2024年 百貨店首脳 年頭所感・弐
<掲載企業>
高島屋 社長 村田 善郎
昨年は5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、社会・経済活動において正常化が進んだことで、個人消費は着実に増加いたしました。さらに、物価と賃金の好循環による良いインフレ経済への転換に向けた機運が高まった年でもあったと認識しています。
当社グループにおきましては、外部環境の変化に左右されない本質的な営業力強化とコスト削減に取り組み、業績は大幅に改善いたしました。昨年10月には京都高島屋の隣接地に専門店ゾーン「T8」がオープンし、「京都高島屋S.C.」が誕生いたしました。百貨店の伝統と専門店の革新が同一の商業施設に違和感なく共存する京都高島屋S.C.は、当社グループのビジネスモデルの象徴であり、次世代に向けたチャレンジです。
本年は現在の成長を一過性のものではなく、持続的成長の軌道に乗せていけるかどうかを左右する非常に重要な1年です。グループ総合戦略「まちづくり」の下、百貨店に加えて専門店、金融サービスやレストランなどのグループ会社が専門性を発揮するとともに、グループのシナジーを生かした商業施設運営を行うことで、リアル店舗ならではの体験価値を提供してまいります。
また、お客様に満足いただける体験価値を生み出し、提供していく主体は「人」です。当社グループの経営理念である「いつも、人から。」にもあるように、「人」は当社にとって最も重要な経営資源です。取引先を含めた全従業員とのエンゲージメント向上により「人」の力を引き出し、当社グループと個々人がそれぞれ成長を実現していくための取り組みを推進してまいります。
当社は2031年に創業200年という節目の年を迎えます。当社が200年、そしてその先まで社会から必要とされ、愛される企業であり続けるために、ステークホルダーの皆様との対話を通じて新たな価値を「共創」し、永続的な成長につなげてまいります。
小田急百貨店 社長 中島 良和
2023年の日本経済は、コロナ禍の収束による経済活動の正常化や、財政・金融政策などが下支え要因となり、物価高の下でも景気回復が見られました。
当社においては、新宿駅西口地区開発計画の工事が進む中、新宿店は10月に旧本館の建物解体に伴う新宿西口ハルクリニューアルから1周年を迎えました。また、12月にはSHINJUKU DELISH PARKもオープンから1年を迎え、「#新宿地下ラーメン」をはじめとして各エリアにリピーターの方も増えてきました。
新宿店は工事による限られた売場の中、食品、化粧品、ラグジュアリーブランドを中心としたMDとなっておりますが、ポップアップスペースの活用や積極的な店外催事の実施により、極力通常ない商品の提案も行い、顧客接点の維持・強化を図ってまいりました。お得意様外商顧客に向けては、新たに店外へのアテンドサービスを開始するなど、今後も一層のサービス向上を目指し、外商機能の強化を継続して推進いたします。
町田店においては、4月に「ハルクスポーツ マチダ」を8階に、「青空バーベキューの庭」を屋上に導入し、新たなお客様の取り込みと館全体の活性化につなげてまいりました。地域密着型百貨店として、町田市を拠点とするサッカークラブ「FC町田ゼルビア」を応援する取り組みも行ってきました。
新たな収益の創造に向けては、店内の遊休スペースを「物販以外のサービス提供の場」として企業に提供する施策を進めたほか、店舗以外においても日本でまだ知られていない匠の技術を世の中に広めていく企画「3×(ミカケル)プロジェクト」の一環として、老舗靴下メーカーと協業したビジネスマン向けの靴下をプロデュースし、クラウドファンディングに出品しました。「香りによる空間演出サービス」の代理営業事業を展開するなどBtoBの領域の取り組みも進めてきました。
