2024年11月23日

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キリンビール、クラフトビール市場の活性化に注力

13日の発表会に登場した堀口英樹社長(右)と山田雄一執行役員(左)

キリンビールは、2023年度(1~12月)の事業方針を発表した。昨年に続いて「強固なブランド体系の構築」と「新たな成長エンジンの育成」を主軸に設定。「一番搾り」の2年ぶりのリニューアルや、「スプリングバレー」を中心としたクラフトビールカテゴリーの活性化などを行う。堀口英樹社長は13日の記者会見で、「ブランドとサービスを磨き続け、挑戦を続けていきたい」と意気込んだ。

同社の22年度の販売数量は、ビール類計が1億2100万ケースで前年比2.5%減となった。うちビールは3.7%増だったが、発泡酒が5.3%減、新ジャンルが5.1%減とマイナスだった。さらにRTD計が3.3%減、ノンアルコール飲料計が6.9%減と苦戦が目立つ。同社は家庭用を強みとしているため、行動規制の緩和による業務用の需要の回復が逆風となった。

しかし、一番搾りはブランド計で3.1%増、スプリングバレーは同15.5%増となり、「氷結」は過去最高の販売数量を記録した。同社は昨年度、一番搾りや氷結など主力ブランドの価値を高める「強固なブランド体系の構築」、スプリングバレーや国産洋酒の拡販を図る「新たな成長エンジンの育成」を戦略の柱としていた。「こうした点では、一定の成果を上げることができた」と堀口社長は振り返る。

23年度は引き続き、この2つのテーマに取り組む。「強固なブランド体系の構築」としては、1月から一番搾りのリニューアルを実施。麦汁の仕込み工程を見直し、麦本来の澄んだうま味を最大限に引き出すことで、飲みごたえを向上。雑味と渋みを抑えた、飲みやすい後口を実現した。パッケージも全体の印象を明るくし、大きさや色を見直すことで「おいしい」、「高品質」なイメージを強化する。

山田雄一執行役員マーケティング部長は、「昨年12月に、2年ぶりの送別会を描いた広告を放映したところ、非常に大きな反響があった。人と人とのつながりを提供する存在として、おいしさを追求していきたい」と語った。

飲食店で展開するクラフトビール専用のサーバー「タップ・マルシェ」も導入を進め、顧客接点を拡大していく

「新たな成長エンジンの育成」としては、クラフトビールの認知と理解の促進に注力。スプリングバレーだけでなく、クラフトビール全体の魅力が伝わるような広告を投入する。飲食店向けのクラフトビール専用のサーバー「タップマルシェ」で協業しているブルワリーと共にフェスティバルなども開催する。

今年の前半は、スプリングバレーのリニューアルも行う。豊潤<496>はホップの比率を調整することでホップの華やかな香りを引き出し、より心地よい後味へと進化させる。パッケージもブランド名の印象がより強く伝わるよう、デザインを刷新。シルクエール<白>も同様にパッケージを変更する。

(都築いづみ)