2024年11月22日

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2023年 百貨店首脳 年頭所感・壱

<掲載企業>

■三越伊勢丹HD

■札幌丸井三越

■新潟三越伊勢丹

■丸広百貨店

■藤崎

■水戸京成百貨店

■うすい百貨店


百貨店核に魅力あるまちづくり

三越伊勢丹HD 社長 細谷 敏幸

昨年は、ウィズコロナの行動様式が定着したことで国内は社会経済活動の正常化が進みました。当社におきましても、新宿・日本橋の両本店をはじめとした各店で多くのお客様にご来店頂いております。特に伊勢丹新宿本店は、まだ海外からのお客様がコロナ禍前の来店客数に戻らないにもかかわらず、2022年度上期は統合以降最高の売上高を記録しました。通期では、過去一度しか達成していない3000億円超の売上げを見込めるほどの回復となっております。

当社グループは、長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」と定め、昨年秋から24年度までの3カ年で従来の百貨店モデルからの変革を図る「百貨店の再生」を目指した中期経営計画を推進中です。現在、大変多くのお客様にご支持を頂いておりますのも、この経営計画で“マスから個へ”を合言葉に「個」のマーケティングへ徹底的にシフトすることで、店舗やデジタルを駆使したあらゆる手段でお客様とつながり、一人一人の要望にしっかりとお応えする戦略が想定以上の速さで成果を上げているため、と考えております。

加えて、お客様の要望を伺っていくことで、従来の百貨店では扱っていなかった商品やサービスも当社の信用のもとに提供する可能性も広がりつつあります。こうして、3カ年計画初年度の業績は期初の計画を上回る見込みで順調に推移しております。

迎えた23年は、「百貨店の再生」をさらに推し進めながら、次期3カ年計画で目指す「グループ企業による連邦戦略」の展開フェーズへとスムーズに移行するための重要な年となります。百貨店の再生により多くのお客様から頂いた信頼を、当社のグループ企業全てでお応えする仕組みを構築するため、グループリソースの活用による外販の強化や、グループ企業が蓄積したスキルとノウハウの組み合わせによる提供価値のワンパッケージでの提案などによって、収益の手段や規模を高めて参ります。その先には、「三越・伊勢丹のまち化」として、より多くのお客様に「来街・滞在・回遊・居住」頂けるための複合用途を提供する一方で、そのインフラとなる不動産、金融決済、データシステムなどの事業までも当社のグループ連邦で支える「百貨店を“核”にした魅力あるまちづくり」の基礎をつくって参ります。

また、サステナビリティの取り組みでは、環境や人権に配慮したサプライチェーンマネジメントの実践に向け、取組先との対話活動を実施したほか、「パートナーシップ構築宣言」への賛同を公表いたしました。今後も当社グループは、企業活動を通じて社会課題の解決に貢献し、豊かな未来と持続可能な社会の実現を支えるべく取り組んで参ります。


顧客の増加と関係性深化に挑戦

札幌丸井三越 社長 神林 謙一

昨年は新型コロナウイルスの感染状況が一進一退を繰り返す中、行政から行動制限が発出されることはなく、ウィズコロナの生活が少しずつではありますが日常化してきた感があります。経済活動の制限もなく消費マインドも上向きとなり、株価も回復基調にあるほか、昨年後半には海外からの渡航者への水際規制も緩和されるなど、百貨店にとっても追い風が吹き始めたと言えます。

また、北京冬季オリンピックやサッカーワールドカップといったスポーツイベントにおける日本人選手の活躍など、明るい話題もみられました。

一方で、2月にロシア軍がウクライナに侵攻して以来、戦闘は長期化しており、ドル高円安基調の中で資源、エネルギーなどをはじめとした物価の上昇が徐々に消費に暗い影を落とし始めた1年でもありました。

そのような中で、2022年は丸井今井が創業150周年、札幌三越が開店90周年という大きな節目を迎えることができました。これもひとえに、私達の先達が「おもてなし」の心を形にして日々の商売を積み重ねてきた結果であり、来店いただいたお客様、商品を供給して下さる取組先、そのほか多くのステークホルダーの皆様に支えられて、この北海道の地で皆様の役に立てたからこそ、紡ぐことのできた歴史であったと改めて感じております。

このような思いも背景に昨年、札幌丸井三越では全従業員が北海道の「おもてなしリーダー」となって、お客様の要望に感動的に応えられるプロ集団を目指すことを方針に掲げました。社員、取組先パートナースタッフの皆が、自分の得意なことや好きなことを生かし、何でおもてなしをするのか宣言する「おもてなし宣言」をし、それを記したプレートをネームバッジの下に付け、店頭に立つようにしました。お客様の役に立つことで店舗価値・企業価値を高め、新たな歴史を刻み続けていきたいと考えております。