新宿駅西口地区開発計画の進捗に伴い、お客様導線の複雑化など24年も新宿店を取り巻く事業環境が一層厳しくなることが想定されますが、当社にとって今がまさに新たなビジネスモデルへの転換期です。コスト構造改革や運営体制の整備など事業基盤を一段と強化するとともに、「既存事業の中の百貨店業の強みの磨き上げ」「リアル・デジタル双方における顧客接点の強化」「新たな収益の創造」の3つの軸を基に、23年に行ってきた取り組みをさらに推し進め、事業ポートフォリオの再構築を行ってまいります。
小田急グループのリテール事業の中核を担い続け、当社の強みにより商業機能の価値最大化に貢献する企業を目指し、強みを生かせる領域に特化した上で生活者と企業、生活者同士をつなぐリアル・デジタルの様々な「魅力ある接点(場)」を提供し、利用してもらうプラットフォーマーを全社一丸となって目指してまいります。
京王百貨店 社長 仲岡 一紀
昨年は新型コロナウイルス感染症の5類への移行により、経済活動の回復や4年ぶりに行動制限のない日常を取り戻す大きな転換点を迎えた年となり、その上、私達にとっても新宿西口の商環境の変化もあり、業績はコロナ前の水準まであと少しというところまで回復しつつあります。
このような中、新宿店は本年11月におかげさまで開店60周年を迎えます。これもひとえにお客様をはじめ皆様の愛顧と支援の賜物であり、心より御礼申し上げます。60歳は人間でいえば「還暦」であり、大きな区切りの年です。新宿では当社新宿店が立地する西南口地区のほか、長期間に亘る再開発計画が複数始動し、新しい時代に向かって街全体が大きく変革しようとしています。取り巻く環境が刻々と変化する中、2024年は「温故知新」の精神で、より一層皆様に愛される百貨店となれるよう、これまでの歴史や原点を振り返りながら将来の道を切り拓く「シン・京王百貨店」として、次の10年、20年、そしてその先に向けて変革を続けてまいります。
新宿店では、一昨年秋の全館規模の改装に引き続き、昨年は食品フロアの改装を行い食領域の強化を図ったほか、新規の催事やポップアップの展開、アプリ会員獲得の推進などに取り組み、多くのお客様にお越しいただきました。本年は開店60周年を好機と捉え、新宿駅直上のターミナル型百貨店として日常を彩る良品を提供できるよう各階改装を行うほか、記念企画や商品の展開など、リアル店舗としての魅力度向上のため、各種施策を行い、お客様が何度でも足を運びたくなる店づくりを進めてまいります。
聖蹟桜ヶ丘店は、郊外型百貨店として引き続き構造改革を進め、京王グループの力を結集して地域密着のMD強化、ファミリー層の来店促進などに取り組みます。また、昨年は府中と立川立飛に新規サテライト店を出店しましたが、ギフトといった百貨店の機能や手土産に代表される食物販など、地域のお客様のニーズに合わせた品揃えやサービスをより多くのお客様に提供します。そのほか、外商事業の営業力強化やEC事業の拡大など、多様化するお客様のニーズに応えられるよう努めてまいります。
将来に向けて、京王沿線を中心に京王グループ一丸となって、挑戦と進化を重ねてまいります。
東急百貨店 社長 大石 次則
2023年は新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことに伴い、コロナ禍で中止となっていた数々のイベントが本格的に再開。外出の機会が増えたことにより消費全体は活況を呈しています。10月の訪日外客数は感染拡大後初めて19年同月を超えるなどインバウンド需要も高まり、当社の事業拠点である渋谷もさらに活気付いています。
一方、世界情勢が不安視される中、原材料費の相次ぐ値上げや、人手不足などに伴う人件費の高騰、異常気象による史上最高の暑さ、大雨災害に見舞われるなど、様々な環境に翻弄される1年となりました。
