森ビル辻社長、今秋開業する「虎ノ門ヒルズ」を語る(上)
森ビルは1月24日、今秋に開業を控える「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」(以下ステーションタワー)の記者説明会を開いた。ここでは「虎ノ門ヒルズ」の4棟目としてオープンする『ステーションタワーの計画概要と虎ノ門ヒルズの街づくりについて』を説明した森ビル代表取締役社長・辻慎吾氏のスピーチを取り上げる(一部省略あり)。
2014年の「虎ノ門ヒルズ 森タワー」(以下森タワー)を起点に、20年の「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」(以下ビジネスタワー)、22年の「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」(以下レジデンシャルタワー)の竣工に続き、本年ステーションタワーがオープンの運びとなり、都市再開発として異例のスピードで拡大・進化を遂げてきた虎ノ門ヒルズがいよいよ1つの街として完成します。
私たちが掲げた“グローバルビジネスセンター”というビジョンを体験する街。世界水準の多様な都市機能によってグローバルプレイヤーを惹きつけ、東京の磁力を高める街となる新しい東京が虎ノ門ヒルズから始まります。その新たな核となる、地上49階・地下4階、高さ約266メートルのステーションタワーが完成すると、4つの再開発プロジェクトそれぞれが地下で虎ノ門ヒルズ駅と直結し、地上2階部分はデッキでつながります。そしてステーションタワーは虎ノ門ヒルズの人流や活動を活性化させ、グローバルビジネスセンターの心臓部として機能することになります。
ステーションタワーの完成によって虎ノ門ヒルズ全体の区域面積は約7.5ヘクタール、延床面積約80万㎡に拡大し、「六本木ヒルズ」に匹敵する規模となり、オフィス・住宅・ホテル・商業施設・情報発信拠点を中心とする多機能複合都市が誕生します。
世界水準のオフィスは街全体で約30万5000㎡、就業者数約3万人の規模になります。ビジネスタワーにある大規模インキュベーションセンターの「ARCH」には大企業の新規事業、スタートアップの創出を目指してすでに118社が在籍。ARCHに加えボストン発のイノベーションセンター「CIC Tokyo」が都内最大規模となる250社の拠点となり、新しいビジネスを生むための仕掛けができました。
住宅はレジデンシャルタワーを中心に、グローバル水準のレジデンス約730戸の大規模供給。世界の主要都市にあって東京にはなかった最高レベルの住宅マーケットを開拓します。ホテルは森タワーに入るライフスタイルホテルの「アンダーズ東京」に続いて、ステーションタワーに新ホテル アンバウンド コレクション by Hyatt「ホテル虎ノ門ヒルズ」が加わり、全体で約370室となります。カンファレンス「虎ノ門ヒルズフォーラム」に加え、新たな情報発信の拠点も生まれます。商業施設も大幅充実になり、虎ノ門ヒルズ全体で約2万6000㎡、約260店舗を集積します。
虎ノ門ヒルズ新駅やBRT(高速バス輸送システム)ターミナルといった交通インフラと一体となることで、この街に新たな人の賑わいが生まれます。1つの街、ヒルズにこれだけの都市機能がコンパクトに複合する虎ノ門ヒルズは、真のグローバルビジネスセンターと呼ぶにふさわしい都市となります。これを14年に竣工した森タワーからわずか9年の歳月で実現することができました。虎ノ門ヒルズの総てのプロジェクトは、多くの権利者と合同で進めてきた再開発事業。だからこそ都心のど真ん中でこれほどの街をつくることができたのです。再開発事業は時間がかかると言われますが、虎ノ門ヒルズは異例のスピードで実現。まさに都市再生のモデルと言えるでしょう。このような都市づくりをできるのが森ビルの強みと言えます。
段階的に進化してきた虎ノ門ヒルズの拡張と都市の骨格をつくり、そこにグローバルビジネスセンターとしての総合的な都市機能を整備しうる進化を遂げました。これほどのスピードとスケールをもって都市をつくり上げることができたのは、私たちにビジョンと実行力があるからです。私たちが目指したグローバルビジネスセンターとは、多様なビジネスが集積し、グローバルプレイヤーが集まり、そこから新しいアイデアや価値が発信される国際新都心です。
