SC、開業以来最大規模の改装相次ぐ
今春も大型SCのリニューアルオープンが続いている。定借の満了や開業10、15、20周年といった節目を機に、開業以来最大規模の改装に踏み切ったSCも目立つ。新業態や地域初、地域最大規模の店舗を誘致するだけでなく、フードコート、飲食街、食物販の拡充、あるいは屋内外の広場を整備して遊べて交流できる場を強化するなどの特徴がある。
周年を機にリニューアルを敢行したのが、三菱地所の「丸ビル」(20周年)や「新丸ビル」(15周年)、南海電気鉄道の「なんばパークス」(15周年)、「グランフロント大阪ショップ&レストラン」(10周年)などで、今年5月に開業20周年を迎える東京ドームのエンターテインメント融合商業施設「LaQua(ラクーア)」は、同3~5月にかけて過去最大規模の改装に踏み切る。2015年5月に開業した「東京ソラマチ」は開業10周年を契機にイーストヤード5階のフロアを全面改装して新しい体験型遊び場を立ち上げる計画だ。
開業以来となる大規模改装を実施したのは「コレットマーレ」や「カトレヤプラザ伊勢佐木」。10年3月に開業したコレットマーレは20年から段階的に改装を進め、今年2月3日にグランドオープンした。12年2月にオープンしたカトレヤプラザ伊勢佐木は、開業後初の大規模改装が同4月28日にグランドオープン。07年に9月に開いた南千葉エリア最大級のSC「ユニモちはら台」は、開業以来最大となる改装で店舗総面積の30%を超えるテナントを入れ替える。16年10月に開業した「三井ショッピングパークららぽーと湘南平塚」は、開業後初のリニューアルで新規・改装を合わせて20店舗が3月17日から順次オープンする。
SCが改装の軸に据えて強化・拡充しているのが、遊びや交流の場となる「広場」と、フードコートや食物販店集積による「食」だ。この流れは数年来続く。特に広場は集客源として重要性を増している。市と連携協定を結ぶなど、行政や地域との連携を強めて広場を活用したイベント活動も本格化。今春も広場に関連する改装が多い。
「東京スカイツリータウン」には、高さ634mの「東京スカイツリー」、イーストヤード12 ~29階にオフィス施設の「東京スカイツリーイーストタワー」があり、商業施設の東京ソラマチはすみだ水族館、郵政博物館、プラネタリウムなどを擁する。そしてイーストヤード5階ヤードに17日、「みんなの遊び場 ソラフルパーク」が登場する。
ソラフルパークは、屋内にいながら屋外気分を味わえる空間で、子供から年配まで多世代がいつでも集まれる。屋内に公園をつくり、懐かしい遊びと最先端の技術を駆使した遊びを掛け合わせた、今までにない遊び場だ。「ベビー」、「キッズ」、「ゲット」(=クレームゲームゾーン)の3ガーデンからなる「ちきゅうのにわ」をはじめ、展示イベントから大規模会議まで幅広い用途で使用可能な「スペース634」、AR(拡張現実)技術を使い、子供の頃に憧れた夢の世界を実現させる遊戯施設「HADO ARENA」、キャンピングカーのモデルルームや最新アウトドアグッズを展示したショールーム「Lots YTB」など、9つのコンテンツからなる。
「東急プラザ表参道原宿」が5階に誕生させる「LOCUL」は、新しい商業施設の形として構築する。ショップやスモールオフィス、ラウンジ、カフェなどがシームレスにつながった開放的な空間、イベント・ポップアップスペースなどで構成。さらにはフレキシブルに出店できるような仕組み、出店者同士や利用者とのコミュニケーションの場を提供し、多様なヒト・モノ・コトが自然と集い、つながり、新たな文化や価値を生み出し、発信する場となる。
「ノースポート・モール」が3月10日、地域の交流やつながりを育む新たなコミュニティスペースとして地下1階共用部にオープンしたのが「のすぽぱーく」。同時に3階にある「のすぽひろば」を拡張した。約237㎡の広さを持つのすぽぱーくは、公園のように開かれたコミュニティスペース。地域貢献に資するギャザリング活動を通じ、新たな体験や交流の場として役立てる。
のすぽひろばは、地域の子育てママを応援する広場(0~5歳の幼児向けの無料遊び場)として、パネル遊具やクッション型遊具、ママのための見守りベンチを追加。子供と安全・安心に楽しく過ごせるようにする。子育て相談や絵本の読み聞かせなど、ギャザリング活動も展開する。
