2025年01月24日

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≪レポート≫日本SC協会、冬の定例記者懇談会を開催

25年にオープン予定の「三井ショッピングパークららぽーと安城」(写真はイメージ)

一般社団法人日本ショッピングセンター協会は先ごろ、「2024年度冬季定例記者懇談会」を開いた。24年にオープンしたSCや25年の商業施設等のオープン予定店舗、SC取り扱い基準の改定などについて説明。第10回日本SC大賞・第8回地域貢献大賞、第49回日本ショッピングセンター全国大会概要など協会の活動も発表した。当記事はその内容をレポートする。


2024年は1万㎡以下の小型SCが増えた(配布資料より)

24年(1月~11月)のSC販売動向は、館内や近隣イベントの開催による集客や、大都市を中心にしたインバウンド効果があったことなどで全月が前年を上回った。1月が5.1%。2月はうるう年により営業日数、休業日数が前年より1日多かったことや、中心地域の大都市がインバウンド客の来館増などで9.8%。3月は前年に比べて休日が2日多かったことなどで7.4%。4月と5月は前年に比べて休日日数が1日少なかったもののそれぞれ4.8%と3.9%。

6月の場合は、前年に比べて休日日数が2日多かったことが売上げを押し上げ10.7%と2桁伸長。7月は前年より休日日数が2日減ったことが来館者数の減少となり2.7%。8月は夏休みやお盆休みに加え、地域イベントや館内イベントの開催が来館客を増加させ7.1%。9月は前年より休日日数が1日多く、3連休が2回あったことや、イベント施策により7.3%。10月はプラスながら1.1%で低調。なかでも周辺地域は2年8カ月ぶりにマイナス(0.5%減)。インバウンド客の来館が多かったSCに好調が目立った11月は7.1%だった。

24年にオープンしたSC(速報)は23年を2上回る36SC。SCが小型化し、店舗面積が1万平米未満のSCが全体の約7割を占めたことから平均店舗面積が前年より約6310平米減少して1万858平米となった。SCが小型化している中で、4万平米台の「エミテラス所沢」(4万3000平米)と「ゆめが丘ソラトス」(4万2700平米)が、3万平米台は「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」(3万2000平米)がオープンしている。

24年オープンSCを地域別にみると最も多い関東・甲信越が13、次が近畿の7、次が九州・沖縄の6。24年に36が加わったことで23年末に3092あった総数が3128に増加したものの、閉店等で38減少したため24年末の総数は3090となり、2019年以降6年連続の減少となった。

24年に36SCがオープン、店舗面積1万平米未満が約7割

2025年の開業予定SCは統計開始以降最小となった(配布資料より)

24年にオープンしたSCの特徴は、地域住民の生活を支える食やコミュニティ機能を充実させた小型SCの開発が目立ったことだ。その1つといえる名古屋市瑞穂区の「iiNEマルシェ」は「住・商・憩」のある多世代共生の街としてオープンした。生鮮食品を中心に医療品・日用雑貨などの物販を扱うショッピング施設に加え、医療・介護・子育て支援施設からなる複合型。

2つ目となる特徴はオフィス、ホテル、住宅などの複合開発に、カルチャーやスポーツを融合させたSC開発。その1つとなる「Shibuya Sakura Stage」は商業施設やオフィス、住宅に加え、ワーカーのウェルビーイングを支える企業支援施設や最先端のトレンドやカルチャーを創出・発信するテナントを揃えている。また、ジャパネットグループが開発した「長崎スタジアムシティ」はサッカースタジアムを中心にアリーナ・ホテル・商業施設・オフィスなどからなっている。

SCの業種別テナント数構成比にも変化がみられる。衣料品はコロナ禍前の19年に18.0%あった構成比がじり貧を辿り24年には10.3%に縮小した。逆に飲食は19年の19.0%が24年には27.5%に拡大。食物販は11.9%から13.2%に、サービスは22.0%から23.7%にシェアを上げている。このことからもモノ消費からコト消費へシフトしていることが窺える。

