2025年03月17日

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地域共生を強みに開業50年に挑む「本厚木ミロード」 永山崇支配人に聞く

「本厚木ミロード」(ミロード1の施設外観)

地域と共にあり続ける施設として、地域との共生に余念がない「本厚木ミロード」。産官学と連携して地域活性化の施策を打ち続けるほか、インキュベーション・シェアオフィスを立ち上げ、起業家創出に取り組んでいる。商業施設運営でもそれぞれの館の特徴を明快に打ち出し、幅広い世代を取り込む。小田急SCディベロップメント本厚木営業室支配人の永山崇氏に、地域共生への取り組みと本厚木ミロードの店づくりについてお聞きした。


小田急SCディベロップメント本厚木営業室支配人の永山崇氏

――「本厚木ミロード」は1982年に開業して43年目に入っています。顧客の高齢化への心配はありませんか。

私どもの施設は館それぞれに特徴を持たせているので、幅広い世代のお客様が来館されます。「ミロード1」は日常生活に密着したデイリーな館のため、シニア世代をはじめ、幅広い年代層の方が来館されます。今のトレンドを追求して大型ショップを集積している「ミロード2」は若い年代層とニューファミリー層から支持されています。高架下商業施設の「ミロードイースト」は駅利用や通勤・通学される方に加え、その先に位置するバスターミナルや中央図書館を利用される方も往来しています。

――館それぞれが持つ特徴と強みについて、詳しく教えてください。

ミロード1は地下1階~地上7階建てで、食を集積した「ミロードフードマーケット」、ファッション衣料・雑貨、ライフスタイルショップ、カフェ、イベントスペースの「ミロにわ」、6~7階にレストランを擁しています。駅に直結し、一番集客力のあるデイリーの館です。

ミロード2は地下1階に「GU」、1階に「アンドエスティ」、2階に「ユニクロ」、3階に「無印良品」、4階に「ABC-MART」と「ABC-MART GRAND STAGE」、5階に「くまざわ書店」と「ニトリ デコホーム」、6階に「ノジマ」といったように各階に大型ショップを配置しており、先述のように若い年代層やニューファミリー層を中心に支持されている館です。高架下商業施設のミロードイーストは飲食店、カフェなどを中心に全27店舗からなっています。

――コロナ禍には多くの商業施設が影響を受けたものの、コロナ禍が明けて来館数が増え回復を辿っているようです。本厚木ミロードはどのような状況にありますか。

コロナ禍が明けてミロード1、ミロード2、ミロードイースト、ミロード1南館まで全館が堅調に推移しています。特にミロード2はリニューアル効果で売上げは前年比3%、客数は10%それぞれアップしました。ミロード1も前年を上回るなど、24年度は全館ベースでもコロナ禍前の19年度に迫る勢いにあります。

――ミロード2のリニューアルの内容は。

24年春に実施したリニューアルでミロード2に本厚木エリア初となるGU、アンドエスティ、ニトリ デコホームをオープンしました。同時にミロード1も改装してカプセルトイの「シープラ」「ふくいめがねspot」を新規に加え、「ムラサキスポーツ」、婦人衣料の「レマ」「スーツセレクト」などが移転・改装しました。

新型コロナウイルスの感染拡大が続いた時期は我々デベロッパー、出店されているテナント様も厳しい局面にありました。しかし我々は一貫してテナント様に寄り添い続け、イベントスペースと共用部を活用してテナント様の販路拡大につながるイベントを開催するなど、テナント様支援に注力しました。コロナ禍に退店されるテナント様がほとんど出なかった点からも、テナント様と良好な関係が維持できていると自負しています。

私どもは春と秋に小田急ポイントカード会員を対象にした「本厚木ミロード特別ご招待会」を開催していますが、これも出店されているテナント様に協力いただいています。地域にお住まいのお客様を中心に、開店前から多くの人が訪れる、地元に根付いた名物イベントとなっています。

湘北短期大学や東京農業大学と連携してイベントを開催

――本厚木ミロードは産官学と連携し、地域共生に注力されているようですが。

本厚木ミロードが本厚木エリアで一番店として、開業から43年間続けてこられたのは、地域の皆様に支えられてきたからこそです。行政、企業、学校などと連携して地域と共生した取り組みをしてきたことが、我々の施設にとって大きな強みになっています。

厚木市との取り組みでは、本厚木駅前のクリスマスイルミネーションなどが代表的で、毎年秋には厚木市消防本部の協力を得て親子で体験できる防災フェスタも開いています。厚木市とは、23年12月に文化芸術に関する連携協定を締結したことでより結びつきが強まり、文化芸術に関するイベントを定期的に開催するようになりました。

地元とは、地域の事業者が中心となって組織されている「あつぎエリアマネジメント」に協力して共同でイベントを開催したほか、つい最近では、Jリーグ入りを目指して厚木をホームタウンに活動しているサッカークラブ「厚木はやぶさFC」とサポートカンパニー契約を締結し、地域とのコネクションを広げました。

産学連携では、湘北短期大学と東京農業大学との取り組みを続けています。学生たちが企画・立案した催しをイベントスペースのミロにわで開催しており、湘北短期大学は湘北祭で夏祭りの縁日を、東京農業大学は秋の収穫祭で農産物の販売会などを実施しています。

私どもがインキュベーション・シェアオフィス「アゴラ本厚木(AGORA Hon-atsugi)」を直営で立ち上げたのは、神奈川県と連携した取り組みがきっかけでした。

インキュベーション・シェアオフィス「アゴラ本厚木」での座談会

――詳しい経緯を教えてください。

コロナ禍に、県と共同で厚木市の飲食事業者を支援する「小田急チャレンジコネクトin厚木」を実施しました。我々は厚木市内の飲食事業者が開発した新商品をお客様に提案する場を積極的に提供しました。これが布石となり、神奈川県のイノベーション人材交流拠点事業に採択。神奈川県央エリアの起業支援拠点となるアゴラ本厚木を22年7月、6階レストランフロアの一画に開業しました。

――アゴラ本厚木の開設から2年半が経ちますが、どのような成果を上げていますか。

すでに県からは、イノベーション人材交流拠点事業に3年連続で採択いただきました。アゴラ本厚木がスタートアップを支援する場として、地域の交流の場となる役割を担えるようになってきたと受けとめています。アゴラでは起業家の皆さんが情報交換する会を年間30回以上開き、600名以上の方が参加。これまでの2年半で34名の起業家がここから誕生しました。アゴラで起業し、ミロード1のフードマーケットにテナント様として出店され開発商品を販売している方もいらっしゃいます。

――厚木市はすでに人口減少を辿っているようですが、これからの本厚木エリアの可能性をどのように捉えていますか。

人口は減少しているものの、本厚木駅周辺は大型マンション建設が続いていいます。加えて厚木市役所が本厚木駅東口に移転し複合施設として整備されるなど、再開発計画もいくつか動いており、駅周辺の人口は増加していると実感しています。我々の施設は7年後に開業50周年を迎えますが、先行きに対して楽観もしていませんが、悲観もしていません。開業50年に向けてこれからもこれまで通り地域との共生を最大のテーマとし、行政や地元企業、学校などとの連携を図り、地域おこし、地域の課題解決に取り組みます。そして地域とのつながりをより一層強め、本厚木エリアのランドマークになり、地域から愛されるような施設づくりに努めていく所存です。

(聞き手:塚井明彦)