コーセー、タイのウェルネスブランドを買収 グローバルサウス開拓に本腰
コーセーは10日、「パンピューリ」の名称で化粧品やフレグランスなどの販売、スパサービスなどを手掛けるタイのピューリ社を買収すると発表した。同日に株式譲渡契約を結び、30日を目途に株式の約8割を120~130億円で取得する。残る約2割も3~5年で取得する方針だ。コーセーは中期戦略でASEANやインドなどグローバルサウスの市場開拓に注力し、その一環として「地域に根付いたブランドの新たな獲得」を掲げており、ピューリ社の連結子会社化は第1弾と位置付けた。コーセーによる海外企業の買収は14年の米タルト社以来で、約10年ぶりとなる。
パンピューリは2003年に誕生。ピューリ社のCEO、Vorravit Siripark氏が立ち上げた。「真のホリスティックウェルネスとは、内面の健康と外面の美しさの調和である」という信念の下、可能な限り持続可能な天然代替品を求め、安全でクリーンな商品開発を追求する。商品は主にフレグランス、バス&ボディ、スキンケア、ホームフレグランスからなり、特に香りに定評がある。
店舗はタイの高級ショッピングモール、百貨店、ホテル、リゾート、トラベルリテールなどに擁し、今年8月には香港に進出。代理店やインターネット通販サイトを通じて日本や中国、欧州でも商品を販売する。タイの店舗やラグジュアリーホテルではスパサービスも提供している。いわゆる「ホリスティックウェルネスブランド」(=総合的な健康の維持を目指すブランド)として成長を続け、売上高は22年12月期が313百万タイバーツ(約14億円、1タイバーツを4.5円として換算)、23年12月期が580百万タイバーツ(約26億1000万円)で、24年12月期は1100百万タイバーツ(約49億5000万円)を見込む。
コーセーの小林一俊社長は10日に開いたグローバル戦略発表会で、ピューリ社の買収について「グローバル市場の攻め方を(過去の)自前主義から地域最適化へと切り替え、地域に根差したブランドを獲得していく。これまでと同様に中華圏の市場は重要だが、次なる成長領域としてインド、ASEANを含むグローバルサウスに照準を合わせる。パンピューリは地域に根差したブランドの獲得の第1弾」と狙いを説明した。
続けて「タイにはおもてなし、ホスピタリティの文化が根付いており、日本との共通点がある。さらに美容大国でもあり、その歴史は長く日本との親和性も高い。ものづくりへの深いこだわり、ブランドのコンセプトやプロモーションなどを全て創業者が決める、化粧品を柱としつつウェルビーイング領域への拡大を目指す――など、当社との共通点もある。お互いに学び合い、高め合いたい」と期待を寄せた。
ピューリ社のSiripark氏は「コーセーのファミリーになって、世界に対してラグジュアリーな香りを提供する機会をもらえた」と笑顔を見せた。今後5年間でアジア、日本にパンピューリを広めていくという。パンピューリはタイの売上げが7割を占めるが、小林社長は「欧米やインド、アフリカの市場を開拓できる」とみる。
日本での販売については「目下、当社の流通チャネル以外で売られているが、それを取り込むのではなく、ブランドが評価される国や人で販売していくのが優先」(小林社長)とした。田中健一経営企画部経営戦略室長は「商品をただ販売するだけでなく、スパサービスなどで体験価値を提供したい。これまでの当社とは違う日本展開を考えている」と構想を示した。
コーセーは議決権ベースで79.89%に当たる106万2702株をKumano Limitedらから取得。30日付でピューリ社を連結子会社とする。