25年に新規開業を予定するのは16施設(24年12月20日時点のSC等商業施設)で、統計開始以来最小となる。人口減少、市場の伸び悩みでSCの飽和化が進んでいることに加え、資材価格、建築コストの高騰により開発を先延ばしにするケースなどが背景にある。新規開業予定16施設の中には6万平米台の「ニュウマン高輪」(一部先行開業、店舗面積約6万平米)、「三井ショッピングパークららぽーと安城」(同約6万300平米)、「イオンモール須坂」(同約6万3000平米)のSCも含まれている。


ラブリーパートナー エルパの若者の居場所づくり

今回の定例記者懇談会には協同組合福井ショッピングモール専務理事の佐々木国雄氏とオリナス代表取締役の加藤瑞穂氏がゲストとして登壇し、ラブリーパートナー エルパのフードコートを拠点にして始めた子供や若者の居場所づくりの取り組みを紹介した。まず佐々木専務理事はショッピングセンター「ラブリーパートナーエルパ」の概要と地域との関わりについて以下のように語った。

地域のコミュニティの場を提供

福井ショッピングモール佐々木国雄専務理事

協同組合ショッピングモール「ラブリーパートナー エルパ」(施設全体の名称は「フェアモール福井」、店舗面積はアピタ、エルパ合わせて5万9500㎡)は地元商業者が土地等を手当てし、ユニー(アピタ福井大和田店)を誘致した、いわゆる地元主導による福井方式で開発されたSCです。私どもエルパがビジョンに掲げているのが「全世代が『これから』を楽しむ福井へ」。通常ショッピングセンターであれば顧客を絞り込みターゲットを設定しますが、エルパは地方都市にあって郊外に立地するSCなのでコミュニティ施設の機能・役割を担い、顧客を絞り込まず全世代を対象にしています。

営業時間は開店が10時、閉店が20時。定休日は将来の人手不足を考慮して3回に亘って増やし、現在の定休日数は14日。施設内には保育園と託児所を設け、館内で働いていただく従業員には保育料・昼食代・夕食代・おやつを無償としています。

他に特徴的な取り組みとなるのが「テンパ部」と「Your Lpa(ゆわえるぱ)」です。テンパ部はエルパで何かしたい、自己表現したいといった一般のお客様が活動したりイベントをしたりする場所です。もう一方のゆわえるぱは、館内のイベント施設を月に1回無償で提供し、地域の個人、団体の方々が活動する場として自由に使っていただきます。

本年(24年)7月にエルパ2階にフードコートを新設しました。フードコートで課題となるのは平日の夕方頃の利用者が少なくなり空席ができてしまうこと。私どもが掲げているビジョンを達成するためにはもっと関係する人を増やす必要がある。それには若者が集まる場所を探している団体や個人とコラボレーションすることが解決の糸口になると思い模索していたところ、「こみかる ユース福井」という団体に出会うことができました。それからの取り組みはこみかる ユース福井代表の加藤氏がお話します。


そしてこみかる ユース福井代表の加藤氏がエルパのフードコートでの若者の居場所づくりの取り組みを以下のように語った。

フードコートが若者が集まってくる場に

オリナス代表取締役の加藤瑞穂氏

私は暮らしの看護をしている中で、今の若者たちは学力があっても学校と塾と自宅を行き来しているだけで、なかなか社会、大人と出会うことが少ないのをさみしく感じていました。そんなときに元々ご縁があった佐々木さんから「フードコートに若者の居場所づくりをしてみないか」ともちかけられたのがきっかけとなり、半年かけて会議を重ね居場所づくりをしてきました。

超高齢化社会に突入して労働人口も子供の数も減っていく中で、持続可能なコミュニティを形成していく上で大切なことは、コミュニティをあちこちにつくり、コミュニティ同士の力を循環させ連携しあっていくことです。

「若者の居場所づくりのために力を出せるよ」という大人たちがメンバーとして20人が集まります。メンバーはずっとここで時間を費やすのでなく、メンバーそれぞれがもっている得意なことを集結して若者たちと関わり合うのがこみかる ユース福井の取り組み方です。

メンバーは看護師、県庁の職員や県立大学看護科教員、不登校経験者、20代に起業した人など様々。しかも、あまりつくりこまないコミュニティづくりを大切にしています。ですからここで何をしていく、何を目指すといった目標を掲げず、メンバー皆で話し合い、最善を目指すという姿勢です。