当社は中期3カ年経営計画の最終年として、一昨年の吉祥寺店、たまプラーザ店に続き、昨年は札幌店の構造改革リモデルを実行しました。また1月末に渋谷の本店は営業を終了しましたが、長らく愛顧いただいたお客様との関係維持および新規顧客の獲得を目指し、渋谷では新たな取り組みに着手。渋谷ヒカリエ ShinQsに時計・宝飾などのラグジュアリーの導入、外商顧客専用サロンの新設をはじめ、当社の強みであるフードとビューティー・コスメフロアの充実に努め、本店食料品の中でも特にお客様から支持の高かった「THE WINE」を本店近くの「奥渋エリア」に路面出店するなど、新しいことへのチャレンジに挑んでいます。東急百貨店は業界ではおそらく初めてとなる旗艦店のない展開となり、営業面では厳しい環境に置かれましたが、本社のスリム化を行い、経営基盤の確立に努めてきました。
24年は新中期3カ年計画のスタートの年となります。吉祥寺店、たまプラーザ店、札幌店の構造改革リモデルは、従来の百貨店の売場を下層階に集中させ、上層階は賃貸型にして運営の効率化を目指すとともに、賃貸テナント拡充による品揃えの多様化も併せて、館ごとにしっかり利益を出すことを目的としました。店舗の形はできても、まだまだ道半ばです。新中期経営計画の策定にあたり、「既存事業の魅力アップと収益力向上」を基本戦略としました。基本に立ち戻り、お客様の声を聴き、従業員の声を聴いて、次のステップに向かいたい――。将来の新たな顧客価値の創造を目指して、新たなチャレンジに挑み続けます。
昨年の夏ごろから、中堅若手社員と経営側が直接意見交換する場をつくり、すでに20回以上開催しました。そこでは今まで見過ごしていた課題や新たな「気づき」を発見できる貴重な機会となっています。社内コミュニケーションを活発化し、「新たな顧客価値の創造」という大きな目標に向かってスタートしました。
「お客様にとってなくてはならない存在であり続ける」。新中期計画で会社の経営基盤を盤石にし、新しいビジネスモデルで当社が持つ強みを発揮したい。そしてお客様や地域にとって「いつでも、どこでも。」なくてはならない存在となるよう全社一丸となって臨みます。
ながの東急百貨店 社長 平石 直哉
昨年、長野市では夏の恒例行事である「長野びんずる」(夏祭り)が4年ぶりに従来規模で開催されるなど、これまでコロナの影響により中止および縮小を余儀なくされてきた多くのイベントが復活しました。コロナの沈静化に伴い人々の動きが徐々に活発化し、長野地区におきましてもようやくコロナ前の日常生活が戻ってまいりました。
しかしながらその一方で、物価高や光熱費の高騰による家計負担の増大が続く中、記録的な猛暑・残暑により秋物商材が不振に終わるなど、好調な大都市圏に比べインバウンド比率の低い長野地区での商況は本格的な回復感を実感するまでには至りませんでした。
このような足元の環境に加え、須坂市では大型ショッピングモールの2025年秋の開業が正式決定され、今後、長野地区では地域間、店舗間でのさらなる競争激化の時代を迎えるものと予想されます。
競争激化の厳しい時代にあって、地元に根差しながら勝ち残っていくため、当社は長期の事業ビジョン「共に暮らしを育む」を策定し、昨年はこの実現に向けた施策の実施、具現化に全社を挙げて取り組んでまいりました。
そして本年はこの取り組みをさらに強化、発展させ、その一環として店舗の活性化と差別化による店舗価値の向上に向け、全館規模でのハイブリッド化リモデルを推し進めてまいります。
ハイブリッド化リモデルは、百貨店の得意分野である食料品、化粧品、ギフトなどをさらに強化する一方、当社の駅前立地という優位性を生かし店舗の一部を賃貸化して、安定した賃料収入と新たな利用価値の創造を目指す計画で、すでに一部着手をしております。
