2024年11月22日

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百貨店だからこそできる価値創造 首都圏基幹百貨店店長パネルディスカッション総括

ストアーズ社主催の「首都圏基幹百貨店店長パネルディスカッション」が3年ぶりに再開した〈2022年12月2日(金)、リーガロイヤルホテル東京にて〉。高島屋横浜店、東急百貨店渋谷ヒカリエShinQs、松屋銀座本店、伊勢丹新宿本店(発言順)の店長を招いて、「百貨店だからこそできる価値創造」をテーマに、各店各様の将来の「あるべき姿」の実現に向けて、コロナ禍の劇的な環境変化の中で取り組んでいる戦略・戦術を短期・中長期視点で語っていただいた。

前半と後半に分け、各店長には前半で22年度の重点戦略、優先的に取り組んできた具体的な施策と成果などについて語っていただき、次いで2巡目は23年度並びに中期視点で店づくりの方向性、独自の価値創造に向けた重点戦略、具体的な営業施策について独自の視点で言及していただいた。(司会:ストアーズ社編集部 羽根浩之)


【22年度の重点施策と成果】

地元や取引先と共に地域密着型を追求

高島屋
 執行役員 横浜店長 髙田 明宏 氏

高島屋横浜店の髙田明宏店長は、コロナ禍を通じた店舗を取り巻く環境の変化と、その変化に適応していくために、地元と取引先の共感を得て構築する地域密着型の新しい百貨店について、具体的な事例や取り組みを紹介した。

「横浜の地域に密着した百貨店として成長していけるかを、今後も地元のお客様、そして取引先と一緒になって考えていかなければならない」と前置きした上で、まず店舗の現状と環境変化について述べた。

コロナ禍を経て、組織顧客の売上高比率が50%強まで下がり、かつ顧客の中身も変化しているという。この変化の1つ目が顧客層の変化で、ミレニアル世代やZ世代といった若い顧客層が増加している事象を挙げた。特に化粧品売場で若年層の増加が顕著で、しかも男女で来店している姿も目立つという。

2つ目の変化として、SDGsへの意識の高まりやライフスタイルの変化など、消費への価値観や意識の変化を挙げた。

そして3つ目が、地元愛の強まりである。「改めてこうした変化に対応し、時代に応じた地域密着型の百貨店として、育てていただいたお客様の変化をつぶさに感じ、寄り添い続けながら、横浜のまちづくりに貢献していくことが地元への恩返しになる」と強調した。

コロナ禍を通じて「百貨店は取引先とともに利益を出すことで成り立つ業態であり、一緒に考えて、チャレンジしていくことが私達百貨店に勤める人間の一番大事な仕事であることを痛感した」という。同店は高島屋が取り組んでいる大型店の構造改革が秋からスタートしているが、これは「働き方改革」にも通じる。「コロナ禍前に戻るのではなく、進化させていくための働き方改革」であることを強調した。そのために必要なことは「店頭で聞く力、見る力、そしてコミュニケーションする力を徹底して研ぎ澄ましていくこと」だという。

また、営業施策については、「体験」と「共有」をテーマに、取引先と協業体制をより強めて、「お客様に百貨店の良さ、百貨店の体験価値を感じていただくことを主眼に取り組んできた」。コロナ禍前まで百貨店は顧客の高齢化が進んでいたが、ここにきてミレニアル世代やZ世代といった次世代顧客の来店が増えており、「このチャンスを最大限に生かしていく施策を取引先と一緒に考えて、体験価値を積み重ね、新しい関係をつくり上げることで、地元密着型の新しい百貨店の価値創造を目指していきたい」と締め括った。

開業10周年、「体験価値とギフト」に的

◆東急百貨店
 渋谷ヒカリエ ShinQs 店長 馬場 知瀨子 氏

22年に開業10周年を迎えた東急百貨店渋谷ヒカリエ ShinQsの馬場知瀨子店長は、開業当時のストアコンセプトやターゲットなど店づくりの特徴と、22年に取り組んできた10周年の記念企画について言及した。

