2024年11月24日

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松屋の中元商戦、ECシェア拡大へ送料無料 “最大のインセンティブ”

高級品から日用品、夏にうれしいスイーツと、バラエティ豊かに松屋らしい中元品を揃える

松屋の中元商戦がスタートした。近年力を入れているインターネット通販は好調で、昨年の売上げは前年比27%増と伸長。今年もさらなる増進に向け、ポイントやクーポンの付与、ECサイトでの取り扱い商品を拡充し、“最大のインセンティブ”として送料無料を打ち出す。今年のECでの売上げ目標は同17%増に設定。地下の食品売場では同7%増、ギフトセンターでは同9%減、外商では同4%減に据え、商戦全体で前年並みを維持する構えだ。

ECサイトでの販売期間は、7月26日までと昨年より5日少ない。カタログ掲載点数は約1800点と前年並みだが、今年はECの取り扱い商品を約160点増やし、約1700点。今回の目玉施策である送料無料となるのは、この内、カタログ掲載の「全国送料110円ギフト」の840点と、食品フロアに入る約50ショップの100点を合わせた、計940点に上る。

加えて、割引率が10~20%の商品を用意する「早期特別優待ギフト」の中で、一律10%優待の「早トク10」商品(約190点)も、EC購入限定で110円の送料を無料にする。昨年まで優待商品は店頭購入のみだったが、今年初めて早トク10をECの取り扱いに加えた。

このほかにも昨年に引き続き、松屋ポイントカードで購入した場合ポイントが2倍になる上、新規利用で6480円(税込み)以上注文すると、先着1000人にECサイト内ですぐに使える1000円分のクーポン券が付与される。

こうしたECの利用促進に向けた特典とともに、松屋ならではの商品ラインナップにも注力する。今年は、高額商品の売上げが増加傾向であることや、物価高などによる自家需要の高まり、そして今夏も予想される猛暑を背景に、「松屋ならではの高級・限定ギフト」「日用品のギフトをご自分用に ご自宅配送限定商品」「今年の夏も猛暑予想!おすすめ涼感デザート」の、3つの切り口で提案する。

高級・限定ギフトでは、「ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ」の「マンゴープリン」(9個入り、6480円)や、銀座店のみに店舗を持つ「ミルフィユ メゾン フランセ」の「ミルフィユ スペシャリテ」(12個入り、3888円)などを推し、日用品では「日清オイリオ」の「ヘルシーオフ」(900g×8本、4817円)や「モンカフェ」の「ドリップコーヒー スペシャルブレンド」(50パック、3629円)などのセット品を用意。暑い夏に涼しさを感じられる「Kuma3」の「銀座へしれアイスクリーム」(7128円)や「銀座 清月堂本店」の「銀座涼菓揃」(3456円)といったスイーツなども薦める。

現状、同社のECの売上げシェアは22%ほどだが、こうした特典や品揃えの充実で「40%までは持っていきたい」と、飯田尚思営業一部食品二課バイヤーは目標値を示す。中元や歳暮の市場がダウントレンドと言われる中、松屋ではパーソナルギフトの購入が目立っている。前述の通り、銀座の立地ゆえの高額品やいわゆるニッチな菓子ブランドに加え、オリジナルの冷凍食品など、松屋だからこそ可能な品揃えが理由と推定される。地下の食品フロアで客が購入する際には、のしや名入れなどがないため、正確な数字は拾い切れないが、「パーソナルギフトの分を入れると、(中元の売上げが)はたしてそこまで下がっているのか」(飯田バイヤー)と、思案する状況でもあるという。

6月5日に銀座店8階に開設した「お中元ギフトセンター」

ギフトセンターの規模についても、今後さらに拡大する余地は小さいとしながらも、依然としてネット購入が難しい高齢顧客の利用は多い。ECのシェア拡大に向けた策を講じる一方で、飯田バイヤーは「あまり極端な施策を取ると、(ネット購入しない客)を切ってしまうことになる。現場としてはギフトセンターの利用客は大事にしたい」と、ECとリアル双方のバランスを重視する。銀座店は5日に開設し、浅草店は例年通り1日に開設した。1日は土曜日だったが、広報担当者によれば「初日に多くの来店があった」という。

そうした中で、今後も伸びしろのあるECの売上げとシェアを上げていくには「中元歳暮に限ってオンラインを利用するお客様はそういない。今やろうとしているのは、普段から当社のオンラインショップで買い物をしていただくこと。その延長線上で『中元も、歳暮も』というところに持っていく。普段の(オンラインの)コンテンツを、もっともっと魅力的なものにしていく」と、飯田バイヤーは説明する。

中元や歳暮をパーソナルギフトで利用する人も、以前と比べ増えつつある。カタログのタイトルを「サマーギフト」や「季節の贈り物」と変える店も出始めている。しかし飯田バイヤーは「個人的な想いも含めて」と言葉を添えた上で、「当社では『日本の文化を大事にしていこう』という考えがある。『お中元』、『お歳暮』という文化を、言葉としてとどめておきたい」と語る。松屋ならではの戦略と姿勢で、今年も中元商戦に臨む。

(中林桂子)