2024年11月24日

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2022年 メーカー首脳 年頭所感

<掲載企業>

■資生堂

■コーセー

■オンワード

■西川

■キリンビール

■三陽商会

■川辺

■花王

■カネボウ


創業150周年機に再成長へ

資生堂 社長 魚谷 雅彦

昨年は中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」のスタートの年として、収益力、成長力の高い企業へと進化すべく、全社員が「Solidarity(連帯)」を合言葉に一丸となり取り組んできました。コロナ禍という未曽有の危機を機会と捉え、抜本的な構造改革を実行するとともに、生活者ニーズの変化に迅速に対応した商品開発や、店頭とデジタルを融合させた新しい購入体験の提供、新たなハンドケア習慣の定着を通じて医療従事者の方々の力になることを目指す「資生堂 Hand in Hand Project」の実施など、本業を通じた様々な取り組みによって、着実に前へ進んで参りました。

本年は「再び成長軌道へ」の年と位置付け、完全復活に向けてアクセルを踏む大変重要な年となります。当社の強みであるプレミアムスキンビューティー領域のブランドイノベーションと、アフターコロナを見据えたデジタル変革の加速によるマーケティングの集中強化で、グローバル全体での成長を目指します。

そのためには、資生堂グループの中核をなす日本事業の回復が不可欠です。日本をオリジンとする資生堂のDNAを継承、進化させ、人生100年時代を捉えた新たな体験価値を創造、提供し続けるとともに、持続的高収益モデルを確立し、安定成長でグローバル経営をリードして参ります。

市場の本格回復を見据えて「ブランドマーケティング」、「お得意先様との協働」、「店頭応対」を中心に“攻め”の投資を強化します。特に、専門店事業においてコロナ禍を経て改めて感じたのは、ビューティービジネスにおける“人”が介するカウンセリングの重要性です。絶対的な強みである“人”の力を最大限に生かし、専門店でしか実現できないトータルビューティー提案を通じて「生涯顧客づくり」の取り組みにデジタルも活用し一層注力します。

本年、当社は創業150周年を迎えます。これまでご愛用頂いたお客様、一緒に歩んで下さった取引先に心より感謝申し上げるとともに、皆様との繋がりをより深められる1年にしたいと考えています。同時に、資生堂の新たな未来を切り開くための一歩を踏み出す「希望」の年にすべく、未来に向け新しい価値を創造・提供し、本業であるビューティービジネスをさらに成長させていきます。

そして2030年には、生涯を通じて一人一人の自分らしい健康美を実現する「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY(パーソナルビューティーウェルネスカンパニー)」となることを目指して参ります。


時代を超えて選ばれる存在に

コーセー 社長 小林 一俊

企業には「変えるべきことと、変えてはならないこと」があり、私は常にこれを峻別して経営にあたってきました。優れた商品開発力、付加価値の高い商品とサービスの提供などは「変えてはならない」コーセーならではの強みです。

しかし、だからといって「何もしなくてよい」わけではありません。時代も、お客様も、常に変化しています。特にコロナ禍ではその変化を強く感じさせられました。「伝統は革新の連続である」と言われますし、「不易流行」という言葉もあります。「不易」とは「いつまでも変わらないこと」、「流行」とは「時代とともに変化すること」ですが、「変化を重ねていくことこそ不易の本質である」という意味です。

時代を超えてお客様に選ばれ続ける存在であるためには、常に自らも変わり続けることが必要です。それがコーセーの企業の伝統や文化を守ることに繋がります。

メイド・イン・ジャパンならではの高い品質、日本人の高いホスピタリティ……日本の化粧品業界には世界に誇る「良さ」がたくさんあります。お客様と店の強い信頼関係、お客様に寄り添うカウンセリングなど、化粧品専門店ならではの存在意義をもっと再認識すべきですし、時代に合わせて進化していくことが必要です。

コーセーは、時代の変化に対応した付加価値の高い独自のモノづくりや顧客創出に積極的に取り組み、皆様とともに繁栄への道を追求して参ります。


お客様中心の経営に全社一丸

オンワードHD 社長 保元 道宣

2022年は「壬寅(みずのえとら)」の干支にあたり、「陽気を孕(はら)み、春の胎動を助く」、厳しい冬を越えて芽吹き始め、新しい成長の礎となる年といわれています。まさに、新しい時代へのリスタートの年になると感じています。

オンワードグループは、昨年4月に中長期経営ビジョン「ONWARD VISION 2030」を策定しました。30年度に向けた5つの戦略「アパレルセグメントのビジネスモデル改革」、「ライフスタイルセグメントの成長の加速」、「法人ビジネスの強化」、「多様で個性的な人財が活躍できる企業への進化」、「地球と共生するサステナブル経営の推進」を掲げ、時代に合わせた変革と成長の実現に向けて積極果敢に取り組んでいきます。