虎ノ門は東京の中心に位置し、霞が関にも近い。大使館や文化施設も集積している。森ビルにとって虎ノ門は創業の地であり、このエリアのポテンシャルを誰よりも知っているからこそできることです。私たちはグローバルビジネスセンター、虎ノ門ヒルズの未来を構想し、その実現に必要な機能を整備してきました。そして、そのビジョンをかたちにするためには森ビルならではの実行力が不可欠でした。
虎ノ門ヒルズプロジェクトでの最大の特徴といえるのは、単なるビルの建て替えでなく、かつてない大規模な都市インフラと一体となって再開発を実現したことにあります。その1つが環状2号線の全面開通。マッカーサー道路(新橋から虎ノ門の区間)と呼ばれてきたこの道路は、戦後68年間に亘って整備が進まず難航していました。それをビルの地下に道路を通す画期的手法「立体道路制度」で難題をクリアし、環状2号線が全面開通となりました。これにより羽田と都心をダイレクトに結ぶ大動脈が実現し、虎ノ門ヒルズから羽田空港へのアクセスが18分になり、東京の都市力強化に貢献できたと思われます。
道路と街の一体開発は東京との官民連携による都市再生のモデル事業となるもので、日比谷線の新駅・虎ノ門ヒルズ駅の開業も都市とインフラの一体開発によって初めて可能になった。グローバルビジネスセンターとしてエリアへの来訪者が格段に増える見込みの中で、これを見据えた公共交通輸送機関の整備が必至でした。そこで東京メトロ、国、東京都と協議しながら進め、虎ノ門ヒルズ駅という新駅をつくる難事業に対しても、開発事業と一体となることでわずか10年のスピードで実現でき、日比谷線にとっては56年ぶりの新駅誕生となりました。
ステーションタワーと共に完成する大規模な歩行者デッキもそうです。歩行者デッキは幹線道路である桜田通り上に森タワーのオーバル広場にも接続される幅員20メートルのデッキを整備するもので、このデッキによって街を分断することなく、歩車分離された安全・安心な街づくりを実現できることになります。
一体開発によって全面開通した環状2号線、駅との一体開発によって開業した虎ノ門ヒルズ駅、大規模歩行者デッキの整備を可能にしたのは、私たち森ビルが持つ強いビジョンと実行力があるからこそ、様々なプレイヤーを巻き込み、同じ方向を向いて進むことを可能にしたと自負しています。世界一流の建築家、デザイナーたちがこのプロジェクトに参加してくれたこともそうです。彼らが協働しながら異なる個性を1つにまとめあげることで、一体感のある街を実現できると思っています。
【虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業の概要】
施行者:虎ノ門一・二丁目地区市街地再開発組合
所在地:東京都港区虎ノ門一丁目、二丁目の一部
施行地区面積 :約2.2ha
階数/建物高さ:
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(A-1街区)地上49階地下4階/約266m
グラスロック(A-2街区)地上4階地下3階/約30m
虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス(A-3街区)地上12階地下1階/約59m
延床面積/用途:
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(A-1街区)=約23万6640㎡/事務所・店舗・ホテル・情報発信拠点・駐車場等
グラスロック(A-2街区)=約8800㎡/店舗・駐車場等
虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス(A-3街区)=約8100㎡/事務所・住宅・店舗・駐車場等
着工:2019年11月
竣工:2023年7月(予定)
【虎ノ門ヒルズ全体概要】
所在地:東京都港区虎ノ門1丁目~3丁目、愛宕1丁目
開発区域面積:約7.5ha
延床面積:約79万2000㎡
オフィス面積:約30万5000㎡
住宅戸数:約730戸
店舗面積:約2万6000㎡
ホテル客室数:約370室
カンファレンス施設面積:約1万3300㎡
緑化面積:約2万1000㎡
(塚井明彦)