2024年11月23日

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コロナ禍が一段落したタイミングで迎えた初売りは、昨年とは一変、各店でオープンを待つ長蛇の列がみられた(写真は日本橋高島屋S.C.)

壬寅(みずのえとら)の初売りは、大賀(たいが、「大いに喜び祝う」を意味する)の結果なり――。東京都と大阪府の主要百貨店の初売りは、コロナ禍の大打撃を受けた前年の数字を大幅に上回った。伸長率は売上げが2~6割、客数が3~7割。「ビフォー・コロナ」の2020年と比較すればマイナスで、ここにきてオミクロン株が猛威を振るうなど2022年の商戦の見通しは不透明だが、まずは好発進を決めた。

デパートニューズウェブは、東京都と大阪府の主要百貨店を対象に、初売りの結果をアンケート形式で調査した。売上げと客数の前年比は軒並み高伸長(以下の表参照)。伸長率のトップは売上げが西武池袋本店(約6割)、客数が阪神梅田本店(約7割)だった。

伊勢丹新宿本店は2日、定刻通りの午前10時に開いた。行列の人数は前年比95%増の6500人にのぼり、同日の客数も前年の約1.5倍を記録。売上げは同55%増の“プロパー”が牽引し、クリアランスとの合算では同35%増だった。婦人が同50%増、紳士が同20%増で、衣料品を中心に好調。衣料品は気温の低下の影響もあり、婦人も紳士も冬物が伸長した。冬物以外では、婦人はプロパーの財布や雑貨が、紳士はビジネス関連が、それぞれ動きが良い。

一方、定番の福袋は数を減らし、プロパーやイベントを強化。クリアランスの期間は前年の2~31日に対して2~11日と短縮した。同店は「コロナ禍では『3密』を避けるために、クリアランスを五月雨式かつ長期間実施してきたが、お客様からは『分かりにくい』という声もあった。緊急事態宣言が解除された上、クリアランスでは冬物への関心が急激に強まるため、すぐに使えるシーズンアイテムを少しでも長く使える期間に設定した」と狙いを説明する。

前年は控えたイベントの充実化については「抽選会や『伊勢丹サウナ館』などの開催で、お客様はクリアランスに限らず来店を楽しみ、“自粛マインド”からの回復が窺えた」(同店)という。

小田急百貨店新宿店は2日、定刻より15分早い午前9時45分にオープン。三が日の売上げは、前年比で36.9%増を記録した。2日の店頭での福袋は婦人服、リビング、スポーツが好調。昨年11月中旬に福袋の予約販売を始めたインターネット通販でもスポーツの動きが良く、食品も堅調だった。

2~11日のクリアランスでは、初めての販促を実施。対象売場での買上げ額が5000円以上で、LINEの「友だち」と「小田急ポイントアプリ」の両方に登録した3万人(3店合計、先着)に、すぐに使える1000ポイントをプレゼントした。数年来の客足の早期化に対応して「LINEプレセール」も強化。クリアランスの期間の売上げは前年比28%増と伸ばした。

12日時点での店頭の売上げは、約3割増で推移。食品やラグジュアリーブランド、ゴルフ、スポーツファッションが活況で、婦人靴も復調した。天候要因で「防寒用のアイテムにも期待が持てる」(同店)という。

京王百貨店新宿店は2日、定刻より30分早い午前9時30分に開いた。行列の人数は前年の1.7倍に膨らんだが、前々年には及ばなかった。同日の売上げは前年比35%増、客数は前年の約1.5倍。福袋は一部を店頭とインターネット通販サイトで前年から販売するとともに、初売りでは食品の福袋の一部を7階の特設会場で展開。3密の回避に力を注いだ。

その福袋では食品や家庭雑貨、趣味雑貨が人気。応募・抽選式の福袋では、「京王プレリアホテル京都烏丸五条&札幌朝食付きペア宿泊券福袋」(5500円)と「『銀座 清月堂本店』福袋釜飯3回ペアチケット」(2022円)を筆頭に、全般的に好評。100万円の「京王プラザホテル(新宿)夢のスイートルーム 15連泊福袋」にも多くの応募があり、「高額でも価値ある体験への反応がみられた」(同店)。

