2024年11月22日

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三陽商会、暖冬でも高価格コートが好調 汎用性と高品質に支持

「100年コート」は3シーズン着用できるため、売上げに天候の影響が少ない

今年の秋はいつになく暖かい天候が続き、アパレル業界では重衣料の苦戦が目立った。そんな中でも健闘したのが三陽商会のコート専業ブランド「サンヨーコート」、とりわけ高価格帯の商品だ。「100年コート」のハイグレードモデルや、雨でも使えるウールコート「レインウール」などがけん引し、9~11月の売上高は前年比36%のプラス。11月単月では64%増を記録した。いずれも着用シーンや期間を限定しないデザイン、長年に亘り愛用できる点が支持されている。

今秋は夏に続いて気温が高く、日本百貨店協会の発表によると「羽織物やブラウス、カットソーなどの秋物軽衣料に動きが見られた」(9月)、「天候与件からコートが苦戦したものの、ジャケットやカットソーなど軽衣料が好調だった」(10月)と軽衣料が好調な反面、重衣料の動きは鈍かった。しかしサンヨーコートは、100年コートの「100年コート 極KIWAMI」や「100年コート アニバーサリーモデル」の売れ行きが良く、9月と10月の売上高は前年比11%増を記録した。

素材や製造過程にこだわり抜いた「100年コート 極KIWAMI」

100年コートは「世代を超えて永く愛されるコート」を目指すシリーズ。購入客が安心して愛用し続けられるように、メンテナンスやアフターケアを直接行うサービスも提供している。その中でもハイグレードモデルとなる100年コート 極KIWAMI(メンズ23万1000円、ウィメンズ22万円)は、素材選定から些細なディティールまで一切の妥協がない、同社のコートづくりの技術と品質を凝縮した商品である。

表地の原料となる綿花には、上質なオーガニックコットン「アルティメイトピマ」を採用。糸の段階で染色をし、高密度に織り上げることで、美しい光沢の生地に仕上げた。着脱式ライナーにはダウンを装備しており真冬にも使用できる。昨年9月に発売し、「ハイブランドのトレンチコートよりも生地や着心地が素晴らしい」という声が寄せられるなど、その確かな品質が評価されている。

カジュアルにもドレスアップにも使える「100年コート アニバーサリーモデル」

シリーズの10周年を記念し今年10月に発売した、100年コート アニバーサリーモデルは、幅広いシーンで着用できる本格的バルマカーンコート。価格はメンズが19万8000円、ウィメンズが18万7000円。着想の基としたヴィンテージコートのディテールを踏襲しつつ、ドレスアップスタイルとカジュアルスタイルの両方で着用できるコートとして開発した。

23年秋冬コレクションから同ブランドのディレクターに就任した、クリエイティブディレクターの坂田真彦氏と共につくり上げた。デザインは、1960年代にイギリスの騎兵隊が着用していたとされる乗馬用レインコートから受けたインスピレーションを基にした。

雨にも対応できるウールコート「レインウール」から、今秋はリバーコートが初登場

気温が低下し出した11月は加えて、「レインウール」の「ダブルフェイスリバーコート」(24万2000円)などが好調に推移。11月の売上げは前年比64%増と大きく伸長した。レインウールは急な雨にも対応できる耐久撥水のウールコートシリーズで、リバーコートは今シーズンが初登場となる。

素材の表面には、繊維が細く柔らかな質感のオーストラリア・ジーロン地方の子羊の毛を使用。裏面にはニュージーランドの牧場で生育された柔らかく稀少な「ノンミュールジングウール」を採用した。これに高い撥水性を保つ加工を施し、風合いと機能性を両立した。

これらの高価格帯のコートが売れた要因として、サンヨーコートは“長く愛用できる”ことが挙げられる。同ブランドはサンヨーソーイング 青森ファクトリーでのものづくりを主として、日本製にこだわっており、時代に左右されないコートを提案している。

特に100年コートはオン・オフを問わず3シーズン着用できる汎用性の高さがあり、アフターサービスも使えば非常に長期間使用できる。こうした理由から、気温が高かった今秋でも数字を落とさず販売できたようだ。10月に発行した総合カタログ「サンヨー・スタイル・マガジン」特別号や、新聞折り込みといった販促施策も奏功した。

12月15日に発売する「青森ダウン」(メンズ)

本格的な寒さとなる冬のシーズンに向けては、「青森ダウン」を12月15日に発売する。同社は傘と同等の撥水性を持つ「アンブレラコート」を展開しており、それと同じく「シャワーテスト」に合格した、撥水性が極めて高いダウンコート。メンズが19万8000円、ウィメンズが18万7000円。

表地は、通気性と軽さが特徴の「パーテックス シールドエア」を使用。縫製部分から水が染み込まないよう「熱圧着」でダウンを封入する。ダウンには、高級布団に使われている貴重な青森産ダウンを採用した。そのため、高い防水・透湿・保温性能を持っている。デザインはジャケットの上から羽織っても美しい着丈、シルエットを追求した。同時にスポーティな印象もあるため、休日のアクティビティにも気軽に着用できる。

サンヨーコートは常設では6店舗で展開しており、9月~2月末は各百貨店でポップアップを展開している。今年の冬は引き続き暖冬が予想されるが、こうした高付加価値なコートに支えられ、売上げの伸長が見込めそうだ。

(都築いづみ)