具体的な一例として昨年、従来の百貨店での購買機会に加え、新たな来店動機と顧客接点の拡大に向け、百貨店ではあまり例のない医療施設を中心とするクリニックエリアをオープンするとともに、これまで不足していたスポーツ&アウトドアカテゴリーに対応するため、大型スポーツ量販店「石井スポーツ」を誘致いたしました。さらに、グランドフロアである本館1階においては、百貨店の強みを打ち出すべく新規のアクセサリー、服飾雑貨のブランドを複数導入しました。
本年も昨年に引き続き、全館規模でのハイブリッド化リモデルの実現に向け、自主売場の集約による効率化や新規MD、ブランドの導入に加え、従来の百貨店の枠にとらわれない新たなテナント誘致に力を入れてまいります。
また、コロナ禍でも安定した売上げを収めていた外商部門については、引き続き、当社へのロイヤルティが高い上顧客をターゲットとする高級品の販売会を積極的に開催するとともに、店舗外事業での収益アップに向けた取り組みや新規顧客獲得による外商顧客の裾野拡大に努めてまいります。
さらに、若年層や次世代顧客の取り込みに向け、昨年から実施している「楽天ポイントの導入」や「LINE会員の獲得」によるデジタル販促策を強化し、従来のチラシに代わる新しい宣伝媒体による情報発信と効果的な情報伝達策を講じてまいります。
このほか長野県の特産物を通じ地域の魅力を発信する「しなのづくり」プロジェクトのさらなる拡大など、事業ビジョンの目標の1つである「ローカリストとしての存在感発揮」に向けた取り組みにも引き続き力を注いでまいります。
以上の通り、本年は事業ビジョン「共に暮らしを育む」の実現に向けた取り組みを、さらに加速させてまいります。そして、取引先をはじめとする周囲との緊密な連携体制の下、コロナの影響により、これまで遅延や見送りを余儀なくされていた全館リモデルなどの積極的な施策をスピーディーかつ着実に実行に移し、当社のみならず長野駅前エリア全体の活性化にも結び付てまいります。
東武百貨店 社長 國津 則彦
2023年は行動制限が大きく緩和されたことをきっかけに、外出機会の増加による国内消費の改善やインバウンド消費の回復など、消費環境が大きく変化した1年でした。一方、世界情勢はますます混迷を極め、私達の生活にも大きな影響を及ぼしています。地政学的リスクや急激な円安傾向を受けた物価の高騰といった不安材料はさらに増大し、企業は様々な努力を強いられているといえるでしょう。
その中で当社は社会環境の変化に対応し、多くのお客様に来店いただくための取り組みを行いました。池袋本店では若い世代のお客様の来店動機となるショップの導入や、次世代顧客の開拓を目指し子供向けの環境整備に力を入れ、成果を上げております。そして数年ぶりに再開した地域の大学との産学連携や、豊島区主催のイベントに積極的に参加するなど、地域とのつながりを強化しています。
船橋店では食品、化粧品フロアをより幅広い世代のお客様に目的を持って来店いただけるよう改装したことで、顧客層の拡大につながりました。そのほか、地域密着の推進として船橋市や近隣企業との取り組みを継続的に実施するなど、来店促進施策に力を入れています。
当社は東武グループの一員として、事業環境の変化に迅速に対応しながら収益を上げる経営体質を目指しています。東武グループが昨年3月に開始したECモール「TOBU MALL」では、これまで取り扱いのないデジタルチケットを販売し、好評いただきました。7月の「新型特急スペーシアX」運行開始では、池袋本店と船橋店それぞれが知恵を絞った催事や全館施策を実施することで、スペーシアX運行開始をグループの一員として全社的に盛り上げることができたと考えています。
池袋駅西口地区再開発事業については昨年、国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトとして認定され、東武鉄道が事業主体の一員に決定いたしました。当社は東武グループの一員として東武鉄道と密に連携し、将来の駅中核を担う商業施設像を模索しています。