馬場店長は、出店準備に関わっていた。都心の基幹百貨店よりも売場面積規模で劣っていたことから、ターゲットを「20代後半から40代前半の働く女性」に絞り込み、さらにこの中でも「自分の価値観でセレクトする『セルフエディター』」にフォーカスして館づくりを行った。ストアコンセプトは「スパークメントストア」で、新しい発見があり、新しい文化に出会える場の提供に留意した。

次いでMDでは「雑貨視点」をキーワードに、ファッションだけでなく、食品や家庭用品などでも「雑貨視点」でモノ・コトを揃えた。環境では「メゾン」をコンセプトに、ShinQs全体を1つの「おうち」と捉え、買い回りしやすい雰囲気づくり、あるいは要所要所に扉を設けて部屋を行き来するような環境を具現化した。

言うまでもなく10年で取り巻く環境は変化した。「エイジレス化が進み、年齢軸で捉えられなくなっている。働き方も変わり、働く女性というターゲットもナンセンスになってしまっている」という。それで10周年を機に、“ShinQsに期待すること”を知るために、顧客へのアンケート調査を実施した。コロナ禍でもあり、「来店ありきではない買い物環境の充実などに対する要望が多くなるだろう」という仮説を立てていたが、結果は「全く逆で、環境が好き、接客して欲しいなど、リアル店舗に対する要望が多く、リアル店舗の価値、存在意義を高めていかなければならないと改めて感じた」という。

そこで10周年企画では、「体験価値」と「ギフト」へのこだわりにフォーカスした。体験価値企画は4つの切り口で実施。「憧れの人と触れる」、「プロと触れる」、「文化と触れる」、「エンタメと触れる」で、様々なイベントを連打してきた。

「ギフトにこだわる」に関しては、「自分へのご褒美や大切な仲間へのギフトなど、『ちょっとしたギフトだったらShinQs』という館の特性として浸透しており、ギフトの館の特性をさらに強化してきた」という。クリスマスケーキの企画など好事例を紹介した。

「収益性」と「収益力」で店舗構造改革

◆松屋
 上席執行役員 本店長 吉田 清 氏

松屋銀座本店の吉田清店長は、「収益性」と「収益力」をテーマにした、店舗の収益構造改革への取り組みを中心に、外商改革や店舗外で収益力がついてきたコンテンツ事業などについて言及した。

百貨店の収益構造改革の必要性から、「百貨店は取引先の尽力で成り立っており、集客と(取引先の)サポートが百貨店のメインの業務になっている」実態を鑑み、まず「(店長就任直後に)従業員に商売の構造をきちんと理解してもらう」という意識改革から着手した。

収益構造改革では、既に収益率の高いものを「収益性」、利益率は低いが今後の売上げポテンシャルが高く収益を多く残すものを「収益力」と定義して、カテゴリーごとに収益性と収益力で分類し、経営資源の投入や運営体制などを順次切り替えてきた。これまで順次拡充してきたラグジュアリーブランドや、22年秋に増床改装した化粧品売場などが収益性のある強化カテゴリーだ。運営体制では人の配置を見直し、秋には百貨店事業の収益力強化と店舗運営の効率化を図るため組織改正を実施した。主に衣料品、身のまわり品、雑貨などのフロアでは、自主で売場運営を行うゾーンと、ブランドショップのゾーンに分けた売場の運営体制に切り替えた。

外商活動の強化策に関しては、セールス要員を増やすとともに、「店頭のショップ(取引先)と外商セールスとの連携をさらに密にした活動を強化してきた」という。

また、新たな収益源についても言及。都心の大型店に比べ店舗面積で劣る同店では、店舗外で稼ぐ事業を強化してきた。アニメやキャラクターなど展覧会を展開するコンテンツ事業が30億円規模に育ちつつある。加えて紳士服の「『銀座の男』市」や「百傘会」など、名物催事の他百貨店での展開にも着手している。

「マス」から「個」へ、戦略ステップ実践

◆三越伊勢丹
 執行役員 伊勢丹新宿本店長 栗原 憲二 氏

22年4月以降、コロナ禍前に経営統合後過去最高だった2018年度の売上高を上回るペースで推移している伊勢丹新宿本店の栗原憲二店長は、三越伊勢丹グループが22年度から推進している中期経営計画に基づき、同店が目指す姿の実現に向け取り組んでいる3つの戦略ステップについて説明した。

