にんべん、「海のエコラベル」が付いたかつお節発売 持続可能な漁業へ
にんべんは、持続可能な漁業で獲られた水産物の証である「MSC認証」の付いたかつお節を発売する。対象は「フレッシュパックゴールド」シリーズの5種類。どれもギフト好適品で、6月から順次販売を始める。MSC認証の継続と認知度の拡大のため、クラウドファンディングも始めた。かつお節の老舗メーカーとして、サステナブルな漁業へ貢献していく方針だ。
MSC認証は「海のエコラベル」とも呼ばれ、水産資源と環境に配慮し、持続可能な漁業によって獲られた天然の水産物と認められたものに付けられる。漁業の事業者向けの認証で、水産物の水揚げ以降のサプライチェーンに対する加工・流通の管理認証としては「MSC CoC認証」がある。MSC CoC認証はMSC認証のある水産物をほかの水産物と混ざらないように管理し、漁場から店頭まで確実に届く仕組みを保証する。
環境に配慮したサステナブルな水産物への関心が高まる中、日本でもMSC認証が広まり始めている。生活者に安心してかつお節を食べてもらうため、にんべんも髙津伊兵衛社長の強い想いの下、認証の取得に取り組んだ。
まず、対象商品の製造から販売に関わる立石水産(鹿児島県)、にんべん製造部、大井川工場、にんべん日本橋本店の4者が、MSC CoC認証を取得している事業者のグループに、2022年6月に加盟。続いて23年4月に、立石水産にカツオを卸すかつお一本釣漁業㈱がMSC認証を取得した。かつお一本釣漁業はカネシメイチ(宮城県)、旭漁業(鹿児島県)、枕崎市漁業協同組合(鹿児島県)の共同出資で設立した企業で、同社の遠洋一本釣り漁船5隻が「カツオ、ビンナガマグロ一本釣り漁業」で認証の対象となった。
MSC CoC認証の手続きは、比較的スムーズにできたという。「当社は以前からトレーサビリティー(生産履歴の追跡)をできる仕組みを持っていたため、その一部を活用した」と執行役員製造部長の渡邉勝良氏は話す。フレッシュパックゴールドシリーズは元々一本釣りで獲れたカツオを使用しており、混獲がほぼなく環境に優しいため、漁獲のプロセスも大きくは変えていない。
認証を取得した商品は「鰹節フレッシュパックゴールド詰合せ」の8袋入り(1350円)、20袋入り(3240円)、34袋入り(5400円)と、「フレッシュパックゴールド ソフト削り(血合い抜き)」(8袋入、1188円)、「フレッシュパックゴールド 糸削り(血合い抜き)」(8袋入、1188円)の5品。5月生産分からしおりを封入し、6月から順次出荷する。
これら5品は贈答の利用が多く、まずは中元ギフトの購買を見込む。商品にMSC認証のラベルシールを貼り、店頭の陳列見本にもアイキャッチャーを付けることで、MSC認証を取得したことをPRしていく。「世の中ではSDCsへの関心が高まっている。当社がこうした取り組みをしている姿勢を見せることが、商品を選ぶ際の付加価値になると考えた」(渡邉氏)
一方、MSC認証を継続するには登録料などのコストがかかる。今後も生産を継続するため、またMSC認証のかつお節について理解を深めてもらうため、クラウドファンディングも始めた。6月1日~30日、仲介サイト「READYFOR(レディフォー)」で実施している。目標金額は100万円。
支援金の使用用途は2つあり、1つがMSC認証のかつお節生産を続けるための資金。MSC認証の継続登録と内部監査にかかる経費に充当する。もう1つがMSC認証の鰹節について理解を深めてもらうための機会の創出。MSC認証のかつお節の説明報告書、フレッシュパックゴールド現品、かつお節教室や生産工場の見学への招待などを提供する。
近年、世界的に漁業の中でカツオ漁獲量が増大し、かつお節に適したカツオの調達が不安定になっているという。「かつお節づくりの安定と持続のため、ぜひご理解とご支援いただきたい」と渡邉氏は力を込める。
(都築いづみ)