2024年11月23日

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間断なき横浜みなとみらい21地区の大型ビル開発

横浜みなとみらい21地区(以下MM21)で大規模複合ビルの開発が続いている。2020年は「ぴあアリーナMM」、「パシフィコ横浜ノース」、「横浜グランゲート」などがオープンしている。2021年以降も「横濱ゲートタワー」、「Kアリーナプロジェクト」、「MM37タワー」などに代表されるいくつもの開業を控えている。開発される複合ビルは企業の研究センターも併設した本社ビルから、オフィス、ホテル、大型音楽ホール、にぎわい施設などを併設した複合型まであり、賑わい施設として鉄道博物館や水族館などのエンターテインメント施設まで登場する。MM21地区周辺でも開発が進んでおり、みなとみらいの海を臨んで地上32階建て高さ155メートルの横浜市新庁舎が完成、桜木町駅には商業施設とホテルでなる複合施設が開業。横浜駅にはJR東日本のビルが2棟立ち、大型商業施設とオフィス、ホテルなどからなる大規模複合施設が誕生しており、近隣エリアとの競争も高まりそうだ。

大型複合ビルの竣工が続くよこはまみなとみらい21

大型複合ビルの竣工が続く横浜みなとみらい21

186ha(土地利用)からなるMM21には毎年のように業務・商業・企業本社などの高層ビルが加わり、すでに街区の開発が90%(2020年1月現在)まで進み、進出企業数が約1820社(2019年までの累計)になり、就業者数約11万2000人(19年実績)、年間来街者数約8340万人(同)、地区内鉄道駅(JRと市営地下鉄の桜木町駅・みなとみらい駅・新高島駅)乗車人員数約5023万人(同)というスケールの街となっている。

2019年に加わった新施設はみなとみらい線新高島駅周辺を中心に、「資生堂グローバルイノベーションセンター」、「横浜アンパンマンこどもミュージアム」(移転リニューアルオープン)、「京急グループ本社」と、新港地区に新港ふ頭客船ターミナル「横浜ハンマーヘッド」が新規オープンした。

横浜パシフィコノース

横浜パシフィコノース

20年はさらに新規オープンが増え、「KTビル」、「横浜グランゲート」、「パシフィコ横浜ノース」、「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」、「ぴあアリーナMM」、「村田製作所みなとみらいイノベーションセンター」、「横浜北仲ノット」など。20年は東京五輪の開催やインバウンド人気を背景(新型コロナウイルスの影響で東京五輪は延期、インバウンドは出入国規制で訪日外国人激減)に全国規模でホテルを中心にした施設のオープンが目立っているが、MM21でも20年に限らず21年以降もホテルを搭載した複合施設の開発計画が目立っている。

MM21には21年以降も「横濱ゲートタワー」、「(仮称)LGグローバルR&Dセンター」、「Kアリーナプロジェクト」、「(仮称)みなとみらい44街区」、「MM37タワー」などの新設計画が挙がっており、この先も出店の勢いは衰えない。

最近MM21に新設される施設の特徴は、ホテルや音楽アリーナなどの併設が目立っている。鉄道系のミュージアムの開設も増えており、これから水族館やプラネタリウムなどのエンターテインメント系施設も加わってくる。19年にオープンしたホテルは横浜ハンマーヘッドに横浜グランドインターコンチネンタルホテルが運営する「インターコンチネンタル横浜Pier8」(客室数173室)、20年は3月に開業したKTビルに「横浜東急REIホテル」(同234室)、9月23日開業予定の横浜ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート横浜には「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」(同146室)が立ち上がる。21年以降では22年に竣工を予定している「(仮称)みなとみらい44街区計画」のビルに「ウエスティンホテル横浜」(同373室)、23年竣工予定の「(仮称)みなとみらい21中央地区37街区(MM37タワー)」に新設されるビルの20~28階にホテルが配置される計画。同じく23年竣工予定の「(仮称)みなとみらい中央地区53街区」の計画では地上28階建てのWEST棟と地上15建てのEAST棟を建て、WEST棟の25階~28階にホテルが入居。マリノスタウン跡地に23年に竣工する「Kアリーナプロジェクト」でも地上21階建てのホテル棟(同約340室)が建設される。さらに26年の竣工を目指す「みなとみらい21中央地区62街区」に開発されるビルにもグローバルラグジュアリーホテル&ホテルコンドミニアムが開設になる予定。ホテルについては今年6月開業したCIAL桜木町ANNEXの上層階(3階~12階)にも「JR東日本ホテルメッツ横浜桜木町」(同274室)が開業している。