同店は三越伊勢丹グループの高感度上質店舗を象徴する基幹店。目指す姿は「世界中のトレンドセッターが共感と憧れを抱く、世界一、唯一無二の百貨店」で、高感度上質消費で最も支持される店舗の構築に取り組んでいる。これまで培ってきた「独自性」と「新中分類」のノウハウを生かしながら、「個のお客様に向けたマーチャンダイジング」を深化させてきている。いわば「マス」から「個」への戦略転換であり、高感度上質戦略を基軸に「集客」、「識別化」、「CRM」という3つの戦略ステップで、「個客」を獲得し、維持して、ライフタイムバリュー(LTV)を最大化していく施策に取り組んでいる。

集客ステップでは、「プロモーションを核とした高感度上質MDの強化に向けて、新しいMD手法のトライアルと精度向上、拡散を進めてきた」という。高感度上質MDを提供していくために、新宿本店独自でその基準やルール、並びにシーズン区分も設定しているという。その具体的な事例も挙げた。

さらにこれまでのモノ軸やテーマ軸ではなく、カテゴリーレスで価値を提供していく「コミュニティMD」にも言及した。SNSを活用してトレンドセッターと直接つながり、関心度を深掘りしてMDを組み立てていく手法で、販促でもSNSを活用して該当するコミュニティにダイレクトに訴求している。

2つ目の戦略ステップである顧客の識別化では、エムアイカードと三越伊勢丹アプリがツールになる。エムアイカードでは、会員向けの限定商品の販売や催事などへの優先入場など、入会インセンティブの拡充を進めている。

3つ目のCRM戦略では、識別顧客に対してランクアップインセンティブの強化、CRMの推進、グループ連邦を重点施策に掲げている。これらのベースとなる接客スキル、真の顧客ニーズを把握するスキル、顧客化するスキルを高めていくための研修を強化している。ランクアップインセンティブの強化については、エムアイカードのゴールドやプラチナの顧客に対するサロンの拡充、特別な限定催事、サービスの見直しなどへの取り組みに言及し、CRM戦略の詳細については後半の発言に残した。


【23年度の重点戦略と中長期視点の独自の価値創造への要諦】

次いで後半の発言は、前半の現状を受けて、23年度以降の中長期視点を踏まえた重点戦略、優先的に取り組む施策や課題を中心に、リアル店舗の魅力化への方向性や具体的事例を語っていただいた。

ワンストップショッピングの進化を

高島屋
 執行役員 横浜店長 髙田 明宏 氏

高島屋横浜店の髙田店長は、顧客層や購買動向の変化に応じて、変えていくべき編集や品揃え、サービスについての方向性やチャレンジしていきたいことについて言及した。

同店の化粧品売場で増えている男女や男性客の顧客層や購買動向の事例を挙げ、ジェンダーレスな売場づくりへの変化の必要性とともに、そうした若年層に対して「買い物しやすさとはどのようなことか、選ぶのはあくまでお客様であり、そのための売場の編集や販売サービスを考え直さなければならない時期にきている」と述べた。ただ、その際、「百貨店の強みは、今までも、これからもワンストップショッピングであり、1カ所で買い物を済ませることができる選びやすい売場を自分たちで編集できる唯一の業態と思っている。進化したワンストップショッピングを研究して、つくり上げていかなければならない」と強調した。

次いでデジタル活用の重要性を挙げた。「百貨店はつくり手の想い、商品に対する熱量をお客様に十分に伝え切れていたのか。デジタルはこれを伝える有効なツールであり、さらに行列回避や食品ロスなどの問題の解決にもつながる」との考えだ。

次いでコロナ禍で百貨店内の滞留時間が減少傾向にあることから、サービス・環境を見直す必要性を挙げた。百貨店が当たり前と思っていたサービスをお客様が本当に望まれているのか、喜んでおられるのか、事例を挙げながら説明。要は顧客起点で必要なサービスを再構築して、「買い物をする場所から、ゆったりと楽しめる『過ごす場』に変革していきたい」と強調した。