さて今年は、コロナ禍であっても経済活動は停滞することなく、国内消費が活発化すると思われ、加えて海外からの旅行客も戻ってくることが期待されます。その中で、札幌丸井三越は営業基盤を強固なものとしていくために、当社の顧客を増やし、関係性を深める取り組みを推進して参ります。昨年2月より、当社でも三越伊勢丹アプリ会員の募集を開始し、順調に会員数が増えています。エムアイカード会員も含めた識別顧客に対するニーズとシーズのマッチングによって、顧客の期待に応えていきたいと思います。

札幌丸井三越が今後も北海道にとって、北海道民にとって欠くことのできない企業であり続けられるよう、品揃えやサービス、コミュニケーションなど多岐に亘り改革を進めて参ります。北海道に暮らす皆様に豊かさを感じていただけることを目指し、従業員一同、ビッグ・チャレンジをする年として参ります。



事業ポートフォリオを変化へ

新潟三越伊勢丹 社長 牧野 伸喜

新潟三越伊勢丹は2021年度に3カ年計画を策定、昨年はそのスタートの年でした。3カ年計画の目標は「地域唯一の百貨店を中核とした暮らしのリーディングカンパニー」。人が集い、賑わい、また来たくなる店舗を構築することです。それを実現するにあたり、昨年は2つの戦略に取り組みました。

1つ目は「高感度上質戦略」です。高感度上質戦略とは、特別な買い物、つまり高感度で上質な消費をしたいと思った時に真っ先に選ばれる店をつくり上げることです。

その実現のためには「人の持つ力」を最大限生かせる環境が必要です。昨年から「カテゴリースペシャリスト」や「アテンダント」という組織を新たにつくり、人の力を生かした高感度上質提案に取り組んで参りました。この取り組みは、多くのお客様の支持をいただいております。

2つ目は「個客とつながるCRM戦略」です。現金や他社のクレジットカードで購入したお客様にもポイントが付くシステムを導入。顔の分かるお客様の識別化を進めてきました。これにより、今まで以上にお客様一人一人の暮らしに寄り添い、我々から提案できる土台ができてきたと実感しております。

このように取り組んできたことは確実に成果につながっております。課題もみえてきましたので、本年はさらに進化をして取り組んで参ります。

本年、我々を取り巻く環境はさらに変化していくと認識しております。大都市ではインバウンドも戻りつつありますが、新潟ではその影響は少なく、最近の物価高騰やエネルギー価格の上昇に伴う消費マインドの低下が懸念されております。また24年には新潟駅に新しい商業施設ができ、我々を取り囲む商環境も大きく変化していきます。

このような環境変化の中、「守りから攻めへの転換」が必要だと考えております。百貨店のさらなる進化を基盤として、今後は事業ポートフォリオの変化に取り組んで参ります。そのためにコンサルティング事業、セミナー事業、サステナブル事業など、新規事業の取り組みを始めました。

今年はさらに進化させ、百貨店一本足の収益構造から脱却し、27年には百貨店以外の収益を現在の5倍にすることを目標にしております。百貨店を軸とした商売を安定的に行い、価値創造・価値提供の幅を広げることを常に目指して参ります。

本年は「百貨店の磨き上げ」、そして「新しい収益基盤の構築」の2つをさらに進化させ、地域唯一の百貨店を中核とした暮らしのリーディングカンパニーの実現に向け、攻めへの転換の年と位置付けます。



川越開発や顧客囲い込みに傾注

丸広百貨店 社長 伊藤 敏幸

私は前社長の神谷の代表取締役会長就任に伴い、1月1日付で代表取締役社長の大任を仰せつかりました伊藤でございます。

前任の神谷は8年に亘り社長として構造改革や新規事業への進出など、様々な経営施策に取り組みました。このたび、その重責である社長のバトンを前任の神谷より受け継ぎました。これからは一層社業の発展に全身全霊をかけ務めていく所存でございますので、ご指導ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

さて、昨年の国内経済は、社会経済活動の正常化に向けた動きがみられ、外出機会の増加に伴う消費の回復基調が続いております。一方、海外情勢の影響による原材料価格の高騰などで、物価上昇による家計負担が増しており、今後の消費行動については先行きが不透明な状況が続くことが予測されます。

このような中、昨年は、コロナ禍で落ち込んだ衣料品を中心とする外出型消費が回復するとともに、物産展などの集客催事が好調に推移しております。特に、川越市制100周年に合わせたイベントや限定企画は、地域のお客様より大変好評をいただいております。

また、10月に当社にて実施した、宮城県の藤崎と協業した店舗とネット通販を活用した新たな取り組みの「宮城ご当地フェア」が成功し、本年2月には藤崎に当社が出店する形で、埼玉県の名産品を販売するフェアを実施致します。

