2024年11月25日

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東武船橋店、改装した食品売場が好発進 デイリー性や鮮度、コンサル強化

酒の自主編集売場は「銘酒撰」としてリニューアル。ロゴは船橋市在住の書道家・矢野華風さんが書いた

夏から秋にかけてリニューアルを行った、東武百貨店船橋店地下1階の食品売場が快調だ。8月に菓子の自主編集売場「全国銘菓撰」をリニューアルし、9~10月にはスイーツ、ギフト、酒、嗜好品の新エリアを設置。これらの売場の売上げは前年や目標値を超過した。品揃えの拡充や店装の刷新、コンサル機能の強化などが奏功したようだ。

和洋菓子にテコ入れ、「毎日ワクワクする売場」へ

改装したカテゴリーは多岐に亘るが、改装のポイントの1つはデイリー性の強化だ。同店は郊外店という特性上、商圏は都心店と比べれば限られる。客1人当たりの来店頻度をいかに上げるかが重要なカギであり、そのため和洋菓子に着目した。

「全国銘菓撰」は多くの客で賑わっている

全国各地の菓子を揃える自主編集売場「全国銘菓撰」は、8月10日にリニューアル。品揃えを1.5倍の約250SKUに拡大した。以前は毎週木曜日に特定ブランドの限定販売をしていたが、月曜日から日曜日まで毎日日替わり商品を販売するようになった。「店装もきれいに刷新し、お客様が毎日来てワクワクするような売場にした」と執行役員船橋店食品部長の加藤和久氏は説明する。

デイリーで買いやすい洋菓子ブランドも新規導入した

和洋菓子売場では続いて10月4日、新ブランドとして「ねこねこ」(チーズケーキ)、「ヨーグルトフォーシーズンズ」(ヨーグルト)、「バターズ」(クラフトバタースイーツ)、「ハワイアンスイーツカンパニー」(マラサダ)をオープンし、「パステル」(プリン)をリニューアルした。これらのラインナップは若年層を意識。加えてデイリー性を強化するため、「ドーナツやヨーグルトなど、駅から帰るついでに気軽に買えるような商品を揃えた」(加藤氏)。狙い通り、夕方には若い女性の姿が多くみられるという。

既存ブランドも、柱を世界観がより伝えられる装飾に順次改装している

新店導入などの大きな改装は一旦終わったが、これらと並行して既存のショップの柱の装飾を段階的に変更している。今までよりブランドの世界観が出る装いにすることでワクワクする空間を演出し、視認性も高める。各ブランドが順次着手しており、来春までの完成を予定している。

ギフト好適品はコンサルティングセールスを強化

海苔や日本茶ブランドなどを集めたギフト売場

2つ目のポイントが、ギフト好適品の再編だ。海苔や日本茶、佃煮といった商品を購入する客は70代以上が多く、市場は縮小傾向が進んでいる。そのため「魚久」、「銀座新之助 貝新」、「錦松梅」、「山本海苔店」、「飯塚海苔店」、「伊藤園」などのブランドとカタログギフトの「リンベル/ハーモニック」を1カ所に集積。ギフト目的の客が買い物しやすい新ゾーンを形成し、9月14日に開いた。

隣には、オーガニックをコンセプトに加工食品や調味料を提案する「ナチュラルハウス」と、健康をサポートする食品を揃える「ケンコーハイチ」を配置した。こうした商品も健康への関心が高い高齢者層から需要があるため、隣接させている。オープン以降は高齢の客に加えて、子育て中の親なども利用している。

紅茶、コーヒーはアドバイザーを配置し、会話や商品選びを楽しめる

ギフトとしては9月21日に酒売場もリニューアルし、茶の「ルピシア」、コーヒーの「キーコーヒー」も28日に移設オープンした。酒売場は既存の自主編集売場を新たに「銘酒撰」と名付け、品揃えを約2倍となる約150ブランド、約650種類に拡大。船橋の酒販店「酒のはしもと」が協力し、稀少な和酒を取り揃えた。

銘酒撰の隣には酒に合うおつまみのショップが誕生。自主編集売場「銘産品」は、おつまみ用高級缶詰「かんつま」などを揃える「国分 miniROJI」と、おつまみを集めた食のセレクトショップ「北野エース」を展開する。新潟県の海産物の加工品を扱う「新潟加島屋」のショップも新たにオープンした。

銘酒撰、ルピシア、キーコーヒーは専門のアドバイザーを配しており、コンサルティング機能を強化している。これは改装の3つ目のポイントで、「スーパーなどではできない接客サービスを提供する。コロナが落ち着いたこともあり、試飲も絡めてしっかりと商品の価値をお伝えしたい」(加藤氏)。コーヒーや紅茶は一度買うと定期的な再購入が期待できるため、コンサルティングを絡めて顧客化の拠点としたい考えだ。

銘酒撰はイベントスペースも設け、週替わりで酒の蔵元のプロモーションを展開する。接客スタッフは蔵元から派遣してもらい、商品に詳しい人から直接説明を受けられる。蔵元としても消費者と直接コミュニケーションを取り、その内容を商品づくりや販促に生かせるため、ウィンウィンの関係を築けているという。

フロア角地の集客力向上も目的に

地下1階のフロアガイド(同店ホームページより)。右側は船橋駅とつながるため入店客数が多く、逆に左側の集客に課題があった

これらの改装の目的としては、食品フロアの角地の効率化もある。同店はL字型をしており、船橋駅のコンコースに近い直線エリアが1~3番地にあたる。そこから少し離れた角地の4~5番地は、集客力の向上を課題としていた。

ギフトは目的買いの客が多いため、フリー客が入りにくいエリアでも影響を受けにくいメリットがある。また、ギフトゾーン前のエスカレーターは、地上1階の自転車置場やバス停に近い。近隣に住んでいる高齢者にとってアクセスしやすい場所のため、ギフトゾーンを配置した。

こうしてデイリー性や利便性、回遊性など様々な改善を図った改装は好成績で推移している。オープンから10月末までの売上げは、全国銘菓撰が前年比で240%、酒売場が同170%、コーヒー・紅茶が同166%、ギフトゾーンが同102%。いずれも前年を上回った。洋菓子の改装した売場も、目標比で103%とクリアしている。

充実させたコンサルティングセールスも好評で、客からは好意的な声が寄せられている。加藤氏は「私も利き酒の資格を持っているため、酒売場が混んでいる時はお客様の対応をすることがあるが、『良いお酒を選んでもらいました』『おいしかった。また来ます』といった言葉をいただいている」と喜ぶ。

改装は一段落したが、今後も歳時記に合わせたイベントや、地元である船橋市や千葉県にフォーカスした企画、東武鉄道と共同の取り組みなど、様々なイベントで変化を演出する。「当店で楽しい時間を過ごしてもらい、これからも『何かあったら東武に行こう』と思われる立ち位置を担っていきたい」と加藤氏は意気込みを語る。

(都築いづみ)