松屋の「ビューティフル マインド」、地方創生に本腰
サステナブルをテーマにした松屋銀座店の定例催事「ビューティフル マインド」が、地方との協業を本格化した。8回目の「BEAUTIFUL MIND 毎日ひとつ私と誰かにいいことを」(9月25日~10月8日)は、高知県をテーマに産品やコラボ商品を展開。それに先立ち、9月に高知県と連携協定を締結した。ディスプレイや店内装飾に同県産の木材を使うなど、全館規模で高知県の魅力を打ち出している。
ビューティフル マインドは2021年春に開始。当初はサステナブルに関する様々なテーマで実施していたが、徐々に地方の魅力を発信する企画が増えていった。今回はさらに踏み込んだ取り組みとして、バイヤーらも高知県に赴き、職人の手仕事や素材の良さを確認した上でオリジナル商品を取引先と開発した。そのため、食品の大半はオリジナルだという。
地下1階の食品売場では高知県の素材とコラボした限定グルメや、バイヤー一押しのローカルフードを展開する。高知県の特産品としてかんきつ類があり、その1つである「土佐ベルガモット」を使った和洋菓子を開発。6ブランド、計7商品を販売する。
高知県産ブランド肉である「土佐あかうし」「四万十ポーク」「四万十鶏」などを使った弁当、惣菜も5ブランド、計5商品を展開する。催事場では9月25日~10月1日に「高知を味わうグルメフェア」として4ブランドが出店し、「ハヤマ」の「龍馬の土佐巻き」、「日曜市のいも天」の「いも天」などを取り扱った。
高知県は県土の約84%を森林が占めるという全国屈指の森林県で、林業や木材を使った伝統工芸が盛んになっている。5階の紳士雑貨売場では組子技術を用いた「土佐組子」のカードケース、杉の間伐材などを採用した「モナッカ」のバッグなどを集積し、7階の「デザインコレクション」では四万十ヒノキや竹など天然素材を使用する「ソマタカ」の包丁やまな板、カトラリーなどを販売した。
同店のショーウインドウの装飾にも、同県梼原町の木材を使用した。コンセプトは「小さな木材のピースを組み合わせて様々な表現を見せ、木材の新たな可能性を見出すこと」で、1階正面口、地下通路の全11カ所で実施。各フロアの装飾にも一部使用している。同県では林業の後継者不足が問題となっており、木材の魅力を発信することで需要の拡大と林業の振興を狙う。
松屋と高知県とのつながりは、21年にさかのぼる。コロナ禍で観光業がダメージを受け、地域の伝統工芸にも深刻な影響があった時期で、同社が土佐組子を使ったディスプレイを展開したり、商品開発のアドバイスをしたりなどしてサポートしていた。そこからさらに包括的に高知県の魅力を発信することになり、連携協定を締結した。
同社はこれまで観光地域づくり法人と連携協定を結んだことはあるが、自治体と直接協定を結ぶのは初。高知県にとっても、企業と連結協定を結ぶのは初だという。高知県との連携は一過性のものではなく、今後も地域創生の事業やブランディングに取り組んでいく方針。
松屋は他の地域との協業も推進しており、今年初頭には青森県の土産物ブランド「謹製 津軽たんげ」のプロデュースを始めた。同県の名産品を松屋と縁の深いグラフィックデザイナー・佐藤卓氏がディレクションする取り組みで、好評を博している。津軽地方の「津軽こけし」から生まれたブランド「ルビンのこけし」は9月にOEM化し、他の工房でも生産できるようにしたほど。第2弾として、新たな産品のプロデュースも予定している。
(都築いづみ)