船橋地区でも新たな街づくりが進んでいます。JR南船橋駅南口では公民連携による開発が進み、ショッピングモールが開業。春には大型多目的アリーナが誕生予定です。商圏内での施設整備が続くことで、地域全体の活性化が見込まれます。当社も地域の一員として、遅れることなく新たな魅力を提供し続けてまいります。
お客様の買い方の選択肢も多様化した今、百貨店を取り巻く環境は転換期を迎えています。これをチャンスと捉え、商圏を広げ次世代の新規顧客、ファミリーなどに向けた施策により注力してまいります。皆様に、いつ来ても「新鮮さ」「ワクワク感」を感じていただける店づくりを目指し、常にチャレンジし続けることが大切だと思っています。
東武宇都宮百貨店 社長 星 佳成
昨年は新型コロナウィルス感染症の位置付けが5類に移行し、社会経済活動の正常化が進む中、個人消費の持ち直しと富裕層やインバウンド需要の恩恵などで大都市圏の売上げは回復傾向にありますが、私共地方百貨店の回復は遅れています。
このような経済社会状況の中でも、百貨店は世の中の変化に対応する“変化対応業”であり、市場の変化やお客様の変化を敏感に感じ取りながら存在価値を高めなければならず、百貨店の在り方も変革の時を迎えていると考えます。
昨年はイベントプラザで開催される物産展の出店者数がコロナ前に戻ったことや、イートインや試食販売が再開されたことで賑わいが戻り、成果を上げております。
外商部門においては地域法人顧客の要望を伺い、細やかな需要の情報収集を行うことで大きな受注をいただき、並びにロイヤルサロンの企画にいらしたお客様に店内で買い回りいただき二重効果を得るなど、潜在需要顧客の掘り起こしにつながる手応えを感じております。
今年11月、宇都宮本店は開店65周年を迎えます。この節目の年に、既存の売場の強化と集客力のあるテナント誘致の積極化で店舗の魅力向上に努めてまいります。さらに、お客様のご要望を伺い、覚悟を持ってそれらを1つずつカタチにするところから始めたいと考えます。
百貨店の売場づくりの神髄は編集力にあります。来店したお客様に多くのフロアや売場に立ち寄っていただけるよう、催事の拡充やライフスタイルサポートの提供など、カスタマージャーニーを想定した店舗づくりにチャレンジしてまいります。
また、多様化する顧客ニーズに応えるため、トレンドアイテムをはじめ宝飾やアートなど、百貨店が持つ商品調達力とネットワークを駆使し、幅広い年代との接点拡大に注力。百貨店の存在価値を高めるために、高品質で新鮮な「商品」、居心地の良い空間を提供する「環境」、お客様の要望に応える「接客」、感染症対策などの「安心安全」という4本の軸を掲げて改革を行ってまいります。
一方で、百貨店は労働集約型産業だからこそ人材力、サービスレベルの向上が不可欠と考え、変化に対応できるチャレンジングな人材育成と人材戦略を重視し、モチベーションの向上も図りたいと考えます。百貨店はお客様の声を一番近くで聞き、変化し続けることができる業態です。私達が基本を徹底する先に東武宇都宮百貨店のファンが増えると信じ、地域に根差したマイストアとなれるよう努め、地域創生の一翼を担う存在を目指してまいります。
65年の節目となるこの1年が「東武宇都宮百貨店の新たなスタートの年」となるよう、地域の皆様に新たな魅力を提供し存在意義を高められるよう努め、スピード感を持ってチャレンジを重ねてまいります。
井上 社長 井上 裕
昨年の後半は新型コロナ感染症を乗り越え、街の活気が現実的に感じられるようになった数カ月でした。松本市も観光客が急増し、特に為替の影響もあり海外からの観光客で街中が賑わう光景が印象に残っています。各観光スポットも新型コロナ禍前の水準を上回る勢いで観光客が増えています。そんな喜ばしい状況ではありますが、一方では燃料費、物価の高騰による消費マインドの落ち込みは地方百貨店などの売上げの足を引っ張り、当社も何となく取り残され感を感じざるを得ませんでした。