大型の音楽アリーナも登場する。コロナの影響で今年4月のオープンが7月にずれ込んだ38街区の「ぴあアリーナMM」の収容人員は約1万人(スタンディングで約1万2000人)。こけら落としの公演は横浜出身の人気デュオゆずが予定されていたが、7月のオープンに合わせゆずをこけら落としで映像配信した。47街区に誕生したKTビルも今年3月のオープンが6月となった。同ビルの1・2階にスタンディングで2000人収容できるライブハウス「KT Zepp Yokohama」が立ち上がっている。音楽アリーナはもうひとつ加わる。それが23年竣工予定のKアリーナプロジェクトで、開発されるのは音楽専用アリーナ、ホテル、オフィス、展示施設などからなる大規模複合施設。約2万人を収容できる音楽専用アリーナは国内最大級となる見込み。

MM21には多彩な施設が集積されている。すでに横浜美術館、カップヌードルミュージアム、横浜アンパンマンこどもミュージアム、横浜ランドマークタワースカイガーデン(展望フロア)、日帰り温泉郷の万葉倶楽部などがあるが、最近は鉄道をテーマにした展示施設が立ち上がっており、横浜三井ビルディングに「原鉄道模型博物館」、京急グループ本社ビルに企業ミュージアム「京急ミュージアム」、今年6月JR桜木町駅に開業したシァル桜木町ANNEXの1階にも鉄道創業当時、実際に走行していた110形蒸気機関車などを展示した「旧横ギャラリー」を開設している。鉄道系展示施設以外のエンターテイメント施設では、みなとみらい21中央地区62街区の開発が決定した事業者がグローバルラグジュアリーホテル&ホテルコンドミニアムを中核に水族館も整備する計画。58街区に超高層オフィスビルが建設される「横濱ゲートタワー」にはプラネタリウムが併設される模様。

MM21地区では商業施設も拡大基調にある。商業施設で勢いを増しているのが「横浜ワールドポーターズ」、「横浜赤レンガ倉庫」、「マリーン&ウォーク ヨコハマ」などがある新港地区。新港地区には19年10月に新港ふ頭ターミナル「横浜ハンマーヘッド」が加わった。同ハンマーヘッドは客船ターミナルとホテル、商業施設からなる複合ビルで、商業施設は「食」をテーマにラーメンフードホールやファクトリーを併設したスイーツショップなど25店舗体制で立ち上がった。

北仲通地区には高層ビルが建ち低層階に商業施設がオープンした。「横浜市新庁舎」と「横浜北仲ノット」。横浜市役所の新庁舎は地上32階・地下2階、高さ約155メートルの高層ビル。1・2階には京急電鉄が手掛ける商業施設「LUXS FRONT(ラクシス フロント)」が設けられ、6月29日の新庁舎のグランドオープンに合わせ4店舗がオープン。今夏までにフードホールやブック&カフェなど計19店舗が出揃う。なお、中区港町の横浜市庁舎跡地の活用も決まり、その跡地の行政棟については保存活用して商業施設やホテル(星野リゾートグループが活用)に転換。議会棟は解体して30階建ての高層ビルを建てライフビューイングアリーナ、スポーツ体験施設、大学などを誘致する計画。

