<ストレポ10月号掲載>24年秋冬の百貨店改装最前線
百貨店業界は、高付加価値消費とインバウンド需要の増勢が続き、大都市の基幹百貨店がけん引しながら、「回復」期から「再成長」期のフェーズに移行している。コロナ禍で各社各様に進めてきた「守り」の構造改革と、「攻め」の経営・営業戦略が結実してきた証しでもある。各店各様のビジョンに基づく「百貨店価値の再創造」と「令和の新しい百貨店モデルの構築」に向けた改装・MD再編は、今秋冬シーズンも活発化している。
※この記事は、月刊ストアーズレポート2024年10月号掲載の特集「24年秋冬の百貨店改装最前線」(全19ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他10月号の内容はこちらからご確認いただけます)
百貨店らしい環境に注力、外商顧客向けサロン拡充
国内外の富裕層顧客への対応強化は百貨店本来の強みであり、コロナ禍を経て、株高や円安を背景に国内外顧客の高額品消費の増勢が続いている昨今、持続的成長に欠かせない重点戦略と化している。都市型百貨店ではラグジュアリーブランドや高額品MDの拡大に拍車がかかってきているが、国内外の富裕層顧客(外商顧客)をおもてなしする環境整備も重要なコンテンツと化している。
阪急うめだ本店では、24年度から始動したエイチ・ツー・オー リテイリングの中期3カ年経営計画に基づき、国内外富裕層顧客と国内優良顧客を重点顧客に据え、「グローバルデパートメントストア」を目指したアップスケール化に取り組んでいる。段階的改装には約120億円を投じる計画だ。
今秋、段階的改装の先駆けとして、13階に国内外の富裕層を対象にした体験型の「VIPサロン」を新設する。約300坪に、複数の個室を設けて一人ひとりの要望に応じた特別なコンテンツを用意して、同店ならではの特別なおもてなしや体験価値を提供する。VIPサロン新設を皮切りに、25年以降は国内外富裕層を対象に、ラグジュアリービッグメゾンブランドのインストア旗艦店化、ハイエンドジュエリー&ウォッチワールドの拡大を順次進める。国内優良顧客に向けては、高感度ファッション&ライフスタイル編集ワールドと、ファッション雑貨&ビューティー編集によるラグジュアリーブランドショップを新設する。
大丸福岡天神店は、東館5階のレストラン街を全面改装して、富裕層戦略の拠点として外商ラウンジ「VIPサロン」を10月下旬に新設する。フロアの約半分(約560平米)を使用し、九州の百貨店の中で最も広い外商サロンにする。新サロンのコンセプトは特別感、ラグジュアリー感、開放感、価値観、サステナブル感を表現する「五感」。イベントやセミナーができるスペース、美容関連サロンなどを設け、食事を提供できるように厨房も備える。年間購買額に応じて案内する部屋や提供するサービスが異なるようにする。残りの半分は25年の完成を目指して、現代アートの展示、美術画廊、カフェなどを配し、カジュアルな雰囲気でアートを楽しめるような体験価値を提供できる空間にする計画だ。
11月に段階的改装が完成する丸広百貨店川越本店では、6階に外商顧客が寛げる「サロン」(約150平米)と、特選ブランドなどの期間限定販売やセミナーなどに活用できる「ギャラリー」(約300平米)を新設する。
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