2024年11月22日

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アラ商事、非ネックウエアの収益化に本腰

アラ商事は10月11~14日に2023年春夏企画の展示会を開いた

アラ商事は、ネクタイをはじめとするネックウエアや服飾雑貨などの製造で培ってきた知見を転用し、新たな需要を取り込む。10月11~14日に開いた展示会で、群馬県桐生市に擁する織物工場で手掛けた生地、それを使ったブランケット、クッション、パジャマ、近年は部屋の装飾用として注目されるファブリックパネル、ジャカード織りで世界の名画を再現した「名画織」などを紹介。展示会を訪れる百貨店のバイヤーらにアピールした。

多彩なバリエーションの生地を紹介した

「シルクからウール、綿、ポリエステルまで様々な生地を織れるという強みを示すとともに、参考商品も展示して、新しい商機につなげる」。奥平有臣営業本部付部長は意図を説明する。例えば名画織は、グループ会社のアルファテックスが今年3月にクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」でプロジェクトを公開すると、目標金額を上回る結果になった。第2弾を準備中だが、今後は「お客様の絵画や写真にも対応したい」(奥平氏)という。展示会を通じてネックウエアだけでなく多種多様な要望を受け入れられる企業としてPRする。

クラウドファンディングで支持された「名画織」や「イエナカ消費」で注目されるファブリックパネルなども訴求

もっとも、中核を担うアイテムはネクタイだ。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降は厳しい商戦を強いられたが、今年に入って復調。売上げは前年を上回っており、オリジナルブランドの「Earldom(アールダム)」や「FOSCA(フォスカ)」、ライセンスブランドの「Calvin Klein(カルバンクライン)」、「Paul Stuart(ポールスチュアート)」、「DAKS(ダックス)」は2桁増だ。コロナ禍の一段落に伴う冠婚葬祭の再開で、フォーマル用のネクタイが最も伸びているという。

ライセンスブランドの「Calvin Klein(カルバンクライン)」は今年、売上げが前年比2桁増と好調。来春夏にも期待がかかる

商機が拡大する中、展示会では2023年の春夏企画を発表。テーマは「エンパシー」(=他人との感情の共有)で、同社は「長く続くコロナ禍では『リラックス』というキーワードから、緩めでカジュアルなファッションの傾向が続いたが、ここにきてライフスタイルにオンとオフのメリハリを付け、オンの時にはキリっとしたドレスアップを楽しみたいという志向に変化した」と指摘し、「『自分らしいライフスタイル』を楽しみながら、オンの時のタイドアップで自分自身に“悦楽感”と相手に対してのリスペクトを表現できる最適なアイテムがネクタイ」と強調する。

各ブランドではテーマを踏まえつつ、世界的なトレンドや客のニーズを反映。品揃えの精度を上げる。「今までのTPO重視から相手を尊重したスタイルを提案する。トレンドがトラッドからエレガンスにシフトする中で、いわゆる『フレンチトラッド』で自由な発想の商品を揃える」(奥平氏)

アールダムは、光沢感でエレガンスを表現。パープルやオレンジなど“パンチが効いた色”も用意した。来春夏の売りはブリティッシュトラッドやイタリア・ミラノで開かれる国際的な織物や生地の見本市「ミラノ・ウニカ」の情報を反映させたカラー(来春夏はラピスグリーン)だが、選択肢を広げて購買意欲を喚起する。

オリジナルブランドの「アールダム」は、光沢感でエレガンスを表現。パープルやオレンジなど“パンチが効いた色”も用意した

フォスカは、主力顧客の20~30代のニーズを反映。コーディネートしやすいソリッドパターンを多色使いの組織で表現したレイヤードカラー、1本でマルチユースが可能なコンビネーション・タイを新規に打ち出す。コンビネーション・タイは「完全な無地ではなく、濃淡のある糸を使い素材感を強めた。ドレスダウンにも対応し、ラフな格好やエアリーな服装にも合う」(奥平氏)という。

オリジナルブランドの「フォスカ」では、コーディネートしやすいソリッドパターンを多色使いの組織で表現したレイヤードカラー、1本でマルチユースが可能なコンビネーション・タイを新規に提案する

来春夏の起爆剤になり得るのが扇子だ。フォスカで6柄、ポールスチュアートで5柄を展開し、扇子の販路拡大を目指す。

世界的な関心事であるSDGsにもアクセルを踏む。在庫を持たないオーダーやイージーオーダーの強化、再生ポリエステルの使用など多岐に亘るが、好評を博し売上げに結び付いているのはネクタイのリメイクだ。スナップタイや名刺入れ、ミニポーチなどにリメイクしてきたが、犬の散歩や旅行での短時間の外出に便利なワンマイルバッグを試作中。リメイクの種類を増やし、さらなる浸透につなげる。

コロナ禍が3年目を迎え、ようやく潮目が変わってきただけに、アラ商事は新たなビジネスチャンスを積極的に生かしにいく。

(野間智朗)