませんでしたが、今後は多数の再開発が予定されており、まちが大きく変貌していきます。首都高の地下化をはじめとした日本橋川の再生計画やトウキョウスカイコリドー計画、東京駅からダイレクトに羽田空港を結ぶ新線(仮称・羽田空港アクセス線)、つくばエクスプレスと都心部・臨海地域地下鉄構想の東京駅接続に向けた動きなどで、YNKエリアのさらなる発展が見込まれています。

その玄関口となるのが、東京駅前八重洲一丁目A地区・B地区の市街地再開発事業です。約25年という長い年月を掛け、立場や事情の異なる250もの関係権利者の方々と議論を重ねてきた、国家戦略特区の大規模な複合再開発となります。2026年に竣工を予定し、オフィス、医療施設、劇場・カンファレンス施設、バスターミナル、商業施設などを整備し、国際都市東京の玄関口にふさわしい都市機能の強化と国際競争力の向上に貢献します。

街区名称は「TOFROM YAESU」です。TOFROMは英語のTOとFROMを組み合わせた造語で、日本中ひいては世界中の人・モノ・コトがここに集まってつながり、ここから多様な価値が生み出され、発信される場所になってほしいという思いが込められています。建物名称はA地区を「TOFROM YAESU THE FRONT」、B地区を「TOFROM YAESU TOWER」と名付けました。建築デザインは、多様な個性が集積する街並みを八重洲らしさと捉え、箱を重ね合わせたデザインを採用しました。様々な役割や人々を支え、つなげてきたまちの歴史を感じさせるデザインです。

建物概要について説明します。A地区のTOFROM YAESU THE FRONTは地下2階~地上10階建てでオフィス、商業施設で構成。B地区のTOFROM YAESU TOWERは地下4階・地上51階建てのオフィス、医療施設、劇場・カンファレンス、バスターミナル、商業施設、住宅棟などで構成される八重洲アドレスで再高層の複合施設となります。

TOFROM YAESUは「八重洲地下街(ヤエチカ)」と直結し、八重洲のメインアベニューの真正面からTOFROM YAESUに入れるようになります。さらにヤエチカからは大丸側、八重洲通り側合わせて3カ所のアクセスが設けられ、充実した地下ネットワークが形成されます。ヤエチカは約180店舗からなる日本有数の地下街です。これに「東京駅一番街」と「グランスタ」を合わせると350店舗を超える多様な店舗群が広がり、さらに大丸東京店のデパ地下にもつながっています。まさに隣接する充実したパブリックゾーンと本プロジェクト内のプライベートゾーンがシームレスにつながる極めて利便性の高い環境を有することになります。


ここからはTOFROM YAESU THE FRONTとTOFROM YAESU TOWERに整備される主な施設の特徴を紹介する。

ウェルビーイングを向上させるサービス、機能、空間を実装

TOFROM YAESU TOWERの地下階には、ヤエチカからアクセスできるバスターミナル「バスターミナル東京八重洲」(京王電鉄バスが運営)が整備される。国際空港や地方都市を結ぶ高速バスが発着し、TOFROM YAESU ・東京ミッドタウン八重洲・八重洲二丁目中地区市街地再開発事業の東京駅前の3つの再開発事業の地下空間に、計20バースもの国内最大級の高速バスターミナルが誕生する。

6000㎡を超える商業エリアは、飲食店舗を中心に約70店舗がオープンを予定。1階には屋内広場「檜物町(ひものちょう)スクエア」を設け、イベント開催や神輿の展示をはじめとした地域の魅力を発信する。

3~6階に入るのは劇場・カンファレンス施設。約800名収容可能な東京駅前初となる段床式の劇場や、大型の展示会、講演会などが実施可能な平土間ホール、各種会議、交流イベントが実施できる会議室を完備する。演劇・ミュージカル・音楽ライブなどの催事を誘致し、東京駅周辺エリアに不足していたエンターテインメントを通じた文化発信拠点を整備するとともに、MICE(国際会議、展示会・イベント、講演会、セミナーなどの催事)を誘致することで、YNKエリアのビジネス交流機能のさらなる拡充に取り組む。

6、7階に整備されるのが「日本医科大学八重洲健診ステーション」。FDG-PETによるがんの早期発見やβアミロイドPETによるアルツハイマー病診断をはじめ、先進機器の導入・専門医の登用により精度の高い病変検出・疾病の発見を行う。レディース健診部門も備える。

TOFROM YAESUの位置図

テナント企業のプライベートゾーンであるオフィス専用部については、貸付面積がTOFROM YAESU THE FRONTとTOFROM YAESU TOWERを合わせて約10万㎡、基準階フロア面積はTOFROM YAESU THE FRONTが約850㎡、TOFROM YAESU TOWERが約2500㎡。さらにTOFROM YAESU TOWERにはスマートフォンによるタッチ入退館システムを国内の賃貸オフィスとして初めて導入し、セキュリティ性の向上と共にアプリの起動なしでシームレスな入退館を実現する。

TOFROM YAESUでは、ワーカーが心身ともにリフレッシュすることができる「YAESU SKY LOUNGE」、心と身体の健康と人や社会とのつながりを創出する「Wab.(ワボ)」をはじめ、ワーカーのウェルビーイングを向上させるサービス・機能・空間を実装する。TOFROM YAESU TOWER41階に整備されるYAESU SKY LOUNGEは東京湾を一望でき、地上約190mながら多彩な緑に囲まれた心地良い空間で、心身共にリフレッシュできる。個室空間「RE:TREAT Room(リトリートルーム)powered by Upmind」では全国の源泉を凝縮抽出・モバイル化するクラフト温泉の特許技術をもつLeFuroと協業し、温泉ミストによる湯治体験が気軽にできる「喫泉室」として利用できる。

TOFROM YAESU TOWER13階に設けるWab.は、入居企業のワーカー向けのサポート機能をもつ共用スペース。産地・生産者・素材・調理方法などにこだわった美味しく身体にも良い食を通じてワーカーの生き生きとした生活をサポートする食堂・カフェ&バー・ビュッフェカウンタ―、サードプレイスとして多様な過ごし方を選択できるラウンジ空間、コミュニケーションの促進に寄与するイベントキッチンやイベントスペース、緑化やアート・お茶に特化した会議室、脳科学で実証された音楽と映像による刺激で集中・リラックスできる個室ブース、気分の切り替えを促すエレベーターホールなど、ウェルビーイング向上に資する多彩な取り組みを提供する。

また、キリンホールディングス、中央フードサービスと協業しキリンiMUSE免疫ケアサプリメント配合フードメニューの提供、日清食品、中央フードサービスと協業し33種類の栄養素とおいしさの完全なバランスを追求したブランド「完全めし」の提供、TeaRoom、secca inc.と共同開発した「オフィスで茶の間」サービス、ベジリンク、BGと連携して環境再生型農業により生産された地球にも人にも優しい食材の提供や生産者とのつながりの創出、「旅する調味料」と協業し47都道府県各地の郷土料理や調味料の提供など、多彩なパートナーとの協業によって1人ひとりのウェルビーイングに取り組む。

現在、オフィスの内定率はすでに60%に達している。東京建物代表取締役社長執行役員の小澤克人氏は「竣工した時点で6~7割の内定率を目標としていたのが、かなり前倒しで進んでいる。これは東京駅前という立地特性や充実した食事環境を有するエリア特性、ウェルビーイングを向上させる各種施策に対し、多くの企業から評価をいただいたことによる」と語っている。

(塚井明彦)