森ビルと六本木ヒルズ自治会、4年ぶりに震災訓練
森ビルと六本木ヒルズ自治会は3月10日、「六本木ヒルズ震災訓練」を共催した。六本木ヒルズが開業した2003年以降、毎年実施してきたが、新型コロナウイルス感染症の影響で20~22年は中止。4年ぶり、17回目の開催となった。六本木ヒルズアリーナを会場に、同施設の住民やオフィスワーカー、店舗従業員をはじめとする同自治会の構成員、近隣住民など約600人が参加。消火器での消火活動、心肺蘇生のためのAED操作、起震車が引き起こす震度7の揺れ体験や煙体験、座った状態で揺れを体感できる「地震ザブトン」など、災害時の初動期に必要となる活動を体験した。
今回の震災訓練について、森ビル災害対策室事務局事務局長の細田隆氏は「オフィス、店舗、住宅に入居する自治会員の皆様と共にまさに“街ぐるみ”で震災訓練を4年ぶりに実施できた。本日の体験を伴う訓練を通じ、防災知識の習得、自助の技能を確認したことにより、共助の意識向上を図れたと感じている。当社は引き続きコミュニティの一員として、防災に対する取り組みを深めることで、地域の継続的な発展に寄与していく。いつ起きるとも知れない災害に対して引き続き備えを進めていく」とコメントした。
同自治会副会長で安全安心活動部に所属する福井克己氏は「本日開催した震災訓練は年に1度、事務所、店舗、住宅に入居する自治会員が一堂に会して訓練を行い、街ぐるみで防災について考え、自ら行動に移せる能力を身に付けられる貴重な機会。自ら安全を確保できて初めて、他人を助けることができる」と、震災訓練の意義を語った。
さらに「東日本大震災の際、六本木ヒルズは幸いにも大きな影響はなく、被害は家具の転倒などのレベルで済んだが、自治会メンバーで話している中で意識の変化があった。以前から特に『共助』を高めていかなければならないという意識はあったが、震災をきっかけに、夜間など不測の事態も想定されるため、管理会社である森ビルだけに任せておいていい話ではない。六本木ヒルズ自治会としても、きちんと想定して有事に備えるという意識がさらに強くなった。ハード面、ソフト面ともに地震に強い街づくりをしている六本木ヒルズであるからこそ、そこを活動の場としている我々も、より『自助』や『共助』の意識を高く持たなければならないと実感した」(福井副会長)と話した。
六本木ヒルズ自治会は04年5月に設立。会員数は1050件に上る。会員相互の親睦を図るとともに、区域内の文化的で国際性豊かな環境を維持発展させ、世界中の人々との交流を通じて社会に貢献することを目的に、「安全・安心活動」、「コミュニティ活動」、「地域貢献活動」の3つを柱に位置付ける。その中でも自助・共助・公助を実現する、安全・安心な街づくりを自治会最大の目的として、震災時はもちろん、通常の生活においても助け合える街を目指して近隣町会とも連携を図っている。
コミュニティ活動では年間を通じて様々な活動を展開。六本木ヒルズの夏の風物詩となっている「盆踊り」をはじめ、「春祭り」、「秋の集い」、「新年会」などが代表的で、これらを通して形成されたネットワークは緊急時にも役立つ大切な絆になっているという。
地域貢献活動では「六本木エリアを活性化しよう」をテーマに、六本木ヒルズを含めた六本木・麻布エリアに領域を広げ、周辺の商店街や町会、各団体ともコミュニケーションを取りながら、「六本木クリーンアップ」(六本木界隈の清掃活動)や「リユース活動」、「六本木アートナイト」などを行っている。
同自治会会長の近藤剛司氏は「『安全・安心活動』、『コミュニティ活動』、『地域貢献活動』の3つの柱が密に連携することで、六本木ヒルズ自治会は機能している。イベントや親睦会などを通じて、自治会員同士が気軽に交流し、お互いを認識し、常にコミュニケーションがとれる関係になることで、平時でも災害時でも助け合える、『共助』のできる安全安心な街になると考えている」と述べた。
同自治会ではコロナ禍で20年春以降、自治会員の安全・安心を最優先し、従来のような活動を控えてきた。しかしその間も、「Zoom」での勉強会、夏の集い、新年会、異文化交流、震災に対する備え説明会など、オンラインで継続してきた。
コロナ禍でもコミュニティ活動を止めずにチャレンジしている理由として、近藤会長は「いざという時に互いに助けあえる自治会員のつながりを強く持ち続けるため。これらの活動の継続なくして、緊急時の行動はきちんとできないと考えている」と、強い意欲をみせた。
(塚井明彦)