「マーサ21、持続可能なSCづくりに挑戦」カワボウ 武藤営業本部営業部長に聞く
カワボウが運営する「マーサ21ショッピングセンター」(以下、マーサ21SC)は昨年10月27日、3年掛かりの大規模な改装を経てグランドオープンした。2019年より第4期リニューアルプロジェクトをスタート。広場や駐車場、フードコートなどの環境施設面から、約120店舗からなるショップ群まで館内外を一新した。そこで第4期のリニューアルプロジェクトの狙いと特徴などを、カワボウ取締役SC営業本部営業部長の武藤治彦氏に聞いた。
——今年「カワボウ」が創業80周年、「マーサ21SC」が開業35周年を迎えるそうですが。
武藤 おかげさまで弊社は本年で1943年の創業から数え80周年を迎えます。マーサ21SCは開業35周年の節目の年になります。戦前(1945年)国鉄岐阜駅近くにあった川島繊維工業所の工場が空襲によって焼失し、現在のマーサ21SCの場所へ移転し、53年に生産開始となりました。その正木工場は、その後紡績工場が場所を移転し、その跡地にマーサ21SCが88年11月に開業して現在に至っています。
——工場跡地に開業したマーサ21SCは増築を重ね、現在の規模は延床面積約11万2000㎡、店舗面積約4万8000㎡となり、大きなスケールを持つSCになっています。
武藤 開業時のマーサ21SCは、6万7000㎡の敷地面積にジャスコ(現イオン岐阜店)と99の専門店からなる店舗面積2万3333㎡のショッピングセンターとして第1期オープンしました。当時は、中部地区では最大級のSCとして開業しました。当時の柳ヶ瀬・岐阜駅エリアには、百貨店の岐阜髙島屋、京都近鉄百貨店岐阜店、新岐阜百貨店、ファッションビルでは岐阜パルコ、岐阜センサなどの大型商業施設が中心部に集積していた中で、マーサ21SCは郊外型施設として誕生し、売上げが地域ナンバーワンになったと聞いています。
——ここは岐阜市中心部から4km程離れているそうですが、どういう立地環境にあるのですか。
武藤 長良川北部に位置し、車で20分圏内に約32万人、約13万5000世帯という人口密度の高い県内随一の肥沃なマーケットが形成されています。ここは川島紡績の工場があった場所で、その工場では最盛期には3000人もの工員の方が働いておられました。紡績工場の周りには、従業員の方達の住まいがどんどんでき、街が形成されていきます。役割を終えた工場はマーサ21SCへ受け継がれ、ここで早35年を迎えるのです。
開業当時のお客様が今では、お子様、お孫様と3世代に亘ってマーサ21SCをご利用されています。もう1つの特徴は、周りに幼稚園・保育園・小学校・中学校・高校・大学などが多く散在している文教地区であること。当施設には書籍だけでなく、文具から雑貨、コミックまである県下最大級の書籍売場「丸善岐阜店」があります。学生参考書や各種専門書を含めた75万冊の蔵書数や、約1万5000点の文具アイテム数といった県下最大級のスケールが学生を中心とした地域需要に支えられ、依然好調を続けているのも文教地区にあることが大きな強みになっています。
——今回の第4期リニューアルの狙いと特徴は何ですか。
武藤 「持続可能な商業施設づくり」がマーサ21SCの開発テーマです。マーサ21SCが88年の開業を第1期とし、95年の「北館」増床が第2期、08年の「東館」を増築した第3期、昨年に実施した第4期リニューアルで3回大改装しました。3期までのリニューアルは、北館や東館を増設して床面積を増床してスケールアップするリニューアルだったのに対し、第4期は面積を縮小するリニューアルとなりました。これも持続可能な商業施設づくりを見据え、地域の需要にお応えするためにどのような施設、MDとするかについて私達が出した答えです。
——郊外SCにとって駐車場は集客の要となるようですが、マーサ21SCの場合、駐車場の拡大に充てたということは収容能力に余裕がなくなってきたということですか。
武藤 駐車場台数にまだ余裕があり大きな問題があるとは考えていませんが、使いやすさなど環境面に課題がありました。35年を経て車環境が大きく変遷したこと、増築を繰り返したことで導線など使いにくくなっていることを改善するために、第4期で大きな投資をしました。主に南西平面駐車場を180台増設し、大型車の利便性向上、施設内の混雑緩和、施設近郊の渋滞緩和対策として車入出口の改修、駐車場管理システムの導入により、車客が施設駐車場の混雑状況をホームページで確認して、空きスペースに駐車できるようにしました。
また、南西平面駐車場については、イベントなどが開催可能なように施工したことで22年夏には15年ぶりに「盆祭り大会」を開催し、4万人の皆様に楽しんでいただきました。使いやすさ・停めやすさを優先し、駐輪場についても大幅にスペース広げ、来店ストレスの解消に取り組んでいます。
——リニューアルで広場やイベントステージ、駐車場などの施設も変わりましたが、大型店・小型店合わせて店舗も随分入れ替わりましたね。
武藤 今回の第4期は「持続可能なSC」を開発テーマに、「ずっと、こころ動く、出会い」をストアコンセプトにした3年掛かりの一大プロジェクトです。コロナ禍を経て地域のニーズも変化しており、市場調査をもとにお店揃えを進めました。特に力を入れたのは開業以来マーサ21SCのMD方針としている「食の強化」。中でも核店舗のイオン岐阜店が開業以来最大規模の改装で食を充実し、専門店街では、「成城石井」などの5店舗が新たに加わり、既存店では、「寿司処じんごろう」などを改装・増床するなどで食の専門店街「マルシェ」を増強しました。同じ1階にある「フードコート」は1.5倍増床して630席の規模にパワーアップしています。大型店は「ヤマダデンキテックランド」と「ホームセンターコーナン」が新規に加わり、「丸善」、「イオン」、「トイザらス・ベビーザらス」、「スポーツオーソリティ」などが改装しています。専門店も大幅に入れ替えし、23年4月でリニューアルがファイナルとなってこのプロジェクトも一区切りとなりました。
——新型コロナウイルス禍での改装となったようですが、コロナによる影響は。
武藤 生活様式や消費構造が変わり、マーサ21SCにとってもコロナの影響はとても大きかった。まだ今も影響が続いています。コロナ禍で一番影響があったのは、店舗の閉店を余儀なくされ営業ストップを掛けざるを得なかったこと。商業施設は働く人、来館者の安心安全が第1であるからして、営業できないことはとても大きな影響がありました。また、コロナ禍のリニューアルだったためリーシングにも影響しました。それでも当初計画通りグランドオープンすることができたことは、本当に感無量です。
——改装効果についてはどうですか。
武藤 22年春のオープン後、改装効果が確実に表れ、現在も来館者数、売上げとも2桁増と計画を上回っています。改装効果が持続しにくい中でこの改装に関わっていただいた全ての皆様のお力の賜物だと感謝しております。23年は全館売上高180億円を計画しており、この勢いを持続できるように持続可能なSCづくりへの取り組みを続けていきます。
(聞き手:塚井明彦)