フードコートには色々な若者が集まってきます。過ごし方は自由で、勉強する子もいればたこ焼きを食べていたり、写真を撮りあったりと様々。自分はこんなことにチャレンジしたいという若者もおり、ここで小さなアクションがいくつも起き、エルパが若者たちにとって人生の思い出になっていると感じています。活動の場であるフードコートをパーテーションで仕切らなかったのが正解で、フードコートの開放的なスペースが若者を集まって来きやすくさせていると感じています。


25年からSC取扱い新基準25年1月から適用、41がSCへ

SCの基準が今年から変更する(配布資料より)

日本ショッピングセンター協会はSCの取り扱い基準を改定し25年1月1日から新基準を適用した。改定した背景には、ECの台頭やコロナ禍による生活様式の変化に伴い、SCを取り巻く環境が変化したことがある。また、SCにはリアル店舗でしか味わえない体験価値が求められるため、サービステナントの誘致や共用空間の環境演出・拡充に力を入れるSCが増加。物販テナントが退店した後に飲食テナントやサービステナント、公共施設、オフィスなどが入居し、物販面積1500平米を満たさない店舗が散見されるようになった。

また、新規開業する商業施設はテナント1店舗あたりの面積拡大やテナント数10店舗未満であるなど、1万平米未満の小型の商業施設を中心に現行のSC取り扱い基準に満たない施設が増加傾向にあること。こうした状況から改定となった。SC取り扱い基準の現行と新基準の違いは表にある通り。なお、現存する1000平米以上の大型小売店のうち、新基準を適用すると新たに41施設(24年12月24日時点)がSCとなる。


4月下旬に受賞SC発表が予定されている「第10回日本SC大賞」「第8回地域貢献大賞」は全国7支部による支部ノミネートSCの選出に続いて、選考委員会による選考が行われ最終ノミネートSCが選出された。

第10回日本SC大賞で最終ノミネートに選出されたのは16施設で、「日本SC大賞(金・銀・銅)」がイオンレイクタウン(関東・甲信越地区)、軽井沢・プリンスショッピングプラザ(同)、三井ショッピンパーク ららぽーと TOKYO-BAY(同)、阪急西宮ガーデンズ(近畿地区)、ルクア大阪(同)、イオンモール広島府中(中国・四国地区)。「ニューフェイス賞」がCOCONO SUSUKINO(北海道地区)、麻布台ヒルズ(関東・甲信地区)、三井ショッピングパーク ららぽーと門真・三井アウトレットパーク 大阪門真(近畿地区)。

「リノベーション賞」がELM(東北地区)、フォレストサイドビル(関東・甲信越地区)、アミュプラザ長崎(九州・沖縄地区)。「ES賞」がたまプラーザ テラス(関東・甲信越地区)とラブリーパートナー エルパ(近畿地区)。「特別賞」がHOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE(北海道地区)と星が丘テラス(中部地区)。

第8回地域貢献大賞で最終ノミネートに選出されたのはmaruyama class(北海道地区)、エスパル仙台(東北地区)、流山おおたかの森S・C(関東・甲信越地区)、マーサ21 ショッピングセンター(中部地区)、ピオレ姫路(近畿地区)、さんすて福山(中国・四国地区)、イオンモール宮崎(九州・沖縄地区)の7施設。

パシフィコ横浜を会場にして1月22日~24日に開かれる「SCビジネスフェア2025」には149社(ディベロッパー38社、テナント32社、DX・サポート74社、発見マルシェ5社)が集結する。同ビジネスフェアで注目のプログラムは22日のセミナーで、基調講演で東日本旅客鉄道社長の喜勢陽一氏が「JR東日本のまちづくり~TAKANAWA GATEWAY CITYを中心に~」をテーマに講演。また、セコマ会長の丸谷智保氏が「地域と共に歩む経営~“地域のこし”から“地域おこし”へ」のテーマで特別講演する。

24日には「第30回記念SC接客ロールプレイングコンテスト」の全国大会が開かれる。全国大会には全国で総勢835名が参加し、選抜された支部代表28名が出場してSC接客日本一が決定する。

(塚井明彦)