2024年12月05日

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リニューアルやイベント効果などで、二子玉川ライズS.C. 過去最高売上げ422億

4施設合同による 、2024年秋の「二子玉川ハロウィンパーティー」。約20万人の来場者で賑わった

東急東横線・大井町線の二子玉川駅直結の商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」(以下、二子玉川ライズ S.C.)の2023年度(23年4月~24年3月)売上げが422億円を超え、18年度(18年4月~19年3月)に記録した過去最高売上げの415億円を更新した。

前年比107.2%、来館者数2625万人(同103.2%)という実績に対し、東急モールズデベロップメント第二事業本部二子玉川ライズグループ長兼二子玉川ライズ管理部部長の田中利行氏は「コロナ禍中は伸び悩んでいたので、18年度の最高売上げを越えるのは容易ではないと思っていた。23年度に更新できたことは、二子玉川ライズ S.C.に関わる我々にとって大きな自信につながった」と語る。

東急グループの大規模複合施設「二子玉川ライズ」

足元商圏の顧客に支持されてコロナ化を乗り切った

二子玉川ライズS.C.は「水と緑と光」の豊かな自然環境と都市とが調和した街「二子玉川ライズ」の中核施設だ。東日本大震災が起きた2011年3月に開業(第1期)。15年4月のグランドオープンでテラスマーケットが加わって、商業ゾーンの全体店舗面積は約5万5000㎡に拡大した。さらにホテル、シネコン、ルーフガーデンなども加わり、時間消費型の複合施設となって、右肩上がりの成長を続けてきた(第2期)。

ところが19年度後半から、その勢いにブレーキがかかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響だ(第4期)。売上げも入館者数も下降線をたどる。だが、足元商圏の顧客に支えられ、都心部の商業施設ほどの落ち込みではなく、コロナ禍の影響を最小限に食い止めて乗り切った。

そしてコロナが明けると勢いを盛り返し、リニューアルで投入した新ブランドだけでなく、既存ブランドも売上げを伸ばし、タウンフロントを中心に好調が続いている。次世代に対応したS.C.として打ち出した「コミュニティ・プラットフォーム」も全面始動に向けて動き出している。

田中グループ長は「二子玉川ライズ S.C.単体だった第1期では、足元商圏からの集客に注力し、ホテルやシネコンなどが加わった第2期からは、いかに広域から集客するかに腐心してきた。コロナ禍を経験して、二子玉ライズ S.C.を支えてくれているのは5キロ、10キロの足元商圏に住んでいるお客様であることを再認識した」と言う。

田中利行グループ長

二子玉川ライズ S.C.は、二子玉川ライズの商業施設の中核を担うタウンフロント、リバーフロント、ステーションマーケット、テラスマーケットからなる。コロナが明けてからは、外出需要の高まりでこれらの商業施設に入るテナントは押しなべて順調だ。

リモートワークからオフィス回帰が進んだことや、冠婚葬祭などオケージョンの回復に伴ってアパレルの販売が好調になり、スポーツ、アウトドアブランドの売上げを牽引している。

また、飲食店の稼働率やアルコール需要の回復によって客単価を押し上げ、タウンフロントやテラスマーケットにある飲食店が好調。サービスではシネコン「109シネマズ二子玉川」や体験型店舗&デザイン雑貨「PLAY!PARK ERIC CARLE」など、そしてリバーフロントの「エイチ・アイ・エス」も旅行需要の高まりで売上げを高伸している。

「開業10周年を迎えた21~22年は、コロナの真只中で先が見通せない状況にあった。テナントスタッフさんにはクオリティーを落とさない接客・サービスをとり続けていただき、テナントを守りながら、いかにして施設運営を成り立たせていくかに注力した2年間だった」(田中グループ長)。