例年は初売りと同時のクリアランスは、昨年12月16日にプレスタート。“本番”は今年1月2~20日で、10日時点の売上げは約4割増で推移する。宝石などの反応が良かったほか、6日の降雪以降は防寒の衣料や雑貨も動き、食品や「イエナカ消費」の関連品、ギフトなどが堅調だ。「年末年初の勢いは新型コロナウイルスの感染者数の増加とともにしぼんできているものの、緊急事態宣言下にあった前年と比べれば、プラスの見通し」(同店)という。

百貨店業界で唯一、元日に営業するそごう・西武の西武池袋本店は、定刻より30分早い午前9時30分にオープン。売上げ、客数ともに前年比で6割増と大きく伸ばした。福袋は食品が人気で、14ブランド・約3000個が正午までに完売。10日までのクリアランスは前年より7日間短くしたが、三が日の合計売上げは前年比で5割増だった。プロパーではコートが好調で、10万円以上の高価格帯も人気。「初売りは賑わいが戻ってきたが、オミクロン株の感染拡大により、今後の見通しは難しい。ただ、感染状況に関係なくイエナカでの“ご馳走ニーズ”は高く、食品の宅配『e.デパチカ』の利用者は増えていくとみる」(同店)。

西武池袋本店は七福神が感染予防を呼び掛けた

大丸東京店は2日、約1500人の行列が生まれたため、定刻より15分早い午前9時15分に営業を始めた。売上げは前年比44%増、客数は同68%増と盛況。福袋は21年内にインターネット通販サイトで販売した分を除き、300種類・1万2000個を販売したが、2日に投入した「夢のワーケーション福袋」は即時完売。10万円と高額な「夢の贅沢フィットネス体験福袋」も好評だった。福袋では食品の売れ行きが全体的に良く、菓子類は午前中にほぼ完売。開店と同時に売り切れるショップもあった。リビング、紳士雑貨、婦人洋品の福袋も好調。入金待ちの行列ができた。クリアランスでは、14日時点で非食品の売上げが同56%増と高伸長だ。

日本橋高島屋S.C.は2日、定刻の午前10時にオープン。行列の人数は前年の4倍に達し、同日の客数は同46%増、売上げは同55%増と好成績を収めた。前年は販売しなかった福袋は前々年の8割の数量で展開したが、売上げは同等と活況。開店から1時間程度で完売するブランドもあった。応募・抽選型で最も倍率が高かったのは100万円の「ウイスキー福袋」。クリアランスは2~10日の累計で同50.5%増と高伸長。宝飾品、紳士服、婦人服、婦人雑貨などが総じて良く動いた。ただ、同店は「前年と比べ初売り、クリアランスともに好調な滑り出しだが、オミクロン株の影響により1月の見通しは不透明だ」と慎重な姿勢を示す。

東武百貨店池袋本店は2日、定刻より20分早い午前9時10分に開いた。行列は前年の2.2倍で、同日の客数は同1.5倍の約13万人を記録。三が日の売上げは同4割増と伸びた。福袋は前年と比べて数量、売上げともに微増。食品の福袋は全体的に好調で、菓子を中心に開店から1時間以内の完売が多かった。応募・抽選型の福袋では、「フルーツショップ青木」の「サブスク果物福袋」(2万220円)が1番人気。用意した10個に対し、応募が6000件を超えた。

クリアランスでは、婦人服が前年比2割増、紳士服が同1割増と伸長。婦人靴も同5割増、紳士の「肌着・パジャマ」も同6割増と好成績だった。プロパーは、外出機会の増加で婦人用のコートやバッグの売れ行きが良かったものの、トータルでは微増。今後の商戦については「8~23日までの人気催事『ぐるめぐり 冬の大北海道展』が初日から好評で、今後に期待する」(同店)という。

松坂屋上野店は2日、定刻より20分早い午前9時40分に営業を開始。売上げは前年比56%増、客数は同49%増だった。約200種類を用意した福袋は、食品が人気。開店から数分後に売り切れた福袋もあった。クリアランスでは、大丸松坂屋百貨店のクレジットカードやアプリの保有者を対象に、買上げ抽選会を実施。売上げは同2割増で、婦人洋品と紳士用品が牽引した。「1月の売上げは同40%増と予想する」(同店)。

大賑わいの松坂屋上野店。売上げは前年比56%増、客数は同49%増を記録した

松屋銀座店は2日、定刻の午前10時にオープン。客数は前年比3割増、三が日の売上げは同4割増だった。福袋は同5%増の約2万個(うちインターネット通販サイトが約4000個)を販売。化粧品の「銀座のホテルでビューティーステイケーション福袋」や紳士の「俺たちの銀ブラ福袋」は開店直後に完売した。毎年“瞬殺”の「リタズダイアリー福袋」(限定70個)は今年、ネット通販サイトのみで扱ったが、僅か3分で完売した。

