2024年11月23日

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<ストレポ11月号掲載>百貨店復活への進捗度

※画像はイメージです

コロナ禍の環境の劇的変化で百貨店ビジネスモデルの課題がくっきりと浮かび上がった。百貨店ではコロナ禍前の利益水準への早期業績回復と再成長に向けて、コスト構造改革と共に、環境変化に適応していくための百貨店のビジネスモデル改革に取り組んでいる。リアル店舗の魅力化を軸に、品揃えの見直しや新規コンテンツ導入によるMD再構築、デジタル技術を駆使した新しいモノ・コト提案並びに顧客との関係性づくりといった各店各様の様々な課題に対し抜本的な見直しとその具現化を急いでいる。

※この記事は、月刊ストアーズレポート2021年11月号に掲載する特集「百貨店復活への進捗度」(全10ページ)の一部を抜粋して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他11月号の内容はこちらからご確認いただけます)

コロナ禍の収益悪化で戦略的投資が限定されるとはいえ、今年は前年に増して品揃えや売り方、サービスで新しい体験価値を提供する動きが活発化してきた。改装・再編、新しい売場開発にも意欲的だ。待ったなしの「百貨店再生」に向けた一連の構造改革はまだ途上に過ぎず、その進捗度も百貨店によって異なる。各店各様の新たな百貨店モデルの構築に向けて前進あるのみだ。

 

【22年2月期第2四半期決算】6月以降、回復テンポが鈍化 下期で挽回へ、早期黒字化に目途

上場百貨店の22年2月期第2四半期(3~8月)の業績は、前年の新型コロナウイルス感染症拡大による大幅な減収減益の反動増が顕著に表われ、多くの百貨店が増収を遂げ、営業損失も大幅に改善した。しかしながら新型コロナ感染再拡大による緊急事態宣言に伴う営業自粛や人流制限などの影響で、第2四半期(6~8月)で回復のテンポが鈍化したため、引き続き厳しい経営環境に置かれた。

J.フロントリテイリングの22年2月期第2四半期連結業績(IFRS)は、総額売上高が4021億円、前期比25.4%増となり、売上収益が1573億円、同6.7%増。日本基準の営業利益に該当する事業利益は36億5400万円となり、前期の2億5000万円から大きく改善した。これに伴い営業損失は前期の206億円超から13億8800万円に、四半期純損失は前期の163億円超から19億9500万円に、それぞれ大幅に改善した。両損失ともに6月の予測より10億円超も上振れした。

高島屋の22年2月期第2四半期連結業績も、大幅な増収を遂げ、営業損失並びに経常損失が大幅に改善した。営業収益は3472億円、前期比16.8%増まで復調。コスト構造改革が進み、販管費が計画よりも良化したことから、営業損失は前上期の102億円超から20憶1400万円まで戻し、経常損失も同じく109億円超から5億5900万円まで大幅に改善した。しかしながら営業収益、営業損益、経常損益がいずれも計画から下振れした。

松屋の22年2月期第2四半期連結業績は、売上高が288億円、前期比40.0%増まで回復。営業損益は18億1200万円の損失で、前上期(22億円)より改善し、経常損益は16億6300万円の損失だったが、営業損益と同じく前上期(22億円)よりも改善した。

近鉄百貨店の22年2月期第2四半期連結業績(今期より収益認識会計基準)は、売上高472億円、営業損失14億3500万円、経常損失9億7600万円となった。前期基準を適用した売上高では1065億円となり、前期比は7.9%増、金額では77億円超の増収だった。営業損失は前上期(21億円損失)より7億円超、経常損失は前上期(19億円損失)より9億円超、それぞれ改善している。

 

【OMOと新規開拓】強みのリアル店舗と人を基軸に ネットに伸び代、新事業にも進出

「百貨店再生」に向けて、リアル店舗とデジタルの融合による新たな体験価値の創造は優先的命題だ。その中心がOMO(オンライン・マージス・ウィズ・オフライン)への取り組みで、大手百貨店が21年度から開始している早期業績回復と再成長を目指した新たな中期経営計画では、重点施策のひとつに掲げている。コロナ禍によるリアル店舗の営業自粛に伴い、昨年から今年にかけてデジタルを駆使した新しい売場開発や売り方、接客、サービスなど様々な取り組みが一気に広がってきている。百貨店が手掛けるOMOは、リアル店舗と人を起点にしたモノ・コト提案による新しい体験価値の提供だ。

J.フロントリテイリング(JFR)は、21年度から始動している中期3カ年経営計画で、収益回復と再成長に向けて「デベロッパー戦略」、「リアル×デジタル戦略」、「プライムライフ戦略」を進めているが、最優先の課題である百貨店事業再生のポイントが、リアル×デジタル戦略とプライムライフ戦略であろう。

リアル×デジタル戦略ではリアルとデジタルを融合させた新たな体験価値の創出を目指して、大丸松坂屋百貨店では「店舗・コンテンツの魅力化」、「オンライン活用ビジネスの拡大」、「CSV視点の事業活動」を重点課題に掲げている。このうちオンライン活用ビジネスの拡大では、リアル店舗とオンライン(HP、自社アプリ)を、商品とその価値観やストーリーを顧客とコミュニケーションする「メディア」と再定義して、コスメやアートなどリアル店舗を起点とした独自のOMO売場の開発と、フーズやギフトなど商品拡充やブランド開発による百貨店ウエブの再構築に取り組んでいる。

21年度から新中期3カ年計画を進めている高島屋は、ブランド価値の源泉である「百貨店再生」を最重要課題に掲げているが、そのための重点施策として「店舗営業力の強化」、「MD再構築」と共に「ネットビジネスの強化」に取り組んでいる。20年度(21年2月期)のEC売上高は約6割増の307億円まで急増し、21年度は345億円を見込んでいる。中計最終年度の23年度に500億円を目標に掲げている。

ネットビジネス強化の一環として、「高島屋オンラインサイト」を改装し、8月11日にローンチした。百貨店ならではの独自性の発揮と顧客利便性の向上を図るための改装で、ウインドーショッピングを楽しむ感覚でサイト内を回遊できるように、衣食住を横断したライフスタイル型の商品提案や、ギフトマナーの紹介など顧客の興味や生活シーンを想定したコンテンツを拡充した。加えて同ストア訪問者の約7割がスマートフォン経由だったため、スマホ向けの視認性や操作性を改善した。

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