リニューアル効果で集客力、売上げともにアップ

過去最高の売上げに押し上げたのは、コロナが明けて広域からも集客ができ、二子玉川ライズS.C.全体の動きが良くなったこと。そこに段階的に進めてきたリニューアル効果やイベントの集客力が増したことが決め手となった。

「タウンフロントを中心にリニューアルを手掛けてきた。2018年にはタウンフロントにフルーツギャザリングや中川政七商店などのショップを加えて1~3階を活性化し、19年秋には7階のレストランフロアを半年間閉鎖してフタコテーブルとして一新。大きな節目となった開業10周年の21年には春と秋にタウンフロント1~2階などを中心に新ショップを導入した」(東急モールズデベロップメント第二事業本部二子玉川ライズグループ副グループ長兼二子玉川ライズ営業部部長小板真博氏)。

小板真博副グループ長

タウンフロント8階にオープンしたPLAY!PARK ERIC CARLEは、開業10周年リニューアルで誘致された。「はらぺこあおむし」の作者エリック・カールの絵本の世界観がテーマの、遊んで学べる体験型施設である。

新店舗の導入や既存店舗のリニューアルによって、タウンフロントの4階なども一新された。例えば、22年10月にフロア初となるニコアンドコーヒーを併設したアパレル・雑貨ブランド「ニコアンド/ニコアンドコーヒー」や、美容と健康をテーマとしたコスメセレクトショップ「アインズ&トルペ」が新たにオープン。ソックス・インナーの「チュチュアンナ」が内装も新たにし、同4階の集客力が増し、フロア全体の売上高が前比で123.7%をマークした。

このように、ここ2~3年間にオープンした店舗が押しなべて売上げを伸ばしている状況にある。21年11月登場のPLAY! PARK ERICK CARLEは前年比(23年11月~24年3月)125.6%。

22年3月オープンでは、テラスマーケット1階のアウトドアファッション「アークテリクス」が同189.4%、タウンフロント3階のヘッドウェア「フォーティーセブン」が同142.1%。10月にタウンフロント4階にオープンしたコスメ・ドラッグ「アインズ&トルペ」が同142.5%といった具合。

新規ショップの周辺店やイベントの売上げも好転

リニューアルによる新規ショップだけでなく、その周りにある既存ショップも好転してフロア全体で売上げがアップしているという。

リボンストリートに面して店舗が並ぶテラスマーケットのアンカーである「二子玉川 蔦屋家電」は相変わらず集客力があり、21年に導入したシェアラウンジの利用率も良いようだ。テラスマーケットの飲食店も堅調で、ラーメンの「博多一風堂」はいつも行列ができている。

ガレリア、中央広場、リボンストリート、二子玉川ライズ スタジオ&ホール、原っぱ広場を会場にしたイベントも好転した。開催数や規模がコロナ禍前の水準に戻り、23年度は約180回もの多彩なイベントが開催された。回を重ねるに連れ人気が増しているイベントがいくつもある。2015年からゴールデンウィークに開いているファミリーイベント「太陽と星空のサーカス」をはじめ、今年9回目の「二子玉川ライズ薪能」や周辺施設との合同イベント「二子玉川ハロウィンパーティー」、イルミネーション点灯式があるクリスマスイベントなどがそうである。

今年のGWに開いた太陽と星空のサーカスは、前半と後半でコンテンツを変え、期間中に2度動員をかける策を講じた。前半の「だいちの祭」では実際に乗り込める船の上で魚釣りの体験を楽しめる「フィッシングパーク」が登場。

また、大人も子供も一緒に楽しめるワークショップ「あそぶ教室」や、選りすぐりの店舗が出店する「ワンダーバザール」、本格料理やドリンクが楽しめる「ヤムヤムマーケット」などもあり、充実した内容となった。後半の「そらの宴」では、前半と異なるワークショップで、バザールなども出店店舗を入れ替えた。