最後に高島屋グループが進めている総合戦略「まちづくり」について述べた。デベロッパー事業を手掛けるグループの東神開発と共に進めている「まちづくり戦略」は、百貨店と専門店の融合による新しい館づくりに取り組んでいく戦略だが、同店は他の大型店と一線を画した立地環境だけに、「働き方や運営手法などの改革で参考にしていきたい」考えだ。いずれにしても「変化に対応し続けながら百貨店の価値創造にチャレンジしていき、地域と共生しながら成長していきたい」と抱負を述べた。

ときめき、ワクワクする買い物体験を提供へ

東急百貨店
 渋谷ヒカリエ ShinQs 店長 馬場 知瀨子 氏

渋谷ヒカリエ ShinQsは、再開発に伴い23年1月31日で東急百貨店本店が営業終了するだけに、東急百貨店としても渋谷エリアの拠点として、新たな館づくりが問われてくる。馬場店長は、目指すべき方向性と考え方、現状の取り組みについて言及した。

東急グループのリテールビジョンとして「期待を超えるお買い物体験の提供」を掲げ、これを受けて東急百貨店は「いつでもどこでも一人ひとりの上質な暮らしのパートナー」をビジョンに定めている。ShinQsとしては次の10年を見据えた新しい館づくりを準備中だが、「スパークメントストア」という店舗コンセプトは変更せず、「アップデートされたスパークメントストア」を創出していく考えだ。東急本店終了に伴い、外商サロンやMDの一部が移設してくる予定だが、ターゲットも「セルフエディター」を継続して、価値観の変化に対応した館づくりを進めていく方針だ。

次の10年先を見据え、サービスプロジェクトを立ち上げた活動に言及した。「これからの百貨店のサービスをどう考えていくか。お客様との接点を拡大していくためには、ShinQsを思い出していただく時間を増やしていくことから取り組むべき」という考えから、「セルフエディターのお客様が何に時間を費やしているのかを洗い出した」という。以下の4つの気持ちになるための時間を過ごしていると結論付けた。

「ときめきたい気持ち」、「誰かと共有したい気持ち」、「自分らしくいたい気持ち」、「誰かのために何かをしたい気持ち」である。この4つの気持ちになるための、新しいサービスの提供に取り組んでいく考え。さらにこれらの気持ちと「ギフトだったらShinQs」を掛け合わせて、購入する時の「ときめき、ワクワクする買い物体験」と、購入後の「買って良かった、もらって嬉しい」という2つの時間の満足度を高めていく仕掛けを検討中だという。

最後にShinQsの目指すべき姿について言及した。「来店していただきたいお客様が『あったら良いな』と思うサービスを提供していけるか。そのための人材教育が重要だと思っている。サービスプロジェクトは全員で考え、つくり上げていく人材教育の一環として進めている。これが小売業、百貨店業であるかもしれないが、お客様が望むサービスを提供していく、サービス業をShinQsの強みにしていきたい」と締め括った。

攻守一体の改革で収益力の強化を急ぐ

◆松屋
 上席執行役員 本店長 吉田 清 氏

松屋銀座本店は、松屋が22年度(23年2月期)からの中期経営計画で目指している新たな成長基盤づくりと成長軌道への回復、並びに早期営業黒字化の実現を達成していくための基幹店舗に違いなく、収益力強化が最優先の課題だ。吉田店長は「攻め」と「守り」による、いわば銀座本店の「攻守一体の改革」について述べた。

松屋が進めている百貨店事業の収益力強化の営業諸施策は、「化粧品、ラグジュアリーブランド、宝飾・時計の強化を軸にしたMD政策」、「CRM(顧客関係管理)と外商事業の強化による顧客基盤の拡大と深耕」、「デジタル活用」、「コンテンツ事業の収益力強化」の4項目。こうした営業諸施策と併せて店舗運営の効率化に取り組んでいる。

