2024年11月25日

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大丸松坂屋百貨店の「明日見世」、第6弾は“寄り添うセルフケア”

大丸松坂屋百貨店は14日、大丸東京店の4階に構えるショールーミングストア「明日見世(asumise)」を新装した。3カ月ごとに展示を入れ替えており、第6弾に当たる今回は「今のわたしに寄り添うセルフケア」をテーマに、「ライフスタイル」や「ファッション」、「ビューティー」のカテゴリーで、百貨店初となる「eHz BOUTIQUE(エルツブティック)」や「Wellis(ウェリス)」など21のブランドを揃えた。

明日見世は「Social good」(=サステナブル、地域貢献など)、「Essential beauty」(=プロダクトのストーリーや美しさ、機能美など)、「Breaking stereotypes」(=固定観念から脱却できるような商品背景など)を選定のポイントに、昨年10月から様々なD2Cブランドを集積してきた。

第6弾のテーマには「1年の締めくくりに身体に溜まった疲れを取り、身も心もさっぱりして新年を迎えてほしい」という想いを込めた。化粧品やボディクリーム、フレグランス、ドライヤー、タオル、ナイトウエアなどを揃える。

例えば「VinX」は、オンライン上で15の質問に答えると、AIが適した香りをブレンドしてくれるアロマオイル。AIが150種類の香りから最終候補として示した2種類のうち、どちらかを選んで購入する。AIによる提案は珍しいが、VinXの販売元であり、アロマセラピーの国際資格も有する宮田商店の宮田靖子社長は「アロマセラピストの育成やオーガニックコスメの販売などを始めて約25年経ち、その経験と知識を集約した。購入者の9割は『大満足』と言って下さり、残りの1割も使ってくれている」と自信を示す。

明日見世に出たのは「9月に立ち上げたばかりのブランドで、通常はインターネット通販のみだが、お客様の声を聞ける機会はありがたい」(宮田社長)からだ。VinXの購入者は40代が中心で、次世代顧客の獲得を急ぐ大丸松坂屋百貨店にとっても期待は大きい。

「VinX」は、オンライン上で15の質問に答えると、AIが適した香りをブレンドしてくれる

フェムケアオイルを扱う「Oak」は7月に誕生したブランド。フェムケアオイルは、いわゆる「デリケートゾーン」に用いる。Oakを手掛ける太田朱香さんは「まつ毛サロンを運営して10年くらいになるが、デリケートゾーンに関する相談をずっと受けてきた。欧州では当たり前で、スーパーマーケットや薬局にもある。一方で、日本には輸入品が少しあるだけだった」と開発の経緯を語る。近年はフェムケアという言葉が一般化しつつあるが、国内市場は未成熟だ。

Oakのフェムケアオイルは、成分から香り、使いやすさ、デザインまでこだわった。「植物由来成分が100%で、デリケートゾーンに使うため、ベタつかないようにした。香りは3種類で、癒されてホッとするように仕上げ、容器は使いやすいプッシュ型。デザインもユニセックスを意識した」(太田さん)。

「まだまだデリケートゾーンをケアしていない人は多い。トラブルや不快感を解消してほしい」と太田さん。明日見世を介して、認知度の向上とデリケートゾーンのケアの啓蒙を急ぐ。

デリケートゾーンをケアするオイルを手掛ける「Oak」

明日見世は昨年10月の開設から1年余りを経過。ブランドのラインナップを入れ替えるだけでなく、NTTドコモと協業して客の性別や年齢、滞留時間などを分析したり、企業と企業の交流会を開いたり、産学連携を仲介したり、モニター会を開いたりして、大丸松坂屋百貨店とブランドの両方が儲かる構造を目指してきた。

第5弾までに蓄積したデータを分析すると、大丸松坂屋百貨店にとって百貨店になじみがない人を誘引する拠点を担っており、出店を希望する、あるいはリピートする企業は右肩上がりで増加。一部のブランドは大丸松坂屋百貨店の店舗でのポップアップショップに“発展”するなど、成果は少なくない。

ただ、事業としての収益性には課題が残る。プロジェクトリーダーの廣澤健太本社経営戦略本部DX推進部デジタル事業開発担当は「トップラインを上げなければならない」と判断。第7弾に向けては、収益性の向上につながる新たな手法を講じる方針だ。

(野間智朗)