クリアランスは昨年12月26日からブランドごとにスタート。会期は設けていないが、1月12日時点で売上げは前年比25%増と賑わい、「婦人服キャリア」が同35%増、婦人靴が同5割増、「デザイナーズブティック」も同35%増と好調だ。同店は「昨今、クリアランスやプロパーを問わず、欲しいモノを適正価格で買う傾向が強まっている」と分析する。1月の商戦は12日時点で客数、売上げともに同4割増で推移。ラグジュアリーブランドが大きく売上げを伸ばしており、婦人服キャリアや婦人靴、宝飾・時計の動きも良い。

三越日本橋本店は2日、午前9時45分に開いた。行列は前年比76%増の1100人で、客数は同2割増、売上げは同4割増。福袋はネックウェアなどの婦人雑貨、紳士肌着など全体的に午前中の動きが活発で、食器やタオルも賑わい、例年より早い完売もみられたという。

クリアランスは婦人、紳士、食品、ライフスタイル、呉服、美術のカテゴリーで前年を上回り、婦人は同4割増、紳士は同3割増、食品は同2割増、リビングは同4割増だった。衣料品では気温の低下にともない重衣料やセーターなどの防寒品がプロパーも含めて伸び、食品では生鮮品や惣菜を中心とする福袋が完売。緊急事態宣言の解除で旅行関連品もプロパー、クリアランスともに前年実績を超えた。

同店は「店頭でのイベント、企画なども充実させたため、多くのお客様で賑わい、自粛マインドの回復が窺えた」と総括する。

あべのハルカス近鉄本店は2日、約4000人が並んだため、定刻より15分早い午前9時15分に開いた。三が日の売上げは前年比3割増、客数は同35%増と伸長。特選洋品や高級食器、高級時計など高額商品が好調で、全部門が同2桁増となった。食品も同3割増と盛況で、中でも限定福袋に応募が殺到。「プレミアムワイン福袋」の倍率は約700倍に達した。

高島屋大阪店は2日、午前9時30分にオープン。前年の3倍強、約2000人が並んだ。同日の売上げは同37%増、客数は同49%増、三が日のトータルでは売上げが同42%増、客数が同47%増だった。昨年はコロナ禍を受けて店頭で用意しなかった福袋は、ビフォー・コロナの半分弱の数で、昨年から分散して販売。寝具や台所用品といった「イエナカ消費」を捉えた福袋は 多くが完売した。 緊急事態宣言の解除にともなう外出機会の増加を反映してファッション関連の福袋も数を伸ばし、雑貨も含めて幅広いカテゴリーで完売が相次いだ。

2日に始めたクリアランスは、5日まではプロパーとともに前年実績を上回った。伸長率では、ファッション関連のプロパーが総じて約4割増に対し、クリアランスは約26%増。同店は「近年は正価品に比べ特価品が伸び悩む傾向があり、課題だ」という。

初売り以降の1月の商戦は、売上げを牽引してきた高額品や家庭用品、生活雑貨関連に加え、ファッション、食品も復調傾向で、前年実績を上回る推移。「今後も外出機会の増加や気温の低下が続けばファッション関連は期待できる。バレンタイン商戦は6日にネット通販サイトで、26日に店頭で始まるが、海外旅行に行けない状況が続く中、海外のラグジュアリーチョコは注目をされると考えている」。

阪急うめだ本店と阪神梅田本店は2日、定刻の午前9時30分に営業を開始。それぞれ約5000人、約3000人が開店を待ちわびた。阪急うめだ本店の三が日の売上げは前年比で約2割増、客数は約3割増と高伸長。福袋は約6万5000個を用意した。阪神梅田本店は建て替え工事の完了で昨年に比べて面積が増えた影響もあり、売上げは同4割増、客数は同7割増だった。両店とも、クリアランスは昨年12月からブランドごとに五月雨式にスタート。

初売りの結果は軒並み良好だが、オミクロン株の感染者は急増しており、今後の商戦は予断を許さない。感染防止策を徹底しつつ、「虎穴虎子」(こけつこし、「リスクを負わなければ、大きな成功は得られない」を意味する)でチャレンジしていくべきだろう。