MARK IS みなとみらいが大改装で食一新とシネコン導入 菊田館長インタビュー
三菱地所プロパティマネジメントが運営・管理する「MARK IS みなとみらい」(以下マークイズ)が、開業10周年を機に最大規模となるリニューアルを進めている。コロナ禍を経てライフスタイルが大きく変わり、立地するみなとみらい地区も開発が進行し新たなフェーズに入り、街が大きく変貌を遂げていくことから、このリニューアルでマークイズは街の魅力を高めていく場所となり、「みなとみらいらしい心地いいSC」に挑戦している。三菱地所プロパティマネジメントMARK IS みなとみらい館長の菊田徳昭氏に開業10周年改装への取り組みや、みなとみらいにおけるSCの役割などを聞いた。
──ランドマークタワー(ランドマークプラザ)が開業30周年、マークイズが開業10周年を迎え、両施設で数々の周年イベントが展開されていますね。
菊田 30周年の横浜ランドマークタワー(ランドマークプラザ)と私どもマークイズが連携してアニバーサリー関連イベントを1年がかりで展開しています。初めにアニバーサリー限定ロゴを作成し、ランドマークタワーとマークイズとが合同の周年限定アニバーサリーサイトを立ち上げ、施設側からだけでなく、テナント本社・店舗スタッフ、協力会社スタッフと共に感謝の気持ちを発信しています。
アニバーサリーイヤーイベントは3月にスタートを切り、すでに数多くのイベントを開催してきました。日本で初開催となった「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」(パシフィコ横浜)に合わせ、ランドマークタワー、マークイズ、スカイビルで「ポケモンカード アートウォーク」を開催して、みなとみらいの魅力を発信しました。マークイズとしては、10周年を記念してギネス世界記録にチャレンジしました。お客様、地域の皆さん、施設スタッフの方々に協力いただき、回収した2万8808個のペットボトルキャップで“ありがとうをみらいへつなぐマークイズ10周年”という文字を完成させ、6月24日ギネス世界記録を達成。ランドマークプラザでもギネス世界記録に挑戦し、3万2342本のペットボトルで127.175㎡の世界最大サイズのモザイクアートをつくり、7月15日ギネス世界記録として認定されました。
マークイズとしてはほかに、横浜市出身で機動戦士ガンダムのアムロ・レイや名探偵コナンの安室透などの声優を務める古谷徹さんのオリジナル館内ナレーション、横浜DeNAベイスターズの勝利を祈願した「みなとみらい勝利神社」の建立(マークイズ1階)、マークイズに10年間勤務されているスタッフ(46名)を対象にした「永年勤続表彰」などを実施。今秋から今冬にかけても、みなとみらいの各施設と連携した全長約1.5kmの横浜最大級のまちづくり型イルミネーションや、100周年を迎えたワーナー・ブラザースとコラボしたクリスマスなどのイベントを開催していきます。
──事業着工から40周年となる「みなとみらい21地区」は22年の来街者数が6680万人(コロナ前の19年は約8340万人)、就業者数が約13万1000人、事業所数が約1890社の街になりました。この街に誕生して10年となるマークイズの成長度合いをどう捉えていますか。
菊田 2013年6月21日に開業して、14年度に244億円だった売上げを毎年着実に伸ばし、開業5周年リニューアル後の18年度には259億円を突破し、過去最高売上げを更新。コロナ禍になる直前の1年間(19年2月~20年1月)は263億円超に到達しました。20年度にはコロナ禍の影響で大きく落ち込んだものの、21年度から回復を辿り、開業10周年の22年度は改装工事で3フロア、営業面積にして20%近くの閉鎖があっても229億円まで戻しました。23年度も工事は続きますが、リニューアル完了後の24年度はその効果が加わることでコロナ前までの売上げ回復を目指しています。
私どもマークイズがこれだけの力を付けることができたのは、まず開業して10年の間にいくつもの強みができ、近隣住民から観光客まで年間1400万人以上(18年度来館者数1447万6000人)の幅広いお客様が来館されるようになったことです。マークイズはみなとみらい地区で最大規模の商業施設(店舗面積約4万3000㎡)で、駅に直結していながら併設駐車場(約900台)と提携駐車場合わせて2000台以上の駐車能力を完備しております。施設(館内)に関しては、ボリュームゾーンの顧客に支持され、神奈川県最大級の「ユニクロ」から「フードウェイ」を核とした食品フロア、家電量販店の「ノジマ」、大型スポーツ店の「スポーツオーソリティ」、玩具の「トイザらス」、エリア最大級のフードコート「みんなのフードコート」まで、ワンストップで買い回りできる大型テナントがSC売上げの支えになっています。
加えて、開業時から出店している「RHC ロンハーマン」「ビショップ」「ジャーナルスタンダードレリューム」「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」、5周年リニューアルで導入した「ビームス」「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」などの高感度のライフスタイル・セレクトショップと、「ザ・ノース・フェイス」「アークテリクス」「ヘリーハンセン」「コロンビア」「キーン」「スノーピーク」といった高機能でタウンユースにも強いアウトドアテナントなどをフルラインでしっかりと展開できる面積を充て、駅ビルやRSCと違ってゆっくり買い物ができる環境を整えています。
地域などとの連携も強みといえます。横浜ランドマークタワーや横浜美術館との連携に、三菱地所とぴあが合弁会社を設立したことで、みなとみらいにある最大1万2000人を収容できる「ぴあアリーナMM」が新たに連携枠に加わったことから、ライブに来られた方がマークイズとランドマークタワーにも来館していただけるように音楽イベントによる連携活動を始めています。
