<ストレポ11月号掲載>百貨店催事の本領
全国百貨店の売上高は今年に入り、コロナ禍前の19年度の実績を上回っている。引き続き高付加価値消費やインバウンド需要がけん引しているものの、百貨店の強みであり、集客装置である催事場の賑わい回復も寄与してきた。今号では首都圏百貨店を対象に、今期(24年度上期~10月初旬)に開催した催事場の中で、復活あるいは想定を上回る好反応だった企画、新規催事などの好事例を百貨店ごとにクローズアップした。
※この記事は、月刊ストアーズレポート2024年11月号掲載の特集「百貨店催事の本領」(全19ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他11月号の内容はこちらからご確認いただけます)
■高島屋横浜店「MINIATURE LIFE(ミニチュアライフ)展2~田中達也 見立ての世界~」
髙島屋横浜店が開店65周年記念の文化催事として開催したのが「MINIATURE LIFE(ミニチュアライフ)展2~田中達也 見立ての世界~」(9月11~29日、8階ギャラリー、有料)である。ミニチュア作品約170点を展示した。
田中達也氏は、日常にあるものを別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を2011年からインスタグラムで毎日発表し続けているミニチュア写真家・見立て作家。17年に髙島屋新宿店から展覧会が始まり、以降、巡回した。髙島屋横浜店は翌年に「ミニチュアライフ展1」を開催している。
今回の展覧会は「ミニチュアライフ展2」だ。田中達也氏の「見立ての世界」をテーマに、同店の会場限定の新作を含む写真と立体作品の約170点を展示。「ネイチャー」、「ワーカーズ」、「スポーツ」、「ワールドトラベル」、「アドベンチャー」、「ハヴ ファン(楽しんで)」、「ビークル(車両)」、「ファミリー」という8つのゾーンに分けて展示した。すべての作品が撮影可能で、鑑賞しながらミニチュア写真家の気分を味わうことができる。
同店で開催した1回目は期間中、5万人超が来場したことから、今回は会場の面積を広げ、行列への対応も強化した。結果は、想定を上回る約6万人の来場者で賑わった。期間中、8階では「北陸展」や「ベビー・こども服ファッション祭」を併催していたこともあり、シナジー効果も生まれた。
■東武百貨店池袋店「放映50周年記念特別企画『アルプスの少女ハイジ展』」
放映50周年記念特別企画「アルプスの少女ハイジ展」(3月22日~4月9日)は、東武百貨店池袋店がターゲットにしている子育て世代やファミリー層を集客し、想定以上に賑わった。スイス・アルプスの魅力を伝える動画やパネル、原作者であるスイスの女流作家ヨハンナ・シュピリ氏の写真や原作本の展示、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」の制作資料、原画やグッズなど約500種類を集積した有料(未就学児・無料)の展示場と、50周年記念や会場限定のグッズなどを販売するポップアップショップ(入場無料)で構成した。合計約200坪。
展示や物販に加え、様々な体験型イベントを展開したのは言うまでもない。8階催事場の好立地には、名場面を再現したブランコとゼーゼマン家のフォトスポットを設け、ハイジの衣裳(子供と大人向け)も用意した。催事場と隣接する屋上「スカイデッキ広場」には1日限定(3月30日)で、ヤギとの触れ合いコーナーを設けた。東武動物公園の協力を得て実現した企画で、えさやり体験ができるようにした。このほか、アニメのハイジ役の声優である杉山佳寿子氏のトークショー(3月31日)、ハイジと誕生50周年を迎えたモンチッチの着ぐるみ撮影会(3月23日)なども開催した。
こうした参加型イベントを幾つも展開したが、中でも「思っていた以上に好評だった」(担当者)のが、告知用のリーフレットを活用した「ぬり絵シート」である。リーフレットは会場にも置き、ぬり絵に夢中になる親子の姿が目立った。一人ひとり思い思いの色が添えられたぬり絵は、1197枚も集まり、展示場を囲った壁一面を彩った。
■大丸東京店「JRA日本中央競馬会70周年コラボ記念フェア」
大丸東京店と「JRA日本中央競馬会」とのコラボレーション記念フェア(5月22日~6月4日)は、1階イベントスペースと12階エスカレーターホール前で、JRA設立70周年記念展示を行った。加えて地下1階食品フロア「ほっぺタウン」では、期間中の弁当販売個数の1位と2位を予想する「ほっぺタウンお弁当ダービー」を開催した。JRAと百貨店との異色のコラボ企画だ。
1階イベントスペースは、1頭の競走馬と騎手、調教師、厩務員、牧場スタッフなどとの強い絆の物語を、24年のJRA年間プロモーションキャラクターを務める佐々木蔵之介氏のナレーションで紹介する「人と馬の物語」、300年以上にのぼる血の継承の解説、オリジナルグッズの販売コーナーなどで構成。12階では、JRAの70年の歩みと著名な騎手が使用した馬具やヘルメットなど貴重な品々を展示した。
ただ、単なる「JRA70周年記念の展示とグッズ販売企画」で終わらないように、同店の強みである「ほっぺタウン」を活用したのがミソだ。開催期間中に実施される競馬の祭典「日本ダービー」にあやかって、「ほっぺタウンお弁当ダービー」を開催。大丸松坂屋カードまたはアプリを利用して弁当を500円以上(税込)購入した顧客に投票用紙(レシートクーポン)を渡し、エントリーした18種類の弁当の中から期間中の販売個数が1位と2位になりそうな弁当の「枠番」を2つ選び投票用紙に記入、地下1階に設置した投票箱に投函してもらう。1位と2位を当てると、ほっぺタウンで使える5000円分の買い物券を進呈する(抽選10名)企画。
18種類の弁当には、馬名や騎手(販売売場)、馬体重(弁当の総重量)、厩舎(本社所在地)、馬年齢(創業年から本年まで)など競馬新聞風のチラシを発行。さらにエントリーした弁当売場では限定の「オリジナルお弁当掛け紙」を付けて販売し、対象の弁当購入者には「オリジナルステッカー」を進呈した。
月刊ストアーズレポートを購読される方は、こちらからご注文ください。