アラ商事、盛夏戦略を再構築 着こなしや技術を前面に
アラ商事は、盛夏向け商品の展示会を従来のブランド別からコンセプト別に切り替えた。盛夏はネクタイが動きにくい時期だけに、ストールやポケットチーフなどのネックウエアを使った着こなし、オーダーメイドやアップサイクル、リメイク、OEMといった技術を切り口に訴求。来場者の関心を引き出して新たな需要を取り込む。
来場者が分かりやすいよう、会場をコンセプト別に区分けした。例えば、入口付近には主力のネックウエアをコーディネート提案で展示。芯地がなく軽量な「エアリータイ」、小ぶりなスカーフ「ティーニー」、蝶ネクタイ、ポケットチーフ、扇子などを使った着こなしを表現した。まだ本格的に暑くなる前、6月いっぱいまでを見据え、売場やショップで楽しさを演出できる方法を示し、つくり手と売り手の連携で客の購買意欲を喚起する。
7月以降に向けては、ギフトと盛夏のコーディネートを訴求。ニットタイをギフトパッケージとセットで打ち出したり、接触冷感の「クールスカーフ」をクリアボトルに入れて販売したりする方法を指南し、ネックウエアの需要が最も落ち込む時期に新たな需要を引き出す。
あるいは、6月のブライダル需要にフォーカス。若年層を中心に「カジュアル化が加速している」(同社)と分析し、“いかにもフォーマル”というデザインではなく、ファッション性を追求したネクタイ、近年はブライダル需要では1番人気という蝶タイなどを多彩に用意する。
一方で、展示会は新たな商機の獲得にも役立てる。従来通りのネックウエアの販売だけでは先細りが否めないからだ。群馬県桐生市に擁するグループ会社、アルファテックスの自社工場を生かし、オーダーメイドやリメイク、アップサイクル、OEMなどの受注を狙う。
オーダーメイドはOEMを中心に需要が拡大。リメイクも「百貨店の平場でじわじわと広がっている」(同社)。百貨店の担当者からは、かつて流行した幅が広いネクタイを細くするリメイク、使い古したネクタイを子供用の蝶タイやYタイにリメイクするなどの要望が寄せられるという。多くの売上げが生まれるわけではないが、新しい商機だ。
アップサイクルもイベントなどで好評。当たったのは、アラ商事が春夏と秋冬のシーズンごとに生み出す柄のサンプルとして蓄積された生地の蝶タイへのアップサイクルだ。全て一点物で、価格も2800円~と割安のため、売れ行きが良い。
OEMは伸び代が大きい。展示会を通じて様々な生地を作れる自社工場の強みをPRし、新たな取引先の開拓を急ぐ。展示会では再生ポリやシルク、モガドールといった生地に加え、ネクタイを応用したヘアアクセサリーやエプロン、かごバッグなどを紹介。“守備範囲”の広さをアピールした。
今回の展示会は「6~8月のネクタイにとって厳しい時期に、売場やショップでお客様にどう楽しんでもらうかが、売上げを積み上げるカギ。装いの楽しさを提案した。自社工場の強み、独自性を生かした企画も盛り込み、取引先とお客様の両方のニーズを掘り起こす」(同社)狙いだ。中核のアイテムに逆風が吹く時期もチャンスと捉え、チャレンジを積極化する。
(野間智朗)