幽玄の世界を楽しめる「二子玉川ライズ薪能」

二子玉川ライズ薪能は、開放的な屋上庭園で篝火にゆらめく幽玄美を堪能できるとあって人気が高い。中高年層を中心に根強いファンがついている。また、10月26~27日の二子玉川ハロウィンパーティー2024は、二子玉川ライズ・ドッグウッドプラザ、玉川髙島屋S・C、キュープラザ二子玉川が加わり4施設合同で開催し、約20万人の来場があった。

「二子玉川ライズ クリスマス2024」では、コロナ禍で中止にされていたクリスマスツリー・イルミネーション点灯式が5年ぶりに復活する。高さ約10mのクリスマスツリーは、クリスマスローズをモチーフとした花の装飾と、白とゴールドを基調としたLED約2万5000球で構成される。

コミュニティ・プラットフォームの実現に向けて

イベントの中には、二子玉川ライズ S.C.が次の10年を見据えて標榜した「コミュニティ・プラットフォーム」を具現化した取り組みが動き出している。

ラグビーチーム「リコーブラックラムズ東京」との取り組みはその一つ。1953年の創設以来、世田谷区を活動拠点としてラグビーの普及と発展に寄与してきた国内屈指の強豪で、「Be a Movement.」をチームビジョンに掲げ、「ラグビーを通じ、社会、未来に活力と感動を与えるチームであること」がミッション。世田谷区のイベントへの参加や、選手による小学校でのタグラグビー指導など、地域社会への貢献を続けている。

ラグビーチーム「リコーブラックラムズ東京」のイベント

この活動に共感した二子玉川ライズは、21年にオフィシャルパートナー契約を結び、街を挙げて応援を続けており、リコーブラックラムズ東京は二子玉川ライズでの主催イベントや施設のイベントに参加している。

「選手たちが出陣式、報告会、夏の交流イベント、ファンサービスをしたり、各イベントを盛り上げたりするとともに、街のゴミ拾いなどにも加わってくれる」(小板副グループ長)。

「こうした活動に触れた参加者やサポーターにとっては、選手たちとの距離感が近くなり、愛着をもって応援するだけでなく、集まった者同士が仲間になったりする」(田中グループ長)。

ちなみにリコーブラックラムズ東京の選手が着用している公式戦ジャージの右肩には、街の総称である二子玉川ライズのロゴが入っている。

二子玉川ライズには集客がかかるイベントが数多いが、「イベントに参加して楽しまれても、終了すると何もなかったかのように離散し、参加された人の関わりは継続しない。こうした既存イベントについてもリコーブラックラムズ東京との取り組みにあるように、ここライズが愛着ある場となり、交流したり仲良くなれたり、持続性のあるコミュニティが形成できるような仕組みをつくり上げていく」(田中グループ長)。

コミュニティサークルのような役割を持てば、イベントなどへの参加やライズを含めた街での活動がしやすくなったり、仲間づくりができたりと、顧客にとってもメリットがあるだけでなく、二子玉川ライズ S.C.にとっても顧客情報を得られるようなスキームだ。

21年に標榜したコミュニティ・プラットフォームについて、田中グループ長は「私どもの二子玉川ライズは、開業当時から居心地が良い時間消費型施設として、自分が一番自分らしく居られるサードプレース的存在になることを目指してきた。コミュニティ・プラットフォームではこれをさらに昇華させ、ハード面で場を整えるだけでなく、ソフト面でも人と人の接点となれる仕組みをつくり上げてコミュニティを形成し、二子玉川ライズを愛着のある場にしていく」と言う。

コミュニティ・プラットフォームの実現に向けて、コロナ禍でもクオリティー、マインドなどを醸成して顧客の期待に応えられる価値を提供してきた。すでにその土台ができたことから、これからは愛着のある場となる新しい仕組みが立ち上がっていく。田中グループ長は「2年後にはコミュニティ・プラットフォーム事業を本格稼働させて開業15周年を迎えたい」としている。

(塚井明彦)