店舗戦略においては、昨年閉店した坂戸店のお客様に、引き続き当社をご利用いただけるよう、9月に「ワカバウォーク」内にサテライト店「まるひろmini」を出店致しました。深谷市に10月にオープンした「ふかや花園プレミアム・アウトレット」内に、地元商材を扱った「モイサイタマ マルヒロ」を出店し、いずれの店舗も好調なスタートを切りました。

2023年度は、これまで以上に顧客を深く理解し、顧客に価値を感じてもらうために、営業力強化に向けた集客力を高める店舗・営業戦略、収益安定化に向けた顧客基盤の再構築、生産性向上への業務改善に取り組んで参ります。

店舗戦略では、川越店の別館を再編し、「トキを過ごす」という新たな価値観を提供するために飲食カテゴリーの拡充を図り、将来の川越エリアの周辺開発につなげて参ります。

営業戦略では、集客コンテンツの充実を図るとともに、実店舗とオンラインのメリットを融合したサービスを充実させ、顧客との接点を強化していくデジタル戦略を推進していきます。

顧客戦略では、昨年リニューアルしたMクラブカードの会員拡大を図るとともに、アプリ会員のカード連携を強化することで、顧客の囲い込みを強化して参ります。

生産性の向上については、雇用環境や要員構造の変化に対応した人事制度改革を実施し、働きがいのある環境づくりを進めて参ります。

そして、厳しい外部環境の今だからこそ、全社的にSDGsへ取り組むことで、地域社会とのさらなる共存共栄を図り、企業スローガン「地域に役立つパートナー」の実現に向け、邁進して参ります。



新中計が始動、顧客接点を拡大

藤崎 社長 藤﨑 三郎助

2022年は国際情勢の不安定化、資源の高騰、物流コストや製品価格の上昇などがあり、また新型コロナウイルス感染症の動向と共に社会生活を送ることを余儀なくされた中で、歩みを進めた一年でした。

本店の入店客数としては、大型連休には県外からのお客様の利用が前年の2倍近く増えるなど、従来の商圏の姿が少しずつ戻りつつあることを感じました。売上げについては前年比で約110%となり、19年とほぼ同じ水準まで回復しました。特選ブティックや高額商品、地域店舗が好調に推移し、21年度にリニューアルしたECサイトも貢献しました。特に10月には06年以来の売上高を記録するなど、多くのお客様に来店いただき、商売としての賑わいを感じることができたことは嬉しいニュースでした。

そのような中、お客様との接点拡大の取り組みとして3月に公式スマートフォンアプリをスタートさせ、八木山動物公園フジサキの杜との協業で、アプリ内で多くのお客様からの応援を頂戴しました。5月には公式ツイッターを開始。仙台育英学園高等学校の甲子園優勝では数多くの「いいね!」が寄せられ、店内での優勝旗展示ではたくさんのお客様に来店いただくなど、地域とのつながり、地域に暮らすお客様とのつながりに力を傾けてきました。

店舗においては多様化するお客様の要望に応るため、趣味領域の拡大を図りました。通信販売カタログの掲載商品を展示し、実際に商品を手に取って確認ができるショールーム機能と、カタログ掲載商品やECでの購入商品を受け取ることができる「ラウンジF」をオープンさせるなど、利便性を高める取り組みも行ってきました。

23年の干支となる卯年は「飛躍」、「向上」の年と言われております。社会・経済環境はまだまだ先が見通しにくい状況が続くと考えますが、今の時代の地方百貨店としての役割を改めて考え、できることから一歩一歩取り組んで飛躍を期して参ります。

本年は未来に向けた新しい中期経営計画の初年度に当たります。「お客様との関係構築」、「デジタルとコンテンツの活用」、「人材育成」の3つを重点戦略として掲げ、お客様との接点を拡大していきます。その推進のためには、事業の構造を変革し、限られた資源を最適に配分していくことが急務です。百貨店モデルだけではない新しいビジネスモデルに向けた変革のために、まずはこれまでの仕事のやり方、手法の見直し、そして収益構造の再構築に取り組み、未来への投資、成長へつなげていきます。

地域社会とのつながり、共生も重要なテーマです。不透明で、多様化、複雑化する社会だからこそ、地域全体で共に協力、協業し還流させていくことが重要です。引き続き環境問題への取り組み、未来を担う子供達を応援する取り組みなどを行うとともに、企業、学校、行政など業界を超えた連携で、お客様の暮らしが豊かになり、心が動く、地域にとってなくてはならない百貨店として役割を果たし、魅力あふれる街づくりに貢献して参ります。



