2024年11月22日

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百貨店大手、第1四半期は大幅増益 通期予想を上方修正

国内百貨店業が想定を上回る業績となっている

百貨店大手の2024年度第1四半期決算が出揃った。三越伊勢丹ホールディングス、J.フロント リテイリング、高島屋、エイチ・ツー・オー リテイリングの大手4社は増収増益を達成。インバウンドが売上げをけん引し、国内売上げも堅調に推移した。これを受け、4社は通期業績予想を上方修正している。

三越伊勢丹、営業利益が過去最高へ

三越伊勢丹ホールディングス(4~6月)の連結業績は総額売上高が3179億円(前年同期比14.5%増)、売上高が1296億円(9.3%増)、営業利益が188億円(118.0%増)、経常利益が212億円(210.0%増)、四半期純利益が137億円(101.3%増)だった。営業利益、経常利益はともに統合後最高益となった。

百貨店事業は売上高が1076億円(8.8%増)、営業利益が157億円(134.5%増)。国内百貨店は円安や株高の影響により国内旅行者や訪日客が増え、首都圏店舗を中心に客数が増加した。免税売上高は4月と5月に単月の過去最高売上高を更新し、6月も同水準で推移した。

伊勢丹新宿本店や三越銀座店のリモデルにより、新規に導入した高付加価値MDが好調に推移した。地方店は販管費のコントロールを継続し、収益が大幅に改善。また全国の店舗における外商セールスの連携を推進し、外商顧客へのアプローチを強化したことで、全国の個人外商取扱高が前年を上回った。

同社は第1四半期の結果と足元の動向を踏まえ、通期の連結業績予想を上方修正した。売上高を5560億円(期初予想より80億円増)、営業利益を720億円(80億円増)、経常利益を770億円(80億円増)に設定。純利益は、5月の期初予想では前期より25億円マイナスの530億円で計画していたが、前期より25億円上回る580億円に修正した。

J.フロント、インバウンドと外商が好調

J.フロント リテイリング(3~5月)の連結業績は総額売上高が2997億円(13.6%増)、売上収益が1014億円(8.6%増)、事業利益が164億円(66.8%増)、純利益が113億円(76.9%増)となった。国内売上げが堅調に推移し、インバウンド売上げが好調だった。主力の百貨店事業に加えショッピングセンター事業、デベロッパー事業が増収を遂げた。

百貨店事業は売上収益が626億円(15.6%増)、事業利益が106億円(118.6%増)、営業利益が103億円(130.6%増)となった。 基幹店を中心に、強化したラグジュアリーブランドや時計などが好調を持続。免税売上高の伸長に加え、外商催事では過去最高売上げを更新した。

既存店合計は2019年度比で2桁増収。免税売上高を除くと3.6%増となる。インバウンド売上げが好調な心斎橋店や京都店などに加え、今期からインバウンド売上げが大きく伸長した名古屋店が好調に推移し、ターミナル立地の梅田店の入店客数、売上も大きく改善した。

同社は上期・通期の連結業績予想を上方修正し、通期の総額売上高を1兆2150億円(期初予想より150億円増)、売上収益を4245億円(30億円増)、事業利益を485億円(40億円増)、営業利益を415億円(40億円増)、純利益を265億円(30億円増)に設定した。第2四半期以降は4月公表の当初計画を据え置いている。

高島屋、コスト削減策の継続で販管費率が改善

高島屋(3~5月)の連結業績は営業収益が1201億円(13.8%増)、営業利益が172億円(56.7%増)、経常利益が178億円(53.5%増)、純利益は128億円(50.1%増)となった。 国内百貨店が営業収益をけん引し、前年から大きく伸長。コスト構造改革は一巡したが、削減策の継続強化により販管費比率が改善した。

国内百貨店業での営業収益は754億円(13.2%増)、営業利益は92億円(108.9%増)となった。インバウンドは3カ月連続で最高売上高を更新し、第1四半期累計329億円、約200億円の増収となった。全体売上高の約8割を占める国内売上げも前年を上回った。

ラグジュアリーブランドをはじめとする高額品のほか、婦人服、紳士服、化粧品などファッション関連商品も伸長した。一方で商品利益率は、高率のファッション関連商品以上に低率の高額商品が売上げを伸ばしたことで、前年を下回った。しかし商品利益額は売上高増加による効果が大きく、前年を上回った。

国内百貨店における売上高の好転を踏まえ、上期・通期の連結業績予想を上方修正。通期の営業収益を5114億円(期初予想より144億円増)、営業利益を550億円(50億円増)、経常利益を580億円(50億円増)、純利益を380億円(40億円増)に設定した。

エイチ・ツー・オー、都心店がけん引

エイチ・ツー・オー リテイリング(4~6月)は総額売上高が2764億円(13.0%増)、売上高が1619億円(4.6%増)、営業利益が93億円(94.7%増)、純利益が265億円(685.0%増)。好調な百貨店事業の売上げ増が寄与した。純利益は政策保有株式の売却、子会社株式の段階取得に係る差益などの特別利益計上(248億円)の影響も大きい。

百貨店事業の総売上高は1554億円(25.8%増)、売上高は457億円(19.6%増)、営業利益は80億円(170.3%増)。インバウンド売上げの急伸を背景に阪急本店、博多阪急など都心店が好調に推移した。国内売上げは想定通り堅調な動きだった。

総額売上高、営業利益ともに対前年、予想を上回り、第1四半期では過去最高を記録。インバウンド売上げは7月以降も同様の傾向を想定する一方、前年実績が月を追うごとに増加しているため、前年との差は徐々に縮小する見通し。

同社は第1四半期の業績を織り込み、上期・通期の連結業績予想を上方修正。通期の売上高を7020億円(期初予想より20億円増)、営業利益を295億円(30億円増)、純利益を300億円(40億円増)に設定した。なお第2四半期以降は期初予想を据え置いている。