2024年11月22日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 24時間サービスも可能!テレワーク成功の秘密

テレワーク導入は都内企業の6割に

働き方改革を推し進める施策として、早くから注目を浴びていたテレワーク。新型コロナウイルスの感染拡大によって導入は加速している。

いわゆる“三密”を避けるため、やむなく在宅勤務で取り入れた企業も多いだろうが、その利便性やポテンシャルに気づいたビジネスパーソンも多いはずだ。交通費や人件費の削減につながるし、場合によってはオフィスを縮小して固定費を浮かすことも起きうる。テレワークをうまく使えるか否かが経営において大きな鍵となるのは自明だ。

テレワークを先んじて導入し、今では総勢5万人のテレワーカーを抱えている企業を運営する社長に話を聞いた。

テレワークに発注した方が効率的

テレワークによって生産性の向上に成功した事例は枚挙にいとまがない。ある広告代理店の営業部門で行った取り組みは示唆に富んでいると社長は語る。

「営業マンの“本分”は、クライアントを捕まえて受注すること。アポイントを取り、提案書を作ってプレゼンして、その内容が刺されば受注に至ります。多くの企業もそうだと思うのですが、この広告代理店の営業マンもこれを1人でこなしていました。

聞けば、提案書を作るのに少なく見積もっても3時間かかるという。そこで、思い切って外部のテレワーカーに提案書を作成する部分を発注し、営業マンを資料作りから開放して、1軒でも多くクライアントを回れるようにしたんです。営業マンが商談という『打席』に立つ回数が増えれば、おのずと受注確率も高まり、売上げも上がるはずだという狙いです。実際、この試みを導入してから売上げは3倍以上に伸びました。同時に、人件費で見ても正社員に3時間作業させるより、優秀なテレワーカーに時給3000円で外注したほうが安くつくというメリットもあります」

人件費やオフィス賃料の削減にもつながる

さらに働く場所を選ばないテレワークは、子育てや介護によって離職せざるを得ない社員たちの受け皿となり、離職を食い止めることにもつながる。

「企業にとって、1人退職者が出ると、それまで本人にかけた費用がすべてムダになる。退職者の穴を埋めるために新たな人材を雇おうにも、採用費用や教育費用が必要になりますよね。そもそも慢性的に人手不足の労働市場において、本当に必要なスキルを持った人材を確保できるとも限りません」

介護や子育てで離職危機に陥っている社員を退職させることなく、テレワークが可能な部署に配属替えすれば、そのような心配もなくなる。

さらにコロナ禍で議論の高まりを見せるのが、「オフィス賃料」だ。

「テレワークでうまく仕事が回る環境を構築できると、これまでのように全員が揃ってオフィスに出社する必要はなくなります。社員1人ずつにデスクと電話回線、専用端末を用意する必要もなくなり、そこまで広いスペースは不要になる。ある不動産会社の調査によると、テレワークを導入している企業のオフィスは3割ほど狭く、スペースも節約できているそうです。このデータは、われわれが見てきた事例と体感的に合致します。なにも、フルリモートにする必要はありません。週2回程度のリモートワークや、オフィスに常駐している派遣社員の業務をアウトソーシングするだけで、オフィス面積は3分の2程度にまで縮小することができます」

24時間365日モデルのテレワーク

海外の時差をうまく活かした、「24時間365日フル稼働」の取り組みもある。スピード感で勝負しなければならない業態にとって、この活用事例は“福音”となるかもしれない。

「現在、弊社の登録者の中の14%は海外在住。ヨーロッパから東南アジア、北米まで22カ国にテレワーカーが散らばっています。このリソースをうまく活用している制作会社があります。よくある話なのですが、『明日の朝イチまでにプレゼン用の資料を大急ぎで仕上げてほしい』という依頼が、日本時間の夕方に舞い込みます。このときヨーロッパは始業時間。ヨーロッパチームのリーダーに案件を投げ、現地のテレワーカーを取りまとめて指揮し作業にあたる。ここで終わらなければ、深夜に北米チームに引き継ぎます。そして日本時間の次の朝には資料ができあがっているという具合です」

先進的なIT企業で導入される「Follow the Sun」

地理的に分散した2つ以上の拠点を組み合わせて、24時間体制でサービスを提供するモデルは「フォローザサン(Follow the Sun)」と呼ばれ、すでに大手広告代理店やIT企業では導入されているという。

「資料作成やリサーチ業務で使われることが多い印象があります。が、それ以外にも、24時間対応できるので、顧客サポートなどのコールセンター業務にも生かされていますね」

世界が経済活動を復活させてきたとはいえ、コロナ禍で業績が悪化している企業にとって生産性の向上とコスト削減は、喫緊の課題。そしてこの数ヶ月のリモートワークの試みで、社員の意識もおのずと変化しているはず。

「今後、多くの企業にとって、さらなる業務の見直しと効率化を図るために、テレワーク導入の流れは加速するはず」と社長は語る。

 

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