「ヒトと地球(ホシ)に潤いと彩りを」というミッションステートメントを胸に刻み、“社員の多様な個性を生かしたお客様中心の経営”に全社一丸となって取り組んで参ります。


睡眠ソリューションへの進化

西川 社長 西川 八一行

2021年は、当社にとってはジェットコースターのような1年でした。春先は回復基調にありましたが、夏以降は繁華街など人の多い場所は苦戦。地域の専門店は健闘しました。秋は例年のペースに戻るかと思いましたが、戻り方はゆっくりでした。このように良い、悪いの繰り返しだったため、単純な例年との比較は難しい状況です。

ただ、自宅にいる時間が増えたことから「眠り」へ関心を持つ方が増えました。当社の「ねむりの相談所」は非常に盛況で、高機能商品の売上げは伸びました。接触と非接触の2種類の計測方法がある新システム「PI+MA PITTA」を導入しましたが、これも好評を博しています。

新サービスとしては、寝具のサブスクリプション「Sleep Charge」も始めました。店頭に来づらい、興味はあるが「買って失敗したらどうしよう」と悩む方向けのものですが、これをきっかけにリアル店舗に来られる方が多くいらっしゃいます。お客様に“体験”を提供し、店頭へと繋げる手段としては成功だと受け止めています。

22年も人々の生活様式がコロナ禍以前に戻るとは考えにくく、新たな生活様式に合わせ、サステナブルやSDGsを意識した取り組み、デジタルトランスフォーメーションの推進を行います。

また、店頭ではスリープマスターの教育をさらに充実させ、お客様が「リアル店舗に来てよかった」と思えるような環境をつくります。睡眠は複合的な要因が多いため、最初は枕など単品の購入が目的でも、生涯に亘ってファンになって頂けるような運営を心掛けます。

さらに、法人のお客様へのオフィス提案を変えていきます。私どもは眠りのノウハウを持っていますが、逆に「日中にどうしたらいいか」の知見も持っています。光や音、香りなどをコントロールし、日中のパフォーマンスを高めるようなオフィスづくりを目指します。今はまだ覚束ない段階ですが、数年後には当社の柱にしたいと考えています。

当社は長い歴史を持つ会社ですが、同じことを繰り返してきたわけではありません。現在も転換点を迎えていますが、モノを売るだけでなく、充足感を提供し、「寝具の西川」から「睡眠ソリューションの西川」へと進化して参ります。


揺らぎなきCSV経営を推進

キリンビール 社長 堀口 英樹

2021年は20年に引き続き、長期化する新型コロナウイルス危機への対応を軸に経済、社会が変動し、個人や企業は様々な環境変化を乗り越えていく方策を必死に模索せざるを得ない1年でした。一方で、世界各地のワクチン接種が進み、コロナ禍の影響をコントロールしつつ経済活動の再開や回復を目指す動きが顕在化したことで、世界経済は徐々に回復への歩みを始めています。

今後は各種の政策効果も期待され、回復ピッチは早まっていくことと思いますが、収束はまだ見通せない中、当面は「ウィズ・コロナ」環境下の柔軟な対応や挑戦が求められると思います。

その中で注目すべきは、コロナ禍を通して、社会の行動様式やお客様の意識が不可逆的に大きな変化をしたのではないかという点です。リモート手法を活用した就労、就学環境の変化、家庭内消費の拡大や健康志向の顕在化、消費志向の二極化の進展など、今後の事業展開を進める上で極めて重要なファクターだと考えています。

昨年は厳しい環境の中、当社は「お客様のことを一番考えて、お客様に寄り添う」という従来からの一貫した指針に基づいて事業活動を展開しました。また、コロナ禍という未曽有の環境変化に直面したことで、キリンビール社としての存在意義を再認識し、「世のため人のために取り組み、世の中に笑顔と幸せをもたらしたい」という想いをあらためて強くしました。

このようなマインドに「強固なブランド体系の構築」、「新たな成長エンジンの育成」という戦略を掛け算して成果を創出し、お客様から最も愛される会社を目指してきました。

本年は、お客様のことを1番考えて常にお客様に寄り添いながら、お客様の要望や困り事に事業として果敢に取り組み、自社も一緒に成長するというCSV経営を揺るぎなく一貫して推進していきたいと考えています。そして「強固なブランド体系の構築」、「新たな成長エンジンの育成」という変わらぬ戦略との掛け算で一つ一つ結果を積み上げていきたいと思います。