横浜北仲ノット

横浜北仲ノット

一方の横浜北仲ノットは58階建て、高さ200メートルの超高層マンション。総戸数1174戸の分譲マンションとサービス付き長期・短期滞在宿泊施設(総客室数175室)と、商業・文化施設「北仲ブリック&ホワイト」からなる。北仲ブリック&ホワイト(店舗面積約5950平米)はビルボードライブ横浜、シェアオフィスのニサンカイ、スーパーマーケット・リンコス、インターナショナルスクールなど全19店舗。

ちなみに北仲通地区には19年9月に日本最大の客室数(2311室)を誇る高さ135メートル、地上35建ての超高層タワー型ホテル「アパホテル&リゾート横浜ベイタワー」がオープンしている。

桜木町駅周辺では桜木町駅前にJR桜木町ビルが建ちホテル・メッツとシァル桜木町ANNEXがオープン。「ヒューリックみなとみらいショッピングタウンコレットマーレ」は今春から大規模改装にかかり、地下1階にサミットストアを入れ、地下1階から無印良品を4階に移設拡大して神奈川県最大級の売場とし、現在7階レストランフロアをクロースして改装工事を進めている。他に商業施設ではないが、来春、桜木町駅前から運河パークまでを結ぶロープウェイ「(仮称)ヨコハマ・エア・キャビン」の運行も計画されている。

百貨店から駅ビル、ファッションビル、地下街まで大型商業施設が東西口に大集積している横浜駅にはJR東日本がグループを挙げた「JR横浜タワー」と「JR横浜鶴屋町ビル」を完成させている。JR横浜タワーにはニュウマン、シァル、T・ジョイと高層階にオフィスが入る複合施設。JR横浜鶴屋町ビルにはシァルANNEX、ジェクサー、ホテルメッツが入居している。

横浜駅西口にある「髙島屋横浜店」は食料品売場を大増床して来春、国内最大級の食料品売場を完成させる。段階的に増床・改装が進んでおり、完成すると店舗数は約50店舗加わり約200店舗に、食料品フロアの売場面積は約5000平米となる。同じく横浜駅西口の「横浜モアーズ」はJR横浜タワーと直結する地下道が完成するのを機に今春、地下~2階を中心としたリニューアルに踏み切り、ビームスハウスメンシップス、フレディ&クロスターbyノーリーズなどのセレクトショップを改装。店舗外観にはLEDライティングを採用して季節や時間帯に合わせてシーンチェンジする演出もスタートさせた。


よこはまみなとみらい21街区に開発される主な大型施設

【2019年】

施設名(開発計画名)と(開発街区) 開業(竣工)年月(事業主体) 建物規模(延床面積) 建物内容
「資生堂グローバルイノベーションセンター」(56-2街区) 4月(資生堂) 地上16階・地下1階(約5万6000㎡) 資生堂の新研究拠点、呼称は「S/PARK (エスパーク)」
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」(61街区) 7月(ACM) 地上4階(約1万4000㎡) アンパンマンをテーマにした参加型ミュージアムとショッピングモール
「京急グループ本社」(56-1街区) 9月(京浜急行電鉄) 地上17階・地下1階(約2万5800㎡) 京浜急行電鉄本社およびグループ企業11社が移転・集結。京急ミュージアム併設
新港ふ頭客船ターミナル「横浜ハンマーヘッド」(6-1街区) 10月(新港ふ頭客船ターミナル) 地上5階(約3万290㎡) 客船ターミナルを中核に商業施設とホテルが一体となった複合施設

 