創業115周年、「楽しさ」を追求

水戸京成百貨店 社長 芹澤 弘之

2022年は、新たな中期経営計画(D1プラン)の初年度として、生活習慣、働き方、消費行動の変化に対応した店舗経営とお客様の価値観・需要の変化に対応した商品提案、前年度に立ち上げた新ECサイトのブラッシュアップなどに傾注し、全館テーマ「繋ぐ(つなぐ)」を掲げ、お客様、地域、従業員との新しいつながりを構築し、より強く、より温かみのある店づくりに向け、取り組んで参りました。

売場改装に関しては、地下食品売場のリモデルを推進し、足元商圏顧客の取り込みと買い回り性の向上、百貨店MDの強化を図るとともに、婦人服売場、レストラン街を中心に撤退区画への対応を重点的に進めました。

また、価値と価格の多様化、購買客層と買い上げ商材の二極化に対応すべく、新しい価値観の提案と環境問題への取り組みを積極的に展開しました。SNSを活用した新たな施策として、5月にスタートしたインスタグラムによる情報発信では、頻度と精度向上に重点を置き、新たな客層の開拓に努めました。

自粛明けの反動増、行政による各種施策の効果などにより消費マインドは回復傾向にありますが、一方でコロナ禍の再燃による来店客数への影響、加えて物価上昇による生活防衛の動きなど、予断を許さない状況が続いております。

23年は、創業115周年の節目の年として、着実な収益と利益の確保に努めて参ります。全館テーマに「楽しい」を掲げ、「モノ」と「コト」から楽しさが伝わる店づくりを目指します。

7月には隣地に新たな水戸市民会館が開館予定となっており、地域への集客機能が向上します。当館2階とデッキでつながることもあり、新たな商機を見出し、顧客開拓に向けた施策を積極的に講じて参ります。

売場改装計画は、デイリー需要に向けた受け皿の強化と欠落アイテムの導入を目指します。MDの差別化や質の高いサービスの提供によるリアル店舗としての強みを生かすために、ゾーニングプランの見直しを継続して参ります。

来店推進策としては、定例催事の見直し、サステナブルイベントなど新たなカテゴリーの導入を図り、魅力度の強化、集客力の向上を目指します。

お客様との関係では、SNSによる「個」に対する情報発信を充実させ、ターゲットを明確にした趣味趣向やこだわり、話題性のある商材を積極的に発信して参ります。

サテライトショップは、本店との連携を強化し、品揃えの充実、地域性への対応、店舗を拠点とした外商活動を強化していきます。特にエリア深耕を強化し、法人需要の開拓と足元商圏のフリー客の顧客化を推進、高感度な限定イベントの開催にも注力して参ります。

そのほか、行政や地域社会との連携、産学共催イベントなど、コラボレーションにより事業を深化させ、地域社会の活性化にも取り組んでいきます。従業員一人一人が創造と革新への意識を高め、地域の皆様に愛される店づくりを目指して参ります。


「体験型百貨店」へ生まれ変わる

うすい百貨店 社長 横江 良司

新型コロナウイルス感染症の拡大と縮小を繰り返す中、さらに予期せぬロシアとウクライナ戦争に端を発した物価高、円安、水道光熱費の上昇があり、その影響が昨年後半から表れました。地元の祭りやイベントが復活したプラスの効果を飲み込み、来客数や売上高の月々の変動が大きくなりました。

2022年度当初の2~5月は前年割れの厳しい状況が続いたものの、5~10月にかけては前年を上回る回復基調となりました。通期累計では増収となる見込みですが、水道光熱費やカード手数料などの経費上昇が重く、利益を大きく損ないかねず、長年の課題である収益構造の見直しは避けて通れないものと捉えております。

22年度の増収の主な要因は、まずコロナ禍の中で低迷していたファッションが、ようやく行動制限がなくなった環境とともに回復したことが挙げられます。次に、主要施策の1つである外商強化については、外商顧客向けの特別招待会に合わせた、インポートブランドや美術などの催事により底上げができました。地方百貨店ならではの物産展を、北海道を皮切りに展開したことも、増収の要因として挙げられます。

23年は相変わらず消費環境が不透明ながら、コロナによる行動制限は行われない想定のもと、積極的に営業展開を進めて参ります。また、コロナ禍を経てお客様の生活様式や価値観が大きく変化する中、地元の百貨店のあるべき姿を追求して参ります。

食やウェルネスの重点展開はもとより、福島県唯一の「県民百貨店」として、また地域1番の「親切百貨店」を目標に、リアル店舗ならではの強みを生かした「体験型百貨店」への生まれ変わりを目指していきます。地域のお客様や生産者の皆様、商店街や行政の皆様と共に取り組みを進めていきたいと考えております。

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