2024年11月24日

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待望の“リアル” 、実演やイートイン充実

今年は3年ぶりに行動制限のないバレンタイン。年末商戦、初売りと活況が続き、各百貨店ともに攻勢を掛ける好機と位置付ける。昨年とは異なる“リアルを楽しむ”価値の提供に加え、活躍する「女性」へのフォーカス、注目度の高い「サステナブル」、追求する「チョコレートの魅力」など、独自性のあるテーマで各社各様に展開。原材料の高騰や輸入コスト上昇などネガティブな要因はあるものの、インターネット通販(EC)サイトの先行販売も、十分な仕掛けとなっている。多くのファンが待ちに待ったスイーツの祭典が、目前に迫っている。

今年は各百貨店がこぞって「リアルで楽しめるバレンタイン」の実現に注力する。来店を促すイートインや実演販売、限定商品を充実。イベントとしての賑わいを復活させる意図に加え、他フロアへの買い回り、全館の盛り上がりに結び付ける狙いもある。バレンタイン会場だけでは終わらない、百貨店での体験を味わってもらいたいという思いを込める。

担当者が奨める「かんじゃ山椒園×ナカムラチョコレート」は、近鉄オリジナルセレクション。和歌山県特産のぶどう山椒を使用し、ピリッとした辛味とブルーベリーの酸味が調和したガナッシュ

近鉄百貨店 の「ショコラ コレクション2023」のテーマは「LIVE×LINK×LOVE」。あべのハルカス近鉄本店では、会場での体験を楽しむ企画を用意し、幅広い世代の集客と期間中のリピート来店を狙う。商品数も昨年より約50増の約700点を集め、初登場の25ブランドを含む約140ブランドを揃える。

集客施策として初企画の「チョコパフェ博覧会」を実施する。計13種類のパフェが期間中入れ替わりで登場。パティシエ・利き酒師として活躍する石川雅也氏がつくるオリジナルのパフェや、人気のショコラティエ「ジャン=シャルル・ロシュ―」のチョコパフェなどが会場で味わえる。パフェ以外にも、関西地方では初登場の「ゴディバ」のクレープなど、会場限定スイーツが多数登場する。2月1日からは人気キャラクター「シルバニアファミリー」とのコラボ企画を開催し、客層の拡大を図る。

ECサイトでは、抽選でチョコレートが当たる、店頭との合同企画「インスタグラム写真投稿キャンペーン」を行う。会場との連動性を高めて動員への道筋をつくる。

担当者によれば「昨年は1月の立ち上がりは好調だったものの、コロナで盛り上がりに欠ける結果となった」。今年はテーマにも掲げる、会場での“LIVE感”が得られる企画と演出で、売上げ増を目指す。

「IRODORI CHOCOLATE」(全12種、各1296円)は、京王百貨店初登場。インドネシアのスラウェシ島のカカオを使用し、日本の四季を表現した

京王百貨店は「2023 Keio CHOCOLATE MARKET」で「見て、食べて、楽しむ、ココロおどるバレンタイン」をテーマに展開する。新宿店では初登場の26ブランドを含む約115ブランドが登場。昨年は一昨年よりも出店ブランドを増やしたが、コロナや天候不順で客数減の結果となった。今年は国内に実店舗を持たない、ニューヨークの「ルイスシェリー チョコレート」や、フランス・レ島の「フルール・ド・セルショコラ」など、“レアチョコ”と呼ばれる商品を投入。チョコレート以外にも、バレンタインにちなんだソフトクリームやかき氷を実演販売する。

さらに会場では「LINE友だち限定特典」や「Twitterキャンペーン」と題した抽選会を開催。買い物券やチョコレートが当たる内容で、会場内の賑わいを創出する。

ECサイトでは約270点の商品を取り扱う。「昨年は、一昨年実施した送料無料を行わなかったため売上げに課題が残る結果となった」(担当者)。今年は店頭での買い上げが増加する見通しだが、昨年の教訓を生かし、送料の一律化や新規入会でのクーポン付与、新宿店での店頭受け取りサービスを行う。売上げ目標に掲げる前年比25%増の達成に向け、対策を講じる。

銀座のBARが入れ替わりで4店舗登場する「チョコ×お酒のマリアージュBAR」。至福のコラボレーションがイートインで味わえる

松屋銀座は初登場の17ブランドを含む81ブランドを揃えて、「GINZA バレンタインワールド」開催する。昨年は自宅での時間やSNSでのシェアを楽しむ「ご褒美チョコ」の需要が目立ったが、今年は会場でしか味わえない実演販売やイートインに注力。昨年より4ブランド増の11ブランドを揃えて強化する。

銀座で人気のバーとコラボした「チョコ×お酒のマリアージュBAR」は、昨年出店した2店舗に加え、女性がバーテンダーを務める2店舗が初出店。カフェとコラボした「スペシャル ショコラ CAFE」では、チョコレートをコーヒー、日本茶と合わせて楽しめる。そのほか、青森の「浪満須貯古齢糖」がつくる「本気のチョコバナナ」なども出店し、できたてをすぐに味わえる。

松屋オンラインストアでの販売は2月5日までで、商品数は前年並みの290点、約80ブランドで展開する。今年は、日本のショコラティエによる国産素材を生かした商品を打ち出す。実際、1月4~5日の売上げが前年比2倍となり、需要の旺盛さが伺える。

担当者は「義理チョコの購入も昨年よりは回復する」と見込んでおり、売上高前年比10%増を目標に据える。

「クレープリー・イクアリー」の「チョコバナナのホットクレープ」は新宿店限定。1日120点限りで、イートインで味わえる

伊勢丹新宿本店では「Life with chocolate」をテーマに約65ブランドが集結。「お客様のライフスタイルに寄り添うようなチョコレートと出会ってもらいたい」(担当者)との想いを込め、チョコレートの幅広い楽しみ方を提案する。昨年は会場での盛り上がりが少なかったため、今年は会場で楽しめるドリンクやパフェ、焼き菓子など、カカオの魅力を満喫できるラインナップを豊富に取り揃えた。イートインスペースも充実を図り、会場でしか味わえない商品で集客につなげる。

今年で3回目となる「三越伊勢丹ラジオショコラ」も、ユーチューブで配信する。声優の西山宏太朗さんがパーソナリティを務め、バイヤーやショコラティエとチョコレートのトレンド情報などを発信。店舗との連携企画も行い、客への訴求を強める。

昨年の開催は2月5~14日までの10日間だったが、今年は7日スタートの8日間となる。「イートインや商品の拡充で、1日当たりの来店客数を増やしたい」(担当者)と、期間短縮も動員数でカバーする狙いだ。