高島屋横浜店が紳士の自主編集売場を拡大したワケ
高島屋横浜店は10月30日、6階にあるメンズの自主編集売場「CS ケーススタディ」をリニューアルオープンした。売場面積は約360㎡で、以前より約2.5倍拡大している。百貨店業界において自主編集売場は数を減らしつつあり、紳士服というカテゴリーもダウントレンドにある。そうした中で、なぜ拡大リニューアルしたのか。そのワケを聞いてみた。
高感度な次世代層の流入に対応
CS ケーススタディをリニューアルした理由の1つに、客層の変化がある。同店が構える横浜駅周辺は再開発が進み、新たな商業施設や観光施設が次々に開業。若年層を含めた来街者が増えている。さらに近年は、横浜エリアに転居する人も増加。横浜市の発表によると、2023年の横浜市の転入超過数は9731人。全国の市町村別にみると東京都特別区部(5万3899人)、大阪府大阪市(1万2966人)に次ぐ3位となる。神奈川県南西部の湘南エリアも同店の商圏だが、人口の流入が目立っている。
これによって、同店にも若い客の姿が増えている。新客を顧客化する好機だが、「(改装前に)今のフロアがそのようなお客様が楽しめる場になっているかと考えた時、不十分だと判断した。しかしチャンスでもあるため、改装へと踏み切った」と横浜店販売第3部紳士服・サロンルシックセレクト・CSケーススタディのショップマネジャー兼ストアバイヤーの浦田圭吾課長は述べる。
改装の対象をあえてCS ケーススタディにしたのは、同売場は高島屋の社員が買い付けから販売まで全て行うセレクトショップだからだ。「アパレルのセレクトショップは自社製品の割合が高い店も多い。対して、CS ケーススタディは日本初となる海外ブランド、稀少性の高いドメスティックブランドなどが一堂に会している」(浦田氏)。同店ならではの強みであり、高感度な層の集客に効果を発揮すると考えた。同売場への反応は、他の紳士服の売場運営にも生かしていくという。
自主編集売場は運営に高いコストがかかるが、個性や感度を出せる、顧客のニーズを柔軟に反映しやすいといったメリットがある。紳士服を取り巻く環境は決して明るくはないものの、高島屋横浜店ならではの特長を打ち出し、紳士服カテゴリーの活性化を目指していく。
インポートや稀少性の高いブランドを集積
CSケーススタディでは、季節によって入れ替わりがあるが、およそ50~60のブランドを扱う。ターゲット層は、「イノベーター理論」でいうところの、市場の約35%を占める「アーリーマジョリティー」(前期追随者)に定めた。売上げ目標は、年間で前売場の約3倍。
売場は注目のインポートブランドや日本初登場のブランドが揃う「トレンドゾーン」と、“新定番”を叶える「ドメスティックゾーン」の2つのゾーンで構成する。トレンドゾーンは「ジル サンダープラス」や「アワーレガシー」など全6ブランドが高島屋で初登場。「ストーンアイランド」と「メゾンキツネ」は以前から取り扱っていたが、売上げが好調だったためインショップ化した。
地元のクリエーターに焦点を当て、客とつなぐ出会いの場も創出した。神奈川県出身のデザイナー・尾花氏が手掛けるファッションブランド「N.ハリウッド LIMITED」が神奈川県で初出店し、10月30日~11月12日には鎌倉に本社を構える白Tシャツブランド「armi」と、糀(こうじ)をテーマにしたライフスタイルショップの「sawvi」がコラボしたポップアップ「衣と食の収穫祭」を展開する。
そのほか目玉としては、「LIVRER YOKOHAMA(リブレ ヨコハマ)」の洗剤量り売りコーナーがある。リブレ ヨコハマは横浜市にあるクリーニング店から始まったブランドで、国内外の著名アーティストのライブ衣装のクリーニングを担当した経験をもとに商品を開発した。洗剤は様々な商業施設で取り扱っているが、百貨店での量り売りコーナーは同店が初。ファッションと洗濯の関連が強いこと、繰り返し購入で定期的な来店が見込めることから導入に至った。
初の野外イベントを開催、顧客接点の拡大へ
11月1~2日にはCSケーススタディのリニューアルオープンを記念して、野外キャンプイベント「ハマと杜 by YOKOHAMA TAKASHIMAYA」を開催した。場所は厚木市にある「あつぎ飯山キャンプ場」で、スポーツ・アウトドアブランドが出店。商品体験やワークショップなどを催した。
出店ブランドは「Columbia」「VENEX」「POLeR」「THE NORTH FACE」など。フードコーナーも設け、ハンバーガーのフードトラック「Brilliamo Burger’s」や、厚木のクラフトビールを提供するレストラン「Lambic」などのキッチンカーが登場した。
こうした野外イベントは、高島屋で初となる。横浜店販売第3部(婦人服・紳士服・スポーツ用品)の金子泰明部長は「新しいお客様とつながり、既存のお客様に当店をより身近に感じていただくための試み」と話す。売場の在り方を見直し、新規性の高い施策に取り組む中で、タッチポイントも広げていきたい考えだ。
(都築いづみ)