2025年01月15日

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カカオ高騰でも熱気衰えず 2025年バレンタイン商戦

消費マインドは低調な傾向にあるが、チョコレートは「別腹」ならぬ「別財布」となる人が多いようだ

2025年のバレンタイン商戦が始まった。昨今は物価の上昇が続き、追い打ちをかけるようにチョコレートの価格も高騰。厳しい逆風吹く――と思いきや、百貨店大手各社は売上高の「前年超え」を目標に掲げる。生活者は消費にメリハリを付けるが、バレンタインは「ハレ消費」に当たるという見立てだ。各社はイートインや限定商品の充実で特別感を演出し、購買を促進する。

バレンタインに対する購買意欲が衰えていないのは、データに表れている。そごう・西武の調査では、バレンタインデーにかける予算は、71%が「変わらない」と回答。松屋のアンケート調査でも、予算は「昨年と同じ」が69.2%、「増やす、増えそう」18.7%という結果になった。

ただし、カカオ豆の不作をきっかけとしたチョコレートの価格高騰の影響は避けられない。これに対して各メーカーは、商品内容の見直しや値上げを実施。百貨店各社もチョコレート以外の焼き菓子、酒、料理などを手厚く用意して対策を取る。

人気パティシエの実演でライブ感、特別な体験を演出

高島屋は、人気パティシエがデザートを提供する「アムール デセール サロン」を展開する(写真は「エンメ」の延命寺美也パティシエ)

高島屋は今回の「アムール・デュ・ショコラ」を、関西店舗は17日、関東店舗は22日から順次スタートする。昨年は売上高が前年比7%と伸びたことを踏まえ、今年は5%増を目指す。「商品単価が上がっているため、平均購入数は下がると予測する」(担当者)。

目玉となるのが、イートインの「アムール デセール サロン」だ。「エンメ」の延命寺美也氏、「セイスト」の瀧島誠士氏、「プリズム ラボ」の柴田勇作氏など、著名なパティシエがカウンター越しにデザートを仕上げて提供。ライブ感や特別感のある体験ができる。日本橋店と新宿店で期間限定で開催し、日程によってメニューや来店するパティシエは異なる。

チョコレートの中でも特に輸入ブランドの価格が上がっているため、人気ショコラティエのチョコレートを詰め合わせた毎年恒例の「スペシャルコラボレーションBOX 」は、日本人シェフによるものをセレクト。6個入りで3564円となる。

松屋のイートイン・実演はフードメニューも充実。甘いものが苦手な人でも楽しめる

松屋の「GINZA バレンタインワールド」は31日にスタート。売上高はECサイトを含めて前年比2割増を目標に掲げる。そのフックとするのがイートイン・実演販売で、展開ブランドは昨年から5増やした22となる。人気パティシエが目の前でデザートを仕上げるコーナーに加え、カカオ料理として「メメントモリ」のカレー、「ノエルベルデ」のミートパイ、「アマゾン カカオ」のビビン麺(韓国発祥の冷麺)などが登場する。

チョコレートとお酒の組み合わせが楽しめる「チョコ×お酒のマリアージュ BAR」、コーヒーとのペアリングが堪能できる「ショコラ サロン」も昨年に続き展開。担当者は「イートインは(売上げの)効率が良いわけではないが、集客力が高い。他社との差別化という狙いも含め、積極的にやっていきたい」と語る。

最近SNSで注目が集まっている、「ドバイチョコ」も取り扱う。ドバイチョコはアラブ首長国連邦のドバイが発祥とされ、チョコレートの中に乾麺とピスタチオペーストが入っているもの。「ディヴァン」の「ピスタチオドバイチョコレート」(80g、2916円)を販売し、トレンドに敏感な層にもアプローチする。

4000~5000円台の高価格帯も充実

西武池袋本店では、1階と7階で展開する

そごう・西武の「チョコレートパラダイス2025」は、主要店舗で1月下旬にスタートする。西武池袋本店は、1階化粧品売場のイベントスペースで8日から、7階の菓子売場で20日から展開する。売上げ目標は、大規模改装による工事で前年と比較できない池袋本店を除いて6%増に定めた。

昨年のバレンタインでは4000円台、5000円以上のいわゆる「高価格帯」のチョコレートが1割以上売上げを伸ばしたことから、「上質なチョコレートを約3割増やした」と担当者は話す。中には社員が直接買い付けに行った、日本初登場やそごう・西武初登場のブランドもあり、他社との差異化も図る。

カカオ豆の高騰を受け、クッキーやケーキ、サブレなどのスイーツも拡充した。「ブノワ・ニアン」のクッキー、「モンサンクレール」のガトーショコラ、「クラマエ・カヌレ」のカヌレなどは実演販売も行う。

ECサイト「e.デパート」の販売は7日からだが、昨年12月2日に「お試しバレンタイン」として一部ブランドの先行販売を始めた。12月末までのチョコレートの売上げは、前年比で2倍を記録。景気の良いスタートとなり、バレンタインへの熱い期待が感じられる。

(都築いづみ)