未だ収束が見通せないコロナ危機はもとより、酒類業界を取り巻く環境は本年も厳しいものと予想されますが、当社は常に「お客様にもっとも愛され、信頼される会社」になることを目指して挑戦を続けたいと思っています。お客様が求める新たな価値を弛まず提案し、ビール類をはじめとした酒類市場全体をさらに魅力あるものにすることで、酒類総需要の拡大、そして将来に向けた業界の発展に邁進していく所存です。


成長軌道への攻勢に転じる

三陽商会 社長 大江 伸治

今期(2022年2月期)は、2年タームの「再生プラン」の最終年度であり、前年以来実行してきた事業構造改革の成果を踏まえ、確実に黒字化を実現することを基本方針に掲げスタートしました。今期計画は新型コロナウイルス禍の影響が6月までは残るであろうとの前提で、なおかつ最終黒字を確保するというのが当初の建付けでありましたが、9月末まで緊急事態宣言が延長され、繰り返し計画修正を迫られる事態となりました。

上半期決算においては、期間を通してコロナ禍の影響が続いた結果、売上高は大幅に減少した一方で、粗利率改善と販管費削減が計画以上に進展したことで、営業利益をはじめ収益面では計画を若干上回ることができました。また在庫削減、財務改善といった再生プランに掲げたその他の重点施策についても、所期の計画を達成することができました。厳しい状況によく耐えて何とか凌げたというのが率直な所感です。

下半期は10月以降緊急事態宣言も解除され、市場正常化の進展にともない、売上げもほぼ計画通りの水準まで回復し、最終黒字での着地が見込める展望も開けてきております。実行してきたことが、ポジティブな形で表れてきたと感じております。引き続き総力を挙げて計画達成に向けて取り組み、所期の目標である黒字化を達成し、再生プランの完遂を期したい所存です。

再生プラン終了後の来期(23年2月期)からは、“守勢から攻勢に転じる”、“2年間の再生プランを通じて築き上げてきた基盤をベースに会社を成長軌道に乗せていく”という新たなフェーズに移行することになります。現在、来期を初年度とする新中期経営計画の策定作業を進めており、新年度からはこの中期経営計画の達成に向けた新たなチャレンジが始まります。


個に寄り添い共感呼ぶ戦略を

川辺 社長 岡野 将之

2021年は前年に続き、長期に亘る緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が発令され、全体的に経済および消費の回復には程遠く、2年目のコロナ禍生活とも表現できる年になりました。

しかし、2年目のコロナ禍での過ごし方は、1年目の耐えるコロナ禍の過ごし方とは少し違い、コロナ禍生活を工夫し、消費者が新たな価値を見付け、それを楽しむ生活がスタートし、広がりを見せた年になったと感じます。

公園やキャンプに行くにも、家で過ごす時間にも一工夫し、料理、音楽、美容、ファッション、スポーツなど自分の好きなことに対して、時間と金をかけ、コロナ禍での生活を楽しめるようになったのではないでしょうか。

この傾向は22年もコロナの感染の影響の有無に関係なく、より広がりを見せると予測されます。価値観の多様化が進みニッチマーケットが熱を帯び、「個」の時代へ一段と加速するでしょう。

そこで22年の一番注力していきたいことは、「個」の時代のマーケティング戦略です。当社も20年より本格的にSNSを活用したマーケティング戦略を行ってきましたが、これまでの戦略はプロダクトアウトの発信がほとんどでした。しかし、今後はマーケットインの発想で、消費者一人一人の感情に訴えかけるマーケティング戦略の必要性が増します。感情に訴えかけるには、ストーリーや熱量をいかに伝えられるかが課題となります。

素晴らしい商品をつくっても、伝えなければただの商品と同じです。個人の感情に寄り添い、共感してもらう発信を行っていきたいと考えます。そして、その受け皿となる売場はECだけではありません。こういう時代だからこそ、リアル店舗が重要となります。売場にわざわざ足を運んで頂くお客様に対して、接客や特別な体験を通じてリアル店舗ならではの感動させられる売場づくりを目指します。

コロナ禍や人手不足を背景に、非接触や省人化などが進む小売りサービス業が多くなってきましたが、当社の取り扱う商品はギフトニーズとして支持されてきました。人が人に贈る商品を扱う上で、人を通じたサービスや価値の提供は一段と重要視され、稀少な時代になると考えられます。

企業は、人が人のために行う人の活動です。だからこそ、人を中心に、人を感動させられる22年にしていきたい所存です。


「未来の命を守る」新しい出発

花王 社長 長谷部 佳宏

混沌の中にあった世の中も、少し明るい兆しが見え始めておりますが、まだまだ予断を許さない状況にあります。パンデミック、意見衝突による社会の分断、そして地球環境問題は深刻さを増しています。右肩上がりの経済神話は崩れ、明日、私たちの生活がどうなるかを不安に感じる人も増え続けています。その中で花王グループに求められる責任と役割は大きな転換期を迎えています。

