心地よさとクセを届けるバッグブランド「BASARA TYO」がV字回復した理由

2025/03/12 12:00 am

プリンセストラヤのバッグブランド「BASARA TYO」(以下、バサラ)が人気を集めている。2017年に制作チームが変わったのを契機に、コンセプトの“心地よいクセ”を強く出せる商品を開発。凹凸のあるドット柄が特徴の「ジータ」、機能性に優れる「ファビオ」などヒットアイテムを生み出した。売上げはコロナ禍中を除き右肩上がりを続けている。

今回取材させていただいた、商品部第3プロダクトグループの寺﨑萌MD。8年前からバサラの商品開発を担当する

目新しさを好む流行「婆娑羅」からインスパイア

バサラは1984年に誕生したオリジナルブランドで、百貨店と専門店に販路を持つ。価格帯は1万円~2万円前後。ブランド名は南北朝時代に流行した、「新し物好き」「派手な」「自由奔放」といった意味を持つ「婆娑羅(バサラ)」から命名し、コンセプトもこれを取り入れている。

BASARAのBAは「BASIC」(基本的な)、SAは「SATISFACTION」(満足)、RAは「RADICAL」(革新的)の意味もあり、ベーシックさがありつつ新しさや個性を持つ「心地よいクセに包まれたモノ」を提案する。

長い歴史を持ち、その時々の時代に合った商品を開発していたが、2010年代は売上げが低迷し、ブランドの独自性をあまり出せずにいた。商品部第3プロダクトグループの寺﨑萌MDは「安心感のあるベーシックなデザインに寄り過ぎていた。『パサラのブランドは分かりづらい』という声もあった」と述べる。

ドット模様が可愛い「ジータ」シリーズ

国産生地にこだわり、独自のデザインを実現

そのため17年5月に商品開発チームが新体制となり、寺﨑氏が担当者になってからは、バサラのオリジナリティを出すことに注力した。とりわけこだわったのが生地だ。それまで少なかった、日本の生地メーカーと共同開発したオリジナル生地を用いた商品を増やした。

バサラらしい“クセのある”デザインを表現する上で、生地は重要となる。「触った感触やツヤ感など、微妙な違いが商品の印象を変える。何度も修正して良いものをつくってもらった。製造は職人の手作業部分もあるので、細かい部分までこだわれるのが強み」(寺﨑氏)

例えば18年7月に発売した「ジータ」シリーズは、丁寧に織り上げられたナイロンツイルに、表面に凹凸の出る「ディボック加工」と強撥水加工を施した。ジータシリーズはドット柄の凹凸デザインが特徴で、これを維持するのは難しいが、入念な下準備や優れた縫製技術で実現している。

六角形を組み合わせたようなカクカク模様がユニークな「カクカク」シリーズ

23年3月に発売した「カクカク」シリーズは、再生ナイロン糸を使ったツイル生地を使用。これに、カクカクした表情を生み出すレリーフ加工を施している。こうした独自性のある商品が人気を博して売上げをけん引し、特にジータシリーズは24年の年間売上げ1位となった。

23年7月には新たな試みとして、国内のニット生地メーカーと組んだ「ネロア」シリーズも発売した。コーディネートのアクセントになる、カラフルなオリジナル柄のニットバッグ。時間のかかる横編み機で丁寧に編んだ、程よい厚みの生地で持ちやすい。これが好評だったため、このニット生地をハンドルに使った「プント」シリーズも翌年に発売した。

デイリーに使いやすい「プント」シリーズ

細やかな配慮が行き届いた機能性も備える

もう1つ、商品開発で重視するのが、生活者視点に立った使い心地だ。7年半前から撥水性と軽さのある生地を積極的に採用するようになり、今では大半の商品が軽量撥水となっている。特に撥水性と軽さに定評のある「ファビオ」シリーズ(18年2月発売)は売上げ上位となっている。

手の不自由な人から「ファスナーだと開け閉めしにくい」という意見を寄せられたことから、23年8月にはマグネットで簡単に開く「マスマス」シリーズを発売。近年は猛暑が深刻なため、暑い夏でも簡易保冷ができる「ポア」シリーズの展開を今春に始める。

ブランド40周年でもあった昨年度(23年11月~24年10月)は売上高が前期比40%増を達成し、視界は良好だ。今後は“クセ”をさらに強め、ファンを増やすことによる支持基盤の確立を目指す。「これまでの8年間で我々の精度も上がり、バサラらしさが確立され始めているのを感じる。このまま、バサラの個性的な部分を愛するお客様が増えていくのが理想」と寺﨑氏は展望を語る。

(都築いづみ)

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