そのほか、岐阜市の「マーサ21」は19年から改装を手掛けており、ゴールデンウィークに完成を迎える。一連の改装で、開業当時からある屋外広場「チェリーガーデン」に新たに芝生や滑り台、木製の汽車、丘の中のトンネルなどを設置。家族や友達などと集う、地域交流を図る場として復活させた。さらに南館1階にあったイベントスペース「マーサスクエア」を北館1階に移設。約1500人収容できる規模とし、会場のシンボルとして大迫力の200インチモニター・ディスプレイビジョンを登場させた。
食については、フードコートと食物販の拡充が改装のメイン。フードコートは、収容席数と店舗数を増やし、キッズも含めてファミリーで楽しめるようにする。食物販は、食品スーパーに近接して店舗を大集積。食による集客力と回遊性を高める。レストランゾーンを拡大するSCも少なくない。フードコート、フードホール、レストラン街などを持つSCにとっても新型コロナウイルスの感染拡大が続いた3年間に受けた影響は大きく、今春の改装では変化した食の生活様式への対策も講じられている。
食の集積ゾーンを新たに新設するのが「ラクーア」と「PARCO_ya上野」。ラクーア1階に誕生する「フードゾーン」は、持ち帰れる惣菜、スイーツやパンなど、日常使いから特別な日に彩りを添える食品までを揃える。谷根千エリアにゆかりのある国産食肉専門店の「千駄木腰塚」、注文ごとに生豆から焙煎する「YANAKA COFFEE」など約25店舗が配置される。
PARCO_ya上野は、松坂屋上野店が営業していた上野フロンティアタワー地下1階を増床・改装して「遊食回廊」をオープンする。「安心・安全の『食』」をテーマとして、松坂屋上野店と親和性の高い、上野御徒町エリア初出店となる7店舗が登場。松坂屋上野店の食品売場と遊食回廊を合わせると、エリア最大級の食集積ゾーンが誕生する。
丸ビルの開業20周年リニューアルの目玉は地下1階フードゾーンの「マルチカ」、新丸ビルの開業15周年リニューアルの目玉は7階飲食店ゾーンの「丸の内ハウス」だ。マルチカは、エリアの就業者のランチ需要のみならず、素材や製法にこだわる逸品や各地の名店、新業態のスイーツなどをバラエティ豊かにラインナップ。ゾーンの中央には時間帯によって楽しみ方が変わるスペースが設けられる。
丸の内ハウスは、パーゴラ席や灯りを囲むソファ席で落ち着いて語り合える空間や、大きな木を囲むバーカウンター、絶景を眺めながらワイワイと楽しめる東京駅舎側空間、記憶に残るビビッドなトイレなどが登場。話題性のある飲食店フロアが完成しそうだ。
KUZUHA MALLは、今春の改装で食物販を含めたフードコートの「フードマルシェ」、今秋の改装でレストラン街の「ダイニングストリート」を再構築する。ミドリノモール1階のフードコートは、周辺の食物販エリアと合わせてフードマルシェを形成。フードコートの周辺にこれまでの1.5倍となる全18店舗(予定)が出て、エリア全体をマルシェのイメージに一新する。フードコートでもテイクアウトの商品を取り扱い、外食・中食・内食と365日使いやすくする。
路面店の感覚で食事を楽しめるオープンモール型のダイニングストリートは、屋外に面したレストランの特徴を生かし、植栽やテラス席の設置を含めたリニューアルによって、緑あふれる癒しの空間に生まれ変わる。
マーサ21がリニューアルで講じた食の強化策は、フードコートの増床と食物販店の集積拡大。フードコートを増床して客席を400席から600席に、3つの新店を加え計10店舗とした。食事後にチェリーガーデンにアクセスできるエントランスも新設。食物販については、岐阜県内で初の郊外商業施設への出店となる「成城石井」が加わり、「カルディーコーヒー」が岐阜県下で最大店舗に増床するなど、1階のイオン、食の専門店「マーサマルシェ」を中心とした食品エリアは地域ナンバーワンの食の集積となる。
「ららぽーと湘南平塚」が開業以来初となる今春の改装で目指したのは、フードコートと屋外にある子供の遊び場のパワーアップだ。フードコート「湘南Food Hall」は、子連れの客がより滞在しやすく、使いやすい空間とするためにファミリーエリアを拡大。従来からある小上がり席やキッズ席付近にボックスシートを設置するほか、小上がり席からキッズエリアへ直接行き来できるように動線を変更し、フードコート内に完全個室のベビーケアルームを設置してフードコート内でも授乳やおむつ替えを可能にする。
「ららぽーとTOKYO-BAY」のフードコート「ハーバーダイニング」は、北館の建て替えによる一時閉館に伴い、3月2日に西館1階に移設・リニューアルオープンした。席数は全670席になり、店舗数も新業態や関東初出店が加わり11店舗となった。
(塚井明彦)