環境面では、館内の各所に30カ所以上のゆったりとしたシーティングスペースを、3階には無料のプレイゾーンも併設されたママのコミュニケーションスペース「キッズルーム おやこの森」を設けています。5階屋上にある約1000㎡の果樹園・菜園「みんなの庭」は、野菜や緑地を活用した自然体験イベントを年間100回以上開催し、マークイズならではの施設となっています。
──今年2月に始まったリニューアルが進行中です。開業されて1回目のリニューアルが5周年でしたが、2回目となる今回の10周年リニューアルの狙いと進捗の状況は。
菊田 10周年リニューアルの狙いとしては、コロナによってライフスタイルが様変わりし、横浜駅地区などの周辺環境を含めてみなとみらいの街自体も変化を遂げていくことを踏まえ、“みなとみらいらしいSC”になるにはどうするかを主眼としました。5周年リモデルが高感度なライフスタイルショップ・セレクトショップ、アウトドアショップの導入に注力したのに対し、今回は地下1階の食品フロアと5、6階に立ち上げる12スクリーンのシネマコンプレックスを目玉としています。
食品フロアについては、今年1月から地下1階を全面閉鎖して約5カ月をかけ改装工事を進め、6月21日に「新・まいにちマルシェ」をオープンしました。フロア中央部にスーパーの「フードウェイ」を誘致し、生鮮三品を含むスーパーの売場面積を1.9倍に拡大しました。デイリーを中心に食品強化に踏み切ったのは、約25万人の「みなとみらいポイント」会員が持つパワーです。同会員は高頻度で来館され、その売上げ比率が45%を超えるまでになっています。これに囲い込みができているみなとみらいの就業者13万人が加わります。あとは土・日・祝日に来られている来街者。土・日・祝日の来街者数は平日に比べて2.2倍も多いとはいえ、なかなか食品フロアに立ち寄っていただけなかった。みなとみらいの就業者にも、土・日・祝日に広域から来館されるお客様にも立ち寄っていただける食品フロアとして具現化したのが、新・まいにちマルシェです。
完全閉鎖して22年5月から工事が続いている5、6階には、横浜初出店となるユナイテッド・シネマがオープンし改装の掉尾を飾ります。シネコンの導入に関しては、映画鑑賞には性別がなく年代の幅も広く、天候や季節に左右されにくく、シネコンがすでにライフスタイルの1つとして浸透している上、来館者が映画鑑賞の前後に施設内で食事やお買い物をされるケースが多いといった理由からSC全体へのシナジー効果が大きいと判断し、誘致を決めました。12スクリーンで構成される大型シネコンになるので、子供から大人向け、ニッチの作品まで幅広いコンテンツの上映が可能です。当SCがみなとみらい駅直結であるのに加えて、首都高速からもみなとみらいランプを降りて近く、提携駐車場含め2000台以上のスペースを併設していることからも、大きな期待が持てます。
──シネコンがオープンする来春までに35店舗以上を入れ替えるそうですが、話題の新店舗登場などはありますか。
菊田 今秋までにオープンした店舗の中では、石川遼選手が着用しているゴルフウエアの「トラヴィスマシュー」が日本のSC1号店で登場、「ブリーフィング」は20坪から60坪に売場面積を3倍に拡大しゴルフをフルラインで展開、「デサント」は売場面積を2倍にしてゴルフも含めたフルラインを展開し、若者を中心に需要が高まっているゴルフを強化しています。加えて、世界のキックボードブランド「マイクロスクーター」は直営日本2号店、アメリカ4大スポーツ公認のキャップブランド「フォーティーセブン」も日本2号店、ランニングシューズブランド「HOKA」は11月10日に常設日本1号店をオープンします。
──これからのみなとみらい21の街の可能性をどのように捉えていますか。
菊田 みなとみらいエリアには国内最大級のコンベンションセンターであるパシフィコ横浜からヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル、ウェスティンホテル横浜、ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜などに代表されるラグジュアリーからハイクラス、エコノミーまでのホテルが集積されているほか、カップヌードルミュージアム横浜、横浜アンパンマンこどもミュージアム、よこはまコスモワールド、さらに神奈川大学みなとみらいキャンパス、村田製作所の研究開発拠点などもある。21年4月からは都市型ロープウェイのYOKOHAMA AIR CABINで街中を空中散歩できるようになり、今年9月にはヒルトン横浜と約2万人を収容できる音楽アリーナ(Kアリーナ横浜)が開業。26年3月竣工予定でフォーシーズンズホテルが運営するラグジュアリーホテルや水族館が入る施設も計画されており、街の魅力がさらに高まっていきます。
ウォーターフロントでありながら都心にも近い、ここみなとみらいエリアは、観光・エンターテインメントを軸に国内外から訪れたくなる街であり、日本国内でもここだけしかない街へと進化していき、ポテンシャルも一段と高まるのではないでしょうか。そのみなとみらいが着工して40年が経ち、街区開発が96%に達したことから、これまでの「街づくり(開発)」から「街育て(運営)」のフェーズに移行することになります。
──マークイズとしては街のこれからにどう対応していきますか。
菊田 今回の10周年大規模リニューアルのコンセプトを「なんか心地いいSC」としたのは、街の魅力を高めるために必要な場所になること、目的がなくても立ち寄りたくなる施設を目指すことを表しています。すなわち、これからのマークイズは駅直結でありながら駅ビルでも郊外のRSCでもない、この街に必要とされ、みなとみらいの街の中心を担っていけるSCとなることです。
(聞き手:塚井明彦)