2024年11月25日

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昭和西川の「ムアツピロー マルチレイヤー」、枕の提案力強化へ

今秋に発売する「ムアツピロー マルチレイヤ―」。「MuAtsu」の上位モデルのマットレスと共に訴求する

昭和西川は今秋、「MuAtsu(ムアツ)」から6枚のシートで高さ調整できる「ムアツピロー マルチレイヤー」を発売する。ムアツのウレタンフォームの下に硬さを細分化したポリエチレンシートを組み合わせ、快眠につながる高さやフィット性、スムーズな寝返りを実現。3万円台を予定する高価格帯枕の投入で、ムアツマットレスの上位モデルを購入する層へのアプローチを強化する。同時に、昨年末に子会社化した「Futonto(フトント)」が展開するオーダーメイド枕「まくらぼ」も打ち出し、枕の提案を充実させる。

首の裏の頸椎をしっかりと支えて安定させる設計

ムアツピロー マルチレイヤーの開発は、昨年末から開始した。ムアツのマットレス(シングル)が4万9500円から19万8000円までと幅広い価格なのに対し、ムアツの枕は下が6050円で、上が1万6500円。MD本部MD一部ムアツ課の橋本康資課長は「これまで、最上位モデルのマットレスを購入する層へのアプローチが弱かった。高価格帯でバリエーションを増やして、より幅広いレンジでお客様の対応をしていきたい」と狙いを話す。価格は3万3000円を予定する。

同社は昨春、客が分かりやすく選びやすいようムアツのラインナップを切り替えた。新型コロナウイルスの流行をきっかけに睡眠や健康を意識した顧客が寝具への興味を深め、高価格帯のマットレスを選ぶケースが増えたという。こうした状況も鑑みて、高価格帯商品の提案力向上につなげたい考えだ。販促面でも、例えばオーダー枕は売場の中でもスペースを取って展開することが可能だが、通常の枕となると難しい。「(枕)1個、2個のスペースで3万円台の価格をフォローしていく」と、橋本氏は効率性にも言及する。

ムアツのウレタンフォームと、密度を細分化させた5枚のポリエチレンシートが、適度な高さを可能にする

新商品となるムアツピロー マルチレイヤ―は、自身の好みの高さに調節ができる6層仕立て。最上部は凹凸のあるムアツのウレタンシートで、その下には「頸椎シート」「横向きシート」「ベースシート」、2枚の「調整シート」と、5枚のポリエチレン製シートを組み込んだ。

頸椎シートと横向きシートはそれぞれ、ポリエチレンの密度を変えて硬さが異なる分割構造になっている。頸椎シートは、後頭部が当たる中央は「柔らかめ」で、その両脇は「ふつう」、さらにその両脇は「硬め」と5分割の仕様。中央部分は後頭部を包んで安定させ、首元は硬めの設定で沈み込みにくく頸椎をしっかり支える。横向きシートは、中央が柔らかめで、その両脇は硬めに3分割。中央部分は頭がしっかりと沈み込み、両端の硬さで肩の高さが維持できる。

その下のベースシートで高さをキープし、最下段の1cm厚の調整シートを1枚にしたり2枚にしたりして好みの高さに合わせる。枕の総厚は約12cmと、一般的な枕と比べてかなり高さがあるものの、頭を乗せると「3.5cmから4cmまで沈み込むので、ほとんどの人に合うような仕様になっている」と橋本氏は説明する。

ポリエチレン製のシートはソフトと、ポリエチレンの密度を上げたハードの2種類を用意。水洗いが可能で衛生も保てる。枕のカバー生地はウールニットを使用することで、頭の蒸れを吸湿し、さらっとした使い心地を叶える。今後は社内でのモニター評価をさらに進め、改良しながら秋の発売を目指す。

一人一人異なる睡眠の悩み、体の悩みを聞きながら、オリジナルの枕をつくる

こうした高価格帯で勝負する枕の開発も含め、同社は枕を今後の強化領域と位置付けている。13日に都内で開かれた展示会には、昨年子会社化したフトントの「MAKULABO(まくらぼ)」も披露された。顧客一人一人に合わせたオーダーメイド枕を制作・販売し、現在は25万件の顧客を有する。客数は年々増加中で、まくらぼの担当者は「3~4カ月のスパンで1万件増えている。『睡眠負債』が流行語になったこともあり、若い購入客も多い。新型コロナウイルス禍中は、支給された給付金で枕を買いに来る方もいた」と、順調ぶりを明かす。

枕はレギュラータイプの「MAKULABO 10」(2万7500円)と、プレミアムタイプの「MAKULABO X」(3万8500円)の2つ。いずれもファスナーの付いた見開きの仕様で、片方は10mm厚のウレタンベース2枚が入る大きなポケット、もう片方には素材を入れる複数のポケットが装着されている。MAKULABO 10は計8ポケットを備えた片面仕様で、MAKULABO Xは綿入りのポケットを含めた計9ポケットで、ハニカムキルトとコットンの両面仕様となる。

枕の制作は、まず専用機器で頭の後ろから背中にかけて測定する。出た数値に合わせて10種類の硬さの異なる中材から選択し、各ポケットにそれぞれ挿入。仰向けでも横向きでもちょうど良い高さになるよう、寝姿勢などを確認しながら2mm単位で調整する。

「つぶわた」「炭パイプ」「トルマリンパイプ」など、バラエティ豊かな中材を揃える

担当者によれば「枕や睡眠の悩みで多いのは、首こりや肩こり。パソコンでのデスクワークが多く頭痛の悩みを持つ人も多い」という。中には、無呼吸症候群や首のヘルニアなど医師の診断を受けた人の来店もあった。枕をつくる上で、大事にしているのはカウンセリングだ。客それぞれの睡眠や体の悩みを確かめ、個人差のある硬さや柔らかさへの感覚的な部分においても、相談しながら素材を決めていく。

メンテナンスも期間を問わず無料で行う。初回のメンテナンスは購入から2~3週間後に再調整、その後は3カ月に1回程度の診断と調整を勧める。素材の取り換えについても、枕の中の素材が同じであれば足すのも減らすのも無料のサービスとなる。

昭和西川においても「オーダーメイド枕」の顧客は増えているといい、フトントとの協力関係でより基盤を固める意向だ。高価格に見合う機能性枕を充実させ、顧客への提案力を高めていく。

(中林桂子)

昭和西川、オーダー枕の「Futonto」を子会社化