前半でも少し触れたが、「ローコストオペレーションの実現」、並びに「顧客基盤の拡大と深耕」に向けて、営業組織の改正と要員配置の見直しに着手し、併せて簡素化や集約化、システム化などによる業務改革に着手している。これらは「守り」の意味合いが強いが、一方で「攻め」の戦略として、CRMと外商事業の強化を目的にした顧客戦略を重要なポイントに挙げた。「顧客戦略部に顧客情報を集めて、分析と発信をしていくことで、今まで以上にきめ細かく、お客様との関係性づくりに取り組んでいく」方針だ。

ただ、そのためには自社カード会員と外商顧客、いわゆるID顧客の売上高シェアの拡大が欠かせない。コロナ禍前の19年度で5割を下回っていたが、中期計画最終年度の24年度に60%を目標にしている。

さらに顧客基盤の拡大と深耕に関して、外商顧客やカードホルダー、ショップ顧客を対象にした特別招待会も強化施策の1つ。年に2回(2月と9月)開催する「松美会」は22年9月が過去最高の売上げを記録するなど順調だが、優待割引がインセンティブになっており、収益性の課題もある。そこで21年から新たに「松縁会」を開催。「限定品や稀少価値を切り口に、意味のある商材を提案する特別招待会で、23年度以降も百貨店の存在意義を懸けて取り組んでいきたい」と強調した。

このほか、コンテンツ事業の強化や名物催事の外部進出、銀座店の外壁やポスターボードなど保有施設・設備の有効活用などについても言及した。コロナ禍からの「反転攻勢」施策に拍車が掛かってきている。

「個客とつながるCRM戦略」が本稼働へ

◆三越伊勢丹
 執行役員 伊勢丹新宿本店長 栗原 憲二 氏

伊勢丹新宿本店の栗原店長は、23年度以降も3つの戦略ステップの精度の向上と拡大をテーマにアップデートしていくと前置きした上で、前半で説明した集客戦略、識別顧客化戦略に次いで、後半では3つ目のCRM戦略を中心に語った。

CRM戦略は、個客のライフタイムバリュー(LTV)を最大化していくためであり、顧客戦略の核と位置付けている。「コロナ禍の大きなピンチがCRM強化の素地になり、機運を形成した」という。CRM戦略は「ショップ単位」、「営業部(ゾーン)単位」、「店舗単位」、そして「店舗・エリア、事業の壁を超えた単位」(グループ連邦戦略)で取り組んでいる。このうちショップ、営業部、店舗単位のCRMについては23年度の本格稼働に向けて様々なトライアルを重ねてきている。

次いでインバウンド推進体制について言及。プロジェクトを発足させ、「旅前」、「旅中」、「旅後」をテーマに情報発信、サービス、CRMの取り組み、加えて海外のVIP顧客への対応を強化している。

3つ目には、店舗プロポーションの再構築とMDバランスの修正計画をポイントに挙げた。「MDバランスの修正ではバックヤードや物流導線などの再構築を検討した上で、MD領域ごとの展開面積を再設計する」プロセスを説明。強化MDについては「百貨店ならではのハイタッチMDの充実に加えて、新しい中分類の創造」に取り組んでいく考えを示した。新たな中分類では「高感度上質MDやコミュニティMDでトライアルしてきた好事例を含め、革新的な中分類の可能性を研究している最中」だという。

そして百貨店事業の「グループ連邦戦略」に関しては、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店を中心に、全国の顧客とのつながりを強化していくために、デジタルを活用して両本店MDを全国の顧客に届ける体制を整備している。さらに両本店で開催する特別招待会に三越伊勢丹の地域事業会社の外商顧客を送客する取り組みも強化している。「顧客とのつながりが深まれば深まるほど、これからは従来の品揃えを起点にした分業型・アウトプット型のMDフローから、顧客起点にしたカスタマーイン、一気通貫型のMDフローへの転換を検討していく必要があるように思っている」と強調した。

いずれにしても伊勢丹新宿本店は3つの戦略ステップを通じて、「三越伊勢丹グループ全体戦略である『高感度上質MD』と『個客とつながるCRM戦略』の道筋が見えてきた」という手応えを得ており、グループ戦略をけん引する基幹店の重責を果たしている。

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