消費材メーカーである当社は、多くのモノをつくり、それらを使って頂くことで、社会に貢献してきた企業です。しかし一方では、多くの物質とエネルギーを使い、廃棄物を出している企業であるとも言えます。私達は消費を前提としたモノづくりから、資源を循環させるモノづくりへと変貌させ、循環型経済への移行を目指します。

花王グループは2021年に新たな中期経営計画「K25」をスタートさせました。この「K25」策定にあたって、今後の企業が目指すべき方向性は「持続可能な社会の実現」ですが、これに反する活動を全て取り除くことは容易ではありません。しかし、当社はサステナビリティ以外の退路は断ち、前に進むことを決め、「Sustainability as the only path」という「K25」のビジョンに繋がりました。

心豊かな生活に貢献するという当社の基本的なミッションは変えることなく、加えて、これまで以上に地球環境や人の生命に目を向け、「未来の命を守る」企業として、社会に欠かすことのできない存在になることを目指していきます。

その新しい出発に想いを込めて21年10月、新たなコーポレートスローガンとして「きれいを こころに 未来に」を掲げました。

生きとし生ける全ての「未来の命を守る」企業として、持続可能な社会に欠かすことのできない存在を目指すことは、これまでの延長線上では決してできません。生命にまつわる新しい領域に挑戦するため、今までとは異なる新たなモデルを構築し、技術を武器に、従来の花王スタイルとは異なる、もうひとつの花王(Another Kao)を立ち上げます。

これからの世の中で必須とされる、切実な課題を解決できる事業領域の創造を目指します。そのためにまず、自前主義の考え方を大きく変え、志を同じくする社内外の仲間たちを信頼し、尊重しながら、目的をともに果たす姿勢に転換し始めています。そして多くの社員がワクワクしながら働き、自分のやりたいことに挑戦し、実現できる新たな仕組みも動き始めています。

当社は、次なる飛躍のために、人にも地球にも負荷をかけないモノづくりに取り組み、最小限の資源で最大の価値を届ける“Maximum with minimum”の実現により、世界に誇れる企業を目指します。今こそ、花王グループ社員の力を結集し、皆様の期待を超える新しい未来を創造して参ります。


個性あるブランドづくり加速

カネボウ化粧品 社長 村上 由泰

2021年を振り返りますと、化粧品業界は中国および欧州市場がいち早く回復基調に転じましたが、国内市場は新型コロナウイルス感染症拡大による断続的な緊急事態宣言の影響により、引き続き厳しい状況となりました。一方で、マスクをメイクやファッションの一部として楽しまれる方や“おうち時間”を活用して今まで以上に時間をかけて丁寧に肌の手入れをする方の増加など、新たな志向もみられるようになりました。

花王グループの化粧品事業は21年1月から、“強いブランドづくり”をより力強く加速させるために、これまでの運営体制を見直し、「Kao Beauty Brands」としてビジネス領域ごとに3つのビジネスグループに再編、新たな事業運営体制をスタート致しました。また4月には、美容部員の派遣店の最適化や、お客様との新たなコミュニケーションの機会の創出に向け、美容カウンセリング会社を一社化致しました。

事業活動においては「ニューノーマルへの着眼による新価値提案」、「ESG視点でのモノづくり、事業活動」、「DX推進によるデジタルコミュニケーションの加速」に取り組み、厳しい環境下においても、注力ブランドについては順調に成長することができました。

一方で、ESG視点の事業活動としては、廃棄削減に正面から取り組んでいるところです。セルインの適正化による返品削減、売り切りモデルの導入、EC先行発売による生産数量の決定、店頭テスターのデジタル化など、あらゆる方策にチャレンジしています。昨年10月には、コーセー様と化粧品事業のサステナビリティ領域において包括的に協働していくことに合意しました。

また昨年は全社横断のDX戦略推進センターを立ち上げ、「製造業からUX創造企業へ」をスローガンに、DX化を推進しました。7月には、美容カウンセリング会社の本社ビル内に美容情報発信専用のスタジオを開設しました。

22年はアフター・コロナを見据えて、「パーパスドリブンブランディングの加速」、「ESG視点の事業運営の深化」、「DX推進によるデジタルコミュニケーションの加速とUXの創造」に取り組んで参ります。花王グループの化粧品事業「Kao Beauty Brands」は昨年、事業パーパスとして「Celebration of Individuality」を掲げました。

「美」は人種や年齢、性、肌質といった属性に依らず、その人ごとに存在するもので、人の数だけあるそれぞれの「美」に寄り添っていきたいと考えています。そのために、引き続きパーパスドリブンで個性あるブランドづくりを加速させて参ります。

 

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