2024年はまずはこの暗い気持ちを変えていくことから始めなければなりません。各部門の掲げた目標を必ず達成するという気概を全社で持ち、そのための行動につなげていく。そのためには、どうしたらお客様が楽しんで買い物ができるのかという基本に立ち返ることが、当社には今非常に重要だと感じております。営業会議や主任会議などで意見交換を積極的に行い、新しいアイデアを実行できる機会を増やし、何とか今の雰囲気を変えることからスタートしたいと思っています。
また新しい試みとして、以前から片手間での取り組みであった県内外への県産品の販売をする広域事業を、専門の部門を新たに組織して積極的に活動していきたいと思っております。
昨年も京急百貨店、阪神梅田本店、西武渋谷店などの協力で出店、出品をさせていただきました。二子玉川ライズで開催された、松本商工会議所主催の「信州・松本の物産と観光展」にも参加させていただきました。24年は銀座NAGANO、藤崎での企画が2月に予定されており、準備を進めております。このように今後も全国各地の百貨店や団体と協力して長野県の良さを発信できればと思っております。
地域の百貨店として商品販売だけでなく、商品開発や商品プロデュースなどにも積極的に取り組んでいきたいと思っております。具体的には町村などの自治体や各種団体との協働で、その自治体の特産品を使ったオリジナル商品を開発し、町村を盛り上げる手伝いや、スキー場のレストランのゲレンデメニュープロデュースなども予定しております。
地域の中の新しい存在として、企画提案もできる百貨店を目指していきたいと思います。
名鉄百貨店 社長 石川 仁志
昨年は、新型コロナウイルス感染症による社会活動の制限が緩和され、日常生活が戻り、買い物やレジャーなどへの消費が徐々に回復した年でした。健康への感謝の気持ちと、人の交流から生まれる結び付きの大切さについて、想いを新たにした年でもありました。
当社の営業を振り返りますと、人の流れの回復により来店客数が増加し、物産展、手土産品やレストラン需要を中心に食品部門の売上げが好調に推移しました。また、待ち合わせスポットとして名駅の歴史を見守ってきた当社広報部員「ナナちゃん」(巨大マネキン人形)が4月に50歳の誕生日を迎え、これをお祝いした「ナナちゃんバースデーウィーク」を開催しました。ナナちゃんをモチーフにしたオリジナル商品の販売や衣装のデザインコンテスト、地元幼稚園児によるバースデーソングの合唱など、当社ならではの特色を生かした企画・イベントにも取り組みました。
一方、労働環境の改善とコロナ禍後の生活様式の変化への対応として、4月から本店の一部フロアを19時閉店としました。営業時間短縮により、厳しい要員体制の緩和や時間外労働の減少、さらには小売業態の不規則な就業環境の是正に取り組みました。営業面では多客時の販売体制に厚みができ、接客機会ロスの削減・接客サービスの向上を図ることができました。営業時間短縮による相乗効果が出ていることから、引き続き、従業員の働きやすい環境を整備していきたいと考えております。
名鉄百貨店本店は、本年12月に開店70周年を迎えます。昭和29年の開店以来、この歴史を刻めますのは、お客様をはじめ、地域の皆様、取引先ほか多くの関係各位の理解と支援の賜物であることは申すまでもありません。心から感謝申し上げます。
多くのお客様が行き交うターミナルデパートとしての利便性と安心して買い物を楽しんでいただける「名鉄百貨店らしさ」に加えて、あらためて名鉄百貨店の価値とは何か考え、未来を展望する機会にしたいと思います。
百貨店は、お客様の身近にあって日々の暮らしの「幸せ」を感じる窓口です。社会的な役割を果たしながらお客様の期待に応えることができるよう努めてまいります。