【2020年】

施設名(開発計画名)と(開発街区) 開業(竣工)年月(事業主体) 建物規模(延床面積) 建物内容
「パシフィコ横浜ノース」(20街区) 4月24日(横浜平和会議場) 地上6階・地下1階(約4万6300㎡) 国内最大規模となる約6300㎡の多目的ホールと大中小42の会議室からなるMICE施設
「みなとみらい21中央地区47街区〈KTビル〉」 3月7日(コーエーテクモゲームス) 地上15階・地下1階(約3万7000㎡) KTビルはオフィス・ホテル・ライブハウス型ホールで構成される複合施設。ライブハウスはスタンディングで約2000人収容
「ぴあアリーナMM」(38街区) 7月10日(ぴあ) 地上4階・地下1階(約2万3000㎡) ぴあ株式会社が運営する音楽専用アリーナ。収容人員約1万人(立見で約1万2000人)
「横浜ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート横浜」(20街区) 9月23日開業予定(リゾートトラスト) 地上14階・地下1階(約4万8100㎡) ハワイ・オアフ島のラグジュアリーホテル「ザ・カハラ」のグローバル展開の第1弾
「横浜グランゲート」(54街区) 2月竣工(清水建設) 地上19階、高さ約98m(約10万1000㎡) 大規模賃貸オフィス。3階~18階までのオフィスフロア全てをソニーグループが使用
「村田製作所みなとみらいイノベーションセンター」(47街区) 10月竣工予定竣工(村田製作所) 地上18階・地下2階、高さ100m(約6万5300㎡) 新たな研究開発拠点、科学をテーマにしたにぎわい(体験)施設開設

【2021年以降】

施設名(開発計画名)と(開発街区) 開業(竣工)年月(事業主体) 建物規模(延床面積) 建物内容
「神奈川大学みなとみらいキャンパス」(43街区) 21年4月完成予定(学校法人神奈川大学) 地上22階・地下1階、高さ約100m(約5万500㎡) 国際日本学部・外国語学部・経営学部を新設
「(仮称)LGグローバルR&Dセンター」(55-1街区) 21年11月竣工予定(LGホールディングスジャパン) 地上16階・地下2階(約3万6000㎡) グローバルな研究拠点。低層階ににぎわい施設開設
「(仮称)横濱ゲートタワープロジェクト」(58街区) 21年冬頃開業(鹿島建設・住友生命保険・三井住友海上火災保険) 地上21階・地下1階、高さ112m(約8万4000㎡) オフィス、店舗、プラネタリウムなどからなる超高層オフィスビル
「みなとみらい21地区44街区」 22年5月竣工予定(積水ハウス) 地上24階建て、高さ約100m(約6万4700㎡) みなとみらい大通り44街区に開業するビル。「ウェスティンホテル横浜」が入る
「(仮称)みなとみらい21中央地区37街区開発計画〈MM37タワー〉」 23年3月竣工予定(合同会社KRF48=パナソニックホームズ・ケネディクス・鹿島建設) 地上28階・地下1階、高さ約146m(12万1726㎡) オフィス、ホテル、カンファレンス、コワーキングスペース、商業施設などからなる超高層ビル
「Kアリーナプロジェクト」(60・61街区) 23年10月竣工予定(ケン・コーポレーション) 地上25階・地下1階・高さ約100m(約11万7100㎡) 2万人収容できる音楽アリーナとホテル、オフィス、展示施設等からなる大型複合施設
「(仮称)みなとみらい中央地区53街区計画」 23年11月竣工予定(大林組・ヤマハ・京急電鉄・新日鉄興和不動産など) WEST棟=地上28階建て、高さ約153m、EAST棟=地上15階建て 高さ約86m(約18万2825㎡(2棟)) 新高島駅前に建つ大規模複合ビル。WEST・EAST棟ともオフィスを主体にホテル、(WEST棟)、商業施設、カンファレンスなどで構成される
「みなとみらい21中央地区62街区」 26年3月竣工予定(ベルジャヤコーポレーション) 地上14階・地下2階(8万2662㎡) グローバルラグジュアリーホテル&ホテルコンドミニアム、水族館、商業施設などからなる大型複合ビル