2024年11月22日

パスワード

購読会員記事

高島屋大阪店、化粧品売場の新装が完成

今年3月から5月にかけて、化粧品売場をリニューアルした

高島屋大阪店は5月21日までに化粧品売場を新装した。関西初登場の「アーレス」など新規に4ブランドを導入し、既存の24ブランドもリニューアル。一部の既存ブランドは、目的買いの客には素早く、カウンセリングを求める客には時間をかけて対応できるように環境を整備した。国内外の客の旺盛な購買意欲に支えられ、化粧品の売上げは好調だが、選択肢を増やすとともに、買い物の快適性も高め、勢いに弾みを付ける。

改装は主に3月から段階的に進めてきた。3月13日にアーレスと「イソップ」が加わり、「エスティ ローダー」「ジョンマスターオーガニックセレクト」「アヴェダ」「ビィオセンシィエール」「ニールズヤード レメディーズ」「アクセーヌ」「ドクターシーラボ」「スリー」が一新。4月1日には「カネボウ・ルナソル」「クラランス」「スック」「ファンケル」が、同15日には「エピステーム」「SK-Ⅱ」が、それぞれリニューアルされ、同24日には「アスレティア」がオープンした。5月1日には「アルビオン」「資生堂」「カバーマーク」、同21日には「エスト」「コスメデコルテ」を新装した。2023年度(23年3月~24年2月)にも、いわゆるスクラップ&ビルドは実施しており、今年5月21日までに約70ブランドのうち半分ほどがリニューアルされた。

関西初登場の「アーレス」

同店の化粧品売場にとっては、約14年ぶりの大規模改装だ。スクラップ&ビルドは継続してきたが、特に新型コロナウイルス禍が収束した後は、客の層や買い方が大きく変化。国内では口コミなどを見て目的買いに来る男性が増え、国外では以前の“爆買い”が鳴りを潜め、カウンセリングを重視する客が多い。こうした変化を捉え、国内外の客を囲い込むため、大規模改装に踏み切った。

とりわけ力を注いだのは、買い方の変化に即した環境の整備だ。目的買いの客が素早く済ませられるよう、専用のコーナーを開設。カウンセリングの需要の高まりを受け、同じく専用のコーナーを充実させた。いずれも国内の一部のブランドからで、順次他のブランドにも広げていく。「来年の大阪・関西万博までに体験価値を高める」(北田真規販売第2部化粧品ストアマーチャンダイザー)狙いだ。

大規模改装を機に、資生堂やコーセー、アルビオンら国内大手との関係性も深める。23年度は国内客の売上げが新型コロナウイルス禍前の19年度を超えたにもかかわらず、国内大手のブランドは下回ったからだ。国内大手のブランドは売上げの約3割を占める中軸。24年度は“共闘”で立て直しを急ぐ。

まず、一体感を醸成する。「取引先からの質問などにスピーディーに対応しつつ、定期的にショップを訪れ、お客様の状況を把握してフォローする」(北田氏)ほか、各ブランドのイベントを高島屋大阪店のウェブサイトで予約できるようにしたり、スキンケアやメイクアップ、UVなどテーマを決めたフェアを年4回行ったりして、取引先が新客との接点を得られる機会を提供。ウィンウィンの関係を築き、売上げの伸長につなげる。フェアは「インスタグラム」での広告出稿も効いて活況を呈しており、取引先からは「新しいお客様を獲得できる」と好評という。

男性客の取り込みも課題だ。売上げ構成比は約3%にとどまる。改装では男性の美容部員を増やしたが、「まだまだ環境として買いづらい」(北田氏)と判断。キャンプやサウナなど男性と親和性が高いテーマと化粧品を掛け合わせたイベント、プロモーションなどを積極化し、買いやすいムードを培う。

24年度は3月が前年実績を大きく超え、4月も国内客は前年比10%増と“上げ潮”だ。改装効果が重なれば、さらなる伸長が見込める。「今後はオリジナリティをどう出すか。化粧品の初心者の要望を見ると、ブランドの垣根を越えて提案できる機能も必要だ。それがオリジナリティにつながるのではないか。再来店の確率の低さも弱点。来ないと納得できない、美容室のような存在になれるよう、美容部員のスキル、比較購買の容易さ、居心地の良さなどを追求していく」と、北田氏。大規模改装を完成させて満足するのではなく、先々を見据えて新